ウクライナ大統領 対話実現の考え示すも事態打開の道筋見えず

ロシア軍がウクライナで侵攻を続ける中、東部のマリウポリではおよそ400人の市民が避難していた学校が爆撃を受けるなど、さらに深刻な状況に陥っています。
ウクライナのゼレンスキー大統領はプーチン大統領との対話を実現させたいという考えを改めて示しましたが、事態を打開する道筋は依然として見えていません。

ウクライナで侵攻を続けるロシア軍は東部の要衝マリウポリで都市を包囲し、激しい市街戦が続いています。

マリウポリの市議会は20日「ロシア軍が、女性や子ども、高齢者などおよそ400人の市民が避難する芸術学校を爆撃した。建物は破壊され、市民ががれきの下に取り残されている」と明らかにしました。

マリウポリでは今月16日にも子どもを含む大勢の市民が避難していた劇場が破壊され「数百人ががれきの下にいる」と伝えられているほか、19日には市議会が市民1000人以上が避難していた施設からロシア軍によって強制的に連れ出されたと訴えるなど、さらに深刻な状況に陥っています。

こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、アメリカのCNNテレビのインタビューで「私はプーチン大統領と交渉する用意がある。交渉抜きにこの戦争を終わらせることはできない。仮に1%でもこの戦争を終わらせるチャンスがあるのであれば、交渉する必要がある」と述べ、あらゆる手を尽くしてプーチン大統領との対話を実現させたいという考えを示しました。

ただ、ロシア軍は2日連続で極超音速ミサイル「キンジャール」を発射するなど攻撃を緩める兆しは全くみせておらず、さらに、アメリカなどはロシア軍が生物兵器や化学兵器を使用するのではないかとも警戒を強めていて、事態を打開する道筋は依然として見えていません。

ウクライナ西部の町 たびたび空襲警報鳴り響くなど緊迫

ロシア軍による攻撃がウクライナの西部にも広がる中、モルドバとの国境に接する西部の町では、たびたび空襲警報のサイレンが鳴り響くなど緊迫しています。

モルドバと国境を接するウクライナ西部モギリョフ・ポディリスキーでは、いまのところ物資が不足するなどの混乱は起きていないということです。

しかし、住民の話では、この町でも空襲警報のサイレンが1日に7、8回ほど鳴り響いているということです。

また、ロシアによる軍事侵攻の後、集合住宅の地下室が身を守るためのシェルターとして使われ、中には水などが保存されているということです。

一方、隣町のモルドバ側のオタチでは20日もウクライナから女性や子どもが相次いで避難してきていました。

この町では、避難してきた人たちのためにユニセフ=国連児童基金が支援の拠点を設けているほか、国際的なNGO「国境なき医師団」が20日から医師を配置しています。

モルドバにはこれまでに人口の1割を超える36万人以上がウクライナから逃れてきていて、G7=主要7か国が支援に乗り出しています。

ウクライナ議会議員「悲劇は長期に及ぶだろう」

ウクライナの議会議員で外交問題に詳しいボロディメル・アリエブ氏が20日、NHKのオンラインインタビューに応じ、事態の長期化は避けられないとの厳しい見通しを示しました。

この中でアリエブ氏はウクライナとロシアとの停戦交渉の中で議論が続いているとみられる、NATO=北大西洋条約機構への加盟に代わる別の安全保障の枠組みについて触れ「そういった議論が行われていることは承知しているが、攻撃が続く中で行われている交渉では合意は不可能だ」と述べ、交渉が難航しているとの認識を示しました。

そのうえでアリエブ氏は「私たちはウクライナの国家の生存のために戦っている。これは短期的なものではなく、悲劇は長期に及ぶだろう」と述べ、事態の長期化は避けられないとの厳しい見通しを示しました。

一方、現在、最終的な調整が進められている日本の国会でのゼレンスキー大統領のオンライン形式での演説については「大統領はこれまでも世界の議会での演説でそれぞれの国との団結を呼びかけてきた。ロシアの行動を許せば、ウクライナだけにとどまらず、アジア太平洋地域でも同じようなことが起きかねず、ウクライナを支援することは日本の国益にとって重要だ」と述べ、演説では両国の団結を呼びかけることになるとの見通しを示しました。