岸田首相 カンボジアの首相と首脳会談 緊密な連携を確認

カンボジアを訪れている岸田総理大臣は日本時間の20日夜、フン・セン首相と首脳会談を行いました。

ウクライナ情勢をめぐり、世界中のどの場所でも力による一方的な現状変更を認めない立場だという認識で一致し、国際秩序の根幹を守るため、緊密に連携していくことを確認しました。

会談は、首都プノンペンの首相府で、日本時間の20日午後7時半すぎからおよそ2時間行われました。

会談で両首脳は、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナ情勢をめぐって意見を交わし、日本とカンボジア両国は、世界中のどの場所でも力による一方的な現状変更を認めない立場だという認識で一致しました。

そのうえで、国際秩序の根幹を守るため、日本とASEAN=東南アジア諸国連合のことしの議長国を務めているカンボジアで、国際会議の場などを通じて緊密に連携していくことを確認しました。

また、日本が国連のPKO=平和維持活動の一環としてカンボジアに自衛隊を派遣してからことしで30年になることを踏まえ、この間に深めてきた両国関係をいっそう発展させるため、防衛交流や共同訓練などの安全保障分野と、経済安全保障やデジタル、サイバーなどの分野で協力を強化していく方針で一致しました。

さらに両首脳は、地域情勢をめぐっても意見を交わし、中国による南シナ海への進出や北朝鮮への対応で緊密に連携していくことで一致したほか、岸田総理大臣は「カンボジアがミャンマー情勢の事態打開に積極的に取り組んでいることに敬意を表する」と述べました。

また岸田総理大臣は、日本とカンボジアの外交関係樹立から来年で70年を迎えることなどに触れたうえで、ASEAN各国の首脳を日本に招いて開催する特別首脳会議にフン・セン首相を招待する意向を示しました。

会談後、岸田総理大臣はフン・セン首相とそろって記者発表を行い「プノンペンを訪れる時、和平の尊さに思いをいたす。内戦後の廃虚から立ち上がり、国を再建したカンボジア国民の不屈の精神に改めて敬意を表す。人々の平和な生活がむき出しの力によって脅かされる今こそ、学ぶべき精神がこの国には息づいている」と述べました。

カンボジア フン・セン首相 二国間関係のさらなる発展に期待

首脳会談のあと行われた共同記者発表に臨んだカンボジアのフン・セン首相は、会談では、地域、世界の課題について意見を交わしたとしたうえで、ウクライナ情勢について「武力の即時停止と外交を通じた平和的な対話を続けるよう求める」と述べました。

また、クーデター後の混乱が続くミャンマー情勢については、カンボジアがASEAN=東南アジア諸国連合のことしの議長国を務めていることを踏まえたうえで、暴力の即時停止を求めるとともに「すべての当事者に働きかけることの重要性を再確認した」と述べました。

日本との二国間関係については、フン・セン首相は「日本が行ってきたインフラ開発や経済分野などへの支援に謝意を示すとともに、高く評価する。安全保障分野などでさらに協力を進めていく」と述べました。

そして「私は、二国間関係が史上最上レベルにあることをうれしく思っている。われわれは関係を新たなレベルに引き上げることで合意した」と述べ関係のさらなる発展に期待を示しました。

共同声明 武力行使の即時停止と軍隊撤退を要求

岸田総理大臣とカンボジアのフン・セン首相による首脳会談のあと、共同声明が発表されました。

ウクライナへの侵略は国際秩序の根幹を揺るがすものだと指摘し、武力行使の即時停止と軍隊の撤退を要求しています。

それによりますと、ウクライナへの侵略は主権と領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁じる国際法の深刻な違反であり、国連憲章の重大な違反だという認識を共有し、国際的に認められた国境の力による一方的な変更を認めないという国際秩序の根幹を揺るがすものだと指摘しています。

そのうえで、同様の精神で、インド太平洋地域の平和と安定と安全保障を保全していくことを確認したとしています。

そして、武力行使の即時停止とウクライナからの軍隊の撤退を要求するとともに、すべての種類の大量破壊兵器による威嚇も使用も決して受け入れられず、平和的目的の原子力施設に対する武力攻撃や武力による威嚇は国際法違反だと強調しています。

今回の共同声明では、20日に発表された岸田総理大臣とインドのモディ首相による共同声明と同様、ロシアを直接名指しした批判は盛り込まれませんでした。

またミャンマー情勢をめぐっては、暴力の即時停止と武器の流入を停止し、平和的解決のための対話プロセスを開始し、政治的に拘束されている人たちを解放して民主的な体制に回帰するよう求めています。

さらに、ミャンマーの人たちへの人道支援の重要性を指摘し、ASEAN=東南アジア諸国連合の特使を務めるカンボジアのプラク・ソコン副首相兼外相がミャンマーを訪問した際に成果が得られるよう期待を示しています。

また、中国が進出を強める南シナ海をめぐっては、国際法に従った紛争の平和的解決の重要性を再確認し、緊張を高め状況を複雑化させるような一方的な行動を取らないよう関係国に求めるとしています。

そして、世界と地域の平和と繁栄に貢献するため、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて引き続き協力していくことを再確認したとしています。

さらに、日本が国連のPKO=平和維持活動の一環としてカンボジアに自衛隊を派遣してからことしで30年になることを踏まえ、海上自衛隊の艦艇の寄港や二国間の訓練の拡大、それに災害救援などを通じて安全保障分野の協力をさらに強化するとしています。

このほか、経済安全保障の分野では、中国を念頭に経済的威圧に対する懸念があるとして、新たな課題に対抗するための国際秩序を強化する重要性を指摘し、日本がカンボジアに対してさまざまな支援を行うとしています。