センバツ 3回の“感謝”選手宣誓に込めた思い 倉敷工 福島主将

19日、甲子園球場で開幕したセンバツ高校野球。
ことしの大会に臨む選手たちは、全員が新型コロナウイルスの感染が広がってから高校に入学しました。開会式で選手宣誓を務めた倉敷工業のキャプテン、福島貫太選手は困難と向き合いながら、歩みを進めてきた球児たちの思いを込めました。

当たり前を知らない世代

「宣誓。夢と志が人生をつくる。
当たり前だった日常が失われて3年がたちます。
いまなお、世界中でパンデミックが起こり、多くの人たちが苦しみや困難に立ち向かっています。
それでも私たちは一歩ずつ歩んできました」

倉敷工業のキャプテン、福島貫太選手が行った選手宣誓の冒頭です。
福島選手をはじめ、今回のセンバツ高校野球に臨む選手たちは、新型コロナの感染が日本で広がり始めた、おととし4月以降に高校に入学し、新型コロナに翻弄されながら、野球に打ち込んできました。

感染が広がる前までは、当たり前だった全員で行う部活動から、密を避けるため分散した形での練習が行われるようになりました。もどかしい日々が続いたと言います。
しかし、ひたむきに練習を続けて、センバツの切符をつかみ、福島選手は選手宣誓の大役も引き当てました。

メンバーのことばを紡ぐ

選手宣誓にどんなことばを入れるか、福島選手は、同じ3年生一人一人に聞いて回りました。そうしてできあがったのが今回の宣誓でした。

毎日練習を重ね、チームメートや先生は、日に日に上達したと言います。
あいにくの雨で、開幕は1日順延となりましたが、福島選手は「大役を任された以上、一日一日を大切にして感動を与えられる選手宣誓にしたい」とプラスに考えました。

そして、18日夜も夕食後に、部員全員の前で練習して、本番に備えました。

3回の“感謝”

迎えた開会式。福島選手はりんとした表情で台に上がりました。
実は足が震えるほど緊張していたと言います。
2分余りの宣誓の中で、印象的だったのは“感謝”ということばを3回も使ったことです。
「甲子園という舞台に立てることに感謝」
「大好きな野球ができることに感謝」
「最大の理解者、応援してくれている家族に感謝」

コロナ禍の困難と向き合ってきたからこそのことばに、球場では大きな拍手が送られました。そして、福島選手は胸を張りました。

(倉敷工 福島主将)
「支えてくれた人たちに向けた“ありがとう”という部分にいちばん力を込めました。100点満点だと思います」

大きくリードされた試合でも

福島選手が引っ張る倉敷工業は、1日目の第2試合で、和歌山東高校と対戦。延長戦に入る熱戦となりましたが、11回表に7点を失い、大きくリードされる中で最後の攻撃を迎えました。

そして、2アウトランナーなしで回ってきた打席。
福島選手は「とにかく塁に出たいという思いだけで、バットを振った」と内野安打で出塁し、1点をかえすきっかけをつくりました。
宣誓どおり、困難に立ち向っていく姿をあらわしました。
新型コロナの影響は、いつまで続くかわかりません。だからこそ、今、野球ができる感謝を胸に、全力で甲子園に挑んだ福島選手。その志は多くの人の胸にも刺さったはずです。(甲子園取材班 山田俊輔)

福島主将の選手宣誓【全文】

「宣誓。夢と志が人生をつくる。
当たり前だった日常が失われて3年がたちます。
いまなお世界中でパンデミックが起こり、多くの人たちが苦しみや困難に立ち向かっています。
それでも私たちは一歩ずつ歩んできました」
「甲子園に立つまでに、たくさんの方々に支えてもらいました。
いま、野球ができているのもその人たちのおかげです。
聖地・甲子園という舞台に立てることに感謝します。
大好きな野球ができることに感謝します。
そして、私たちの最大の理解者、応援してくれている家族に感謝します。  
ありがとう。
夢や志を持ち続け、これからの未来に向かって、1日、1分、1秒を大切に歩んでいきます。
ファイティングスピリット。
フレンドシップ。
フェアプレー。
甲子園に立つ喜びを胸に、最後まで諦めることなく、正々堂々とプレーすることを誓います」