日本に留学予定のロシア人学生は “差別”への不安も

ロシア軍によるウクライナ侵攻が激化する中、日本に留学しようとしているロシアの学生も厳しい状況に置かれています。
現地では、ロシアを非難する声を上げるのが難しい現状があるほか、どこに行ってもロシア人というだけで差別されるのではないかと不安を募らせています。

ロシアのサンクトペテルブルク出身のアレーナ・メゼンチェワさん(24)は、この春、日本の大学に留学する予定で、受け入れる教授にオンラインで近況を伝えました。

アレーナさんは、侵攻が始まってすぐに国外に出る飛行機が次々と欠航になり、このままでは留学も難しくなると感じ、今月1日、急きょロシアを抜け出すことにしました。

チケットを手に入れるのは難しくなっていましたが、なんとか確保してロシアからフィンランドのヘルシンキ、スペインのバルセロナを経由し、友人の待つフランスのマルセイユまでバスと飛行機を乗り継いで36時間かけて移動しました。

アレーナさんは「留学のあと帰国できるか、家族にまた会えるかも分からない。未来が何も分からない状態での出国となりました」と、ロシアに残す家族や友人が気がかりだといいます。

サンクトペテルブルクでは、経済制裁もあってATMに長い列ができていて、現金が簡単に手に入らない状況になっているほか、至る所に警察官がいて、集団で歩いているとデモの疑いをかけられるということです。

アレーナさんは、ウクライナに親族がいて「侵攻は絶対に許されないし、望んでいないロシア人も大勢います」と話しますが、友人が逮捕されるなど監視は厳しくなっていて、「ロシアで自分の人生や家族をリスクにさらしてまでデモを選ぶのはとても難しいことです」と苦しい胸の内を話します。

こうした中で、アレーナさんは、どこに行ってもロシア人だというだけで差別されるのではないかと不安を募らせています。

自分からロシア人だと言わないようにしているということで「自分がロシア人だと伝えると『受け入れてもらえないのでは』と不安になります。研究する場所や住まいを探すときは自分がロシア人だということは伏せるようにしていて、どう見られているのか、いつも気にしてしまいます」と打ち明けていました。

留学先の慶應義塾大学「国籍で差別しない」

アレーナさんを受け入れる慶應義塾大学では現在、13人のロシア国籍の留学生が学んでいて、この春、アレーナさんを含めて3人のロシア国籍の留学生を受け入れる予定だということです。

大学は「国籍によって受け入れを差別せず、誰でも安心して勉学と研究が続けられるよう努力したい」としています。
アレーナさんを受け入れる三木則尚教授は「ロシア人だとひとくくりにして“悪い国の人たち”とすると分断ができてしまう。学問は分断するのではなく、一緒に勉強して争いをなくそうということが大事だと思っている。市民には何の罪もないので、できるだけたくさんの学生を受け入れて、お互いのことを知るということを推進したい」と話していました。