ウクライナ侵攻で広がる企業の“ロシア離れ”

ウクライナ侵攻で広がる企業の“ロシア離れ”
ロシアがウクライナに軍事侵攻してから3週間がたちました。国際社会からロシアへの非難が強まる中、欧米の企業の間では“ロシア離れ”の動きが広がっています。ロシアでビジネスを続けてきた日本企業も対応を迫られています。米エール大学のまとめでは、何らかの対応を取ると発表した世界の企業や団体は17日の時点であわせて400以上。最新の状況をまとめました。

世界を代表する企業が次々と

ロシアから距離を置く動きを見せているのは、世界的に名前が知られた大企業です。
ITやファッション、製造業から金融まで、あらゆる業種に広がっています。
IT
アメリカのIT大手アップルは今月1日、「ロシアによるウクライナへの侵攻に深い懸念を抱いている」と表明。ロシア市場でシェア1位のスマートフォンをはじめとするすべての商品の販売取りやめを発表した。

(ほかの主な企業)
マイクロソフト ロシアにおけるサービスと製品の新規販売をすべて停止。
グーグル 検索サイトやYouTubeの広告サービスを一時停止。
アマゾン ロシアに向けた商品の配送やクラウドサービスの契約の受け付け停止。
外食・食品
アメリカのハンバーガーチェーン大手のマクドナルドは8日、「ウクライナの罪のない人々に言い表せない苦しみを引き起こしている」として、ロシア国内のおよそ850の店舗の一時閉鎖を発表。モスクワの店舗では閉店前に多くの人が訪れ、店の外まで長い行列ができた。

(ほかの主な企業)
スターバックス ロシア国内に少なくとも100ある店舗の営業を停止。
コカ・コーラ ロシアにおけるすべての事業を停止。
家具・ファッション
スウェーデン発祥の家具大手イケアは3日、ロシア国内の店舗の営業を一時停止すると発表。ロシアとの間の製品のやり取りも停止。軍事侵攻を非難するとともに、サプライチェーンや貿易の混乱が深刻であることも訴えた。

(ほかの主な企業)
シャネル ロシア国内の店舗を一時閉鎖ロシアへの商品配送やオンライン販売も停止。
プラダ ロシアでの店舗販売を停止。
H&M ロシア国内の営業を一時停止。
ナイキ ロシア国内での注文受け付けを一時停止。
自動車・航空機
ドイツの大手自動車メーカー、フォルクスワーゲンは3日、軍事侵攻を「大きな落胆と衝撃」と表現し、ロシアにある2つの工場での車の生産を停止することを発表。ロシアに向けた車の輸出も停止した。

(ほかの主な企業)
フォード ロシアにおける合弁事業の停止。
ボルボ トラックの現地生産と乗用車のロシアへの輸出を停止。
ボーイング ロシアの航空会社に対する機体のメンテナンスや技術的な支援を中断。
クレジットカード・金融
アメリカの大手クレジットカード会社、マスターカードビザは、それぞれ5日、ロシアでのカード事業の停止を発表。ロシアの金融機関が発行した両社のカードの決済ができなくなった。ほかの国で発行されたカードもロシア国内で使えなくなった。

(ほかの主な企業)
ゴールドマンサックス アメリカの主要金融機関で初めて、ロシア事業からの撤退を表明。
エネルギー
イギリスの大手石油会社シェルは8日、原油や天然ガスなどの調達を終了させてロシア事業から完全に撤退すると発表。軍事侵攻のあともロシアから原油を購入していたことについて「正しい判断でなかった」と釈明した。

(ほかの主な企業)
エクソンモービル ロシア極東のサハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」の稼働を中止し、撤退に向けた手続きを始めると発表。

情報統制の影響挙げる企業も

ロシア事業を停止する企業の中には、情報統制が厳しくなっていることを理由に挙げるところもあります。
TikTok 動画投稿サービスを停止。
ロシア軍の活動について意図的に誤った情報を拡散した個人や団体に罰則を科すとする法律の改正案にプーチン大統領が署名したことで、従業員やユーザーが不利益を被るリスクを配慮したとしている。
ネットフリックス ロシア国内でのサービスを停止。
一定規模以上の動画配信サービス企業に対し、政府系テレビ局などの放送の配信を義務づけるロシアの新しい法律には従わないと表明。

日本企業も対応迫られる

ロシアの軍事侵攻をめぐり事態が深刻化するなか、日本企業の間でもロシアでの生産や輸出を停止する動きが広がっています。

(日本企業の主な動き)
トヨタ自動車 ロシアでの現地生産・完成車のロシアへの輸出停止。
日産自動車 ロシアでの現地生産・完成車のロシアへの輸出停止。
パナソニック ロシアとの取引は原則停止。
コマツ 当面、ロシア向けの出荷を見合わせ。
日立製作所 ロシアへの輸出、電力設備を除くロシア製造拠点の稼働を順次停止。
ソニーグループ ゲーム機「プレイステーション」とソフトウエアについてロシアへの出荷を停止。ロシア向けオンラインストアも運営を停止。
任天堂 ロシア向けオンラインショップでの販売を停止。
資生堂 ロシア向け輸出出荷を停止、ロシアでの広告宣伝など中止。
花王 ロシアへの輸出出荷・広告活動を停止(女性や乳幼児の衛生的な暮らしを最低限維持できる製品のみ継続)。
ファーストリテイリング ユニクロのロシア事業一時停止。

日本企業への影響は

物流の混乱や不透明な経済状況など、企業によって事業を見直した理由はさまざまです。

JETRO=日本貿易振興機構がロシアの軍事侵攻が始まった直後の2月に、ロシアでのビジネスへの影響について複数回答で尋ねたところ、下記のような結果になりました。
▽ルーブルの下落に伴う販売価格への影響など(71%)
▽海外送金や入金決済の困難(52%)
▽通関以外の物流面の混乱(40%)
(アンケートはおよそ210社を対象に実施。89社が回答)
調査を行ったJETRO海外調査部ロシア・CIS担当の下社学主幹は、今後、現地での事業の縮小や撤退に踏み切る企業が出てくる可能性を指摘します。
下社学主幹
「ロシアに対する経済制裁の緩和は見通しが立たないと思いますし、いったん定着してしまったネガティブなイメージを覆すことは容易ではない。サプライチェーンの混乱などもあるなかで、限られた資源やリソースをいかにうまく配分していくかという中においては、事業の縮小、さらに撤退を余儀なくされる企業も出てくるかもしれない」

ロシアは強く反発

企業のロシア離れに、プーチン大統領は強く反発しています。

10日には、「生産を停止する企業には断固とした態度で臨む必要がある」と述べて、撤退を決めた外資企業の資産をロシア側のものにする考えを示しました。
このプーチン大統領の反応を、一般社団法人・ロシアNIS貿易会モスクワ事務所の齋藤大輔所長は、雇用や社会の安定を維持するためロシア離れの流れを食い止めようと強くけん制したものだと分析しています。
齋藤所長も、ロシアでのビジネスの先行きは厳しいと見ています。
齋藤大輔所長
「今後の制裁やロシアの対抗措置によっては、事業撤退もやむなしという厳しい判断を求められる可能性が高い。商品を販売する企業を中心に撤退を決断する企業も増えてくるだろう。最悪の場合、半分近くに減るのではないか」