マリウポリ 劇場に攻撃 「最大の激戦地」で いま何が

ウクライナ東部・マリウポリで、子どもを含めた大勢の市民が避難していた劇場が破壊されました。被害の全容は明らかになっておらず、救助活動は難航しているとみられます。
「最大の激戦地」とも呼ばれる現地で、いま何が起きているのか…現地からの声を交えてお伝えします。

市議会がSNSに…

マリウポリ市議会が17日、SNS「テレグラム」に投稿した内容です。

「ロシア軍による攻撃が連日のように続き、一日あたり50発から100発の砲撃を受けている」
「街は16日間にわたって封鎖されていて、約3万人が脱出したものの、35万人以上の住民がシェルターや地下室に隠れて生活を続けている」

マリウポリとは? なぜロシアは攻撃するの?

マリウポリは黒海北部にある内海・アゾフ海に面した人口40万人余りの都市です。
東部の親ロシア派の支配地域と、ロシアが一方的に併合したクリミアを結ぶ要衝で、ロシア軍による侵攻が始まった当初から攻撃を受けてきました。

「ロシア軍はクリミア半島と直接つながる陸路を確保するため、多大な犠牲を払ってでもマリウポリを占領しようとしている。しかしそうなればウクライナはアゾフ海から遮断されるため、激しく抵抗している」(ウクライナ・クレバ外相)

劇場への攻撃 そこには大勢の市民が

ウクライナのクレバ外相は16日、大勢の人たちが避難していたマリウポリの劇場がロシア軍の攻撃を受けたとツイッターに投稿しました。
「マリウポリでまたもや恐ろしい戦争犯罪が起きた。数百人の市民が避難していた劇場がロシアの攻撃を受けた。建物は完全に破壊された。ロシア人たちはこの場所が市民の避難先だと知らなかったわけがない。マリウポリを助けてくれ!ロシアの戦争犯罪者たちを止めてくれ!」(クレバ外相のツイッター)

これに対し、ロシア国営のタス通信は「ロシアはこの日マリウポリに対して空爆はしておらず、ウクライナ側が劇場を爆破した」と報じ、ウクライナ側の主張を否定しています。
こちらは攻撃前の14日、劇場周辺を撮影したとする衛星画像です。人工衛星を運用するアメリカの企業「マクサー・テクノロジーズ」が公開しました。

赤い屋根の劇場の外側、正面と裏側の地面にそれぞれロシア語で дети(子どもたち)ということばが大きく白い文字で書かれています。避難する人を攻撃から守るための試みだったとみられています。
17日に開かれた国連安保理の緊急会合では、欧米各国からロシアを非難する発言が相次ぎました。

アメリカ・トーマスグリーンフィールド国連大使
「劇場の外には『子どもたち』というロシア語が、空から見える大きな白い文字で書かれていたが、ロシア軍はそれでも攻撃した。残虐行為は責任を問われる」

ウクライナ・キスリツァ国連大使
「ロシアのパイロットによって建物は完全に破壊された。子どもたちが意図的に標的にされている」

一方で、ロシア・ネベンジャ国連大使は…
「マリウポリの劇場を含め市民や民間施設に対する攻撃はしていない」
従来の主張を繰り返しました。

地元の警察署長が語る 深刻な街の状況

マリウポリはロシア軍に包囲され、電気・ガス・水道・通信なども寸断され、住民たちの状況は極端に悪化しているーー地元の警察署長が16日までに、現地の深刻な状況を明かしてくれました。
「街はすでに2週間にわたって、電気や水道、ガスが止まっています。ロシア軍の包囲、攻撃が長引き、住民たちの状況は極端に悪化しています。病院は患者が多すぎて、医薬品などが足りません」

「ロシア軍は常に上空を飛んでいて、ターゲットが現れるのを待つか、インフラを攻撃して破壊しています。ここで起きていることは現実離れしていて、誰もが街から逃げたいと思っています」

「公園や病院の敷地に集団墓地」

「いま必要なのは、水と食料、医薬品、衛生用品です。そして停戦です。インフラの復旧の障害となっているがれきも取り除かなくてはいけません。そのためにも一時的に停戦する必要があります」
「ロシア軍の砲撃がまだ続いていて、空からの攻撃や地上軍からの射撃によって多くの人が死んでいます。死者を埋葬するために、公園や病院の敷地に、集団墓地がつくられています」

「ロシアと戦わないなら、せめて」

(Q 国際社会に伝えたいことは?)
「この8年の間、私たちはマリウポリを誇りに思いながら街づくりをしてきましたが、ロシアの脅威がこの地を去ることはありませんでした」

「もしロシアと戦わないのであれば、せめて空を守ってほしいです。武器も必要です。市民も志願兵として戦っているのです」

停戦交渉のゆくえは

ロシアとウクライナの停戦をめぐる交渉はオンライン形式で続いています。

交渉ではロシアが強く要求してきたウクライナの「中立化」をめぐり、NATO=北大西洋条約機構に加盟しない代わりになる別の安全保障の枠組みについて議論が続いているとみられます。

ロシア外務省のザハロワ報道官は17日「軍事的、政治的、人道的な問題が話し合われている」と述べました。

一方でウクライナ代表団のポドリャク大統領府顧問は、双方の主張の隔たりは依然として大きく、合意にはまだ数日から1週間半ほどかかるという見通しを示しています。