地震 東北新幹線脱線 3月中の運転再開厳しい見通し【詳しく】

16日夜の地震で宮城県内を走行中の東北新幹線が脱線した事故で、17日、新たにレールのゆがみが見つかったほか、架線を支える柱が折れるなど広い範囲で設備の被害が確認されました。
JR東日本は復旧作業に時間がかかるため3月中の全線での運転再開は困難だという見通しを明らかにしました。

一方、宮城県と福島県での東北自動車道の通行止めは17日午後3時半に解除されました。

17両編成のうち16両が脱線

16日夜11時半ごろ東北地方で震度6強の揺れを観測した地震により、東北新幹線の下り列車で東京発、仙台行きの「やまびこ223号」が福島駅と白石蔵王駅の間の宮城県白石市内で脱線しました。乗客と乗員78人にけがはありませんでした。

JR東日本によりますと、現場付近と新幹線の車両には激しい脱線を防ぐ装置が設置されていたものの、17両編成のうち1両を除く16両が脱線し合わせて68の車輪の軸のうち60基がレールから外れたということです。

また一部の車両はレールから大幅にずれて傾くなど大きな被害が確認されました。
JR東日本が宮城県白石市の事故現場で撮影した写真では、脱線した新幹線の先頭車両が車体の幅の半分ほどまで大きくずれているのが確認できます。
国の運輸安全委員会は鉄道事故調査官を現場に派遣し脱線の経緯や原因を詳しく調べています。

沿線の設備についても徐々に被害が明らかになり、17日になってレールが上下にゆがんでいるのが複数の箇所で見つかったほか、架線を支える柱が折れたり高架の下にある橋脚が一部崩れたりするなど広い範囲で被害が確認されました。

点検ができていない区間もあり被害はさらに拡大するおそれがあります。

運輸安全委“脱線は車両の停止とほぼ同時か”

国の運輸安全委員会は鉄道事故調査官2人を派遣し17日午後、現地で調査を行いました。

17日は停止している車両やその近くの線路の状況などについて確認したということです。

現地で調査にあたった運輸安全委員会の加藤剛鉄道事故調査官は「車両が停止している場所の手前の線路のレールなどに『脱線痕』と呼ばれるあとがみられないことから、スピードを出して走行している最中でなく車両が停止する直前かもしくは止まったあとに脱線が起きたとみられる」と述べました。

ほぼ停止している状況でなぜ脱線が起きたかについては「現場での地震の揺れが列車にどのように伝わったのかがポイントになる」として、今後、運転士から当時の状況について話を聞くとともに、揺れの分析なども行ったうえで原因の調査を進めていく考えを示しました。

那須塩原~盛岡 不通「全線再開 3月中は厳しい」JR

JR東日本は17日夕方記者会見を開き、市川東太郎 副社長が「ご利用の皆様には大変なご不便とご心配をおかけし、誠に申し訳ありません」と陳謝しました。

東北新幹線は、17日午後6時現在も那須塩原駅と盛岡駅の間で不通になっています。

市川副社長は全線での運転再開について、レールがゆがんだり複数の電柱が傾いたりするなど被害が特に大きい福島駅と仙台駅の間の復旧に時間がかかるため3月中は困難だという見通しを明らかにしました。

また今回の事故で17両編成のうち16両が脱線したことについて「ほとんどが脱線するのは私自身もなかなか経験がなく、これまで進めてきた安全対策が技術的にどうだったのか、しっかり検証したうえで対策を考えていきたい」と述べ、国の運輸安全委員会の調査結果を踏まえながら再発防止に向けた対策を進めていく考えを示しました。

一方、東京駅から那須塩原駅、盛岡駅から新函館北斗駅の間については、大幅に本数を減らしたうえで運転しています。

低速での走行中に脱線か

JR東日本によりますと、東北新幹線が脱線した福島駅と白石蔵王駅の間は、最高速度が320キロとなっていますが、地震が起きた際、列車は白石蔵王駅での停車に向けて減速していたということです。

地震を検知して非常ブレーキがかかる過程で脱線したとしています。

当時の速度については、今後詳しい分析をする予定で現在正確には分かっていないものの、低速での走行中に脱線したとみられるということです。

安全装置がどのように機能したか検証へ JR東日本

JR東日本は平成16年に起きた新潟県中越地震で走行中の上越新幹線が脱線したことを受けて、新幹線の脱線を防ぐための対策を進めてきました。

今回、脱線した列車には「逸脱防止ガイド」と呼ばれる、車輪がレールから大きく外れないための装置が取り付けられていたほか、現場付近にも「レール転倒防止装置」が設置されていました。

しかし今回、列車のほとんどの車両が脱線したうえ、一部の車両はレールから大きく外れて傾くなどしていて、JRは今後、安全装置がどのように機能したか検証することにしています。

一方、地震の初期のかすかな揺れを検知すると自動的に非常ブレーキがかかる装置については、今回も正常に作動したと考えられるとしています。

去年の地震でも多数被害 耐震化には制約も

東北新幹線は、去年2月にも震度6強を観測した地震で架線を支える柱が傾いたり、高架橋にひびが入ったりするなど、940か所の設備に被害が出ました。

JR東日本は東日本大震災を教訓に設備の耐震補強工事を進めていますが、何百キロにも及ぶ沿線の工事を進める上では制約があります。

工事を行えるのは終電後から始発までの深夜から早朝に限られるため、東北新幹線にある架線を支える柱で耐震化が必要な1万3500本のうち、作業を終えたのは去年の時点で2000本程度で、工事が完了する時期は未定だということです。

脱線現場 橋脚の一部にひび 鉄骨見える状態に

脱線現場は宮城県白石市の白石蔵王駅から南西におよそ2キロメートルの場所で、画像はNHKのヘリコプターが午前7時半前に撮影したものです。
赤色の先頭車両が停車している高架の真下にある橋脚の一部が大きくひび割れてはがれ落ち地面に散乱し、中の鉄骨が見える状態になっています。
その近くでは架線を支える柱が折れて、高架上に倒れかかっている様子も見えます。

乗客「新幹線が揺れてジャンプした」

脱線した東北新幹線に乗っていた、東京からの仕事帰りだったという仙台市の男性は「新幹線が揺れてジャンプした感じでした。周囲には車両内で体を打っている人がいて、私も腕と脚とひじをぶつけて通路に放り出されました。長い時間、停電した車内にいて、すごく寒かったです」と話していました。

旅行から仙台に戻る途中だったという女性は「車内では、過呼吸になっている人がいてざわついていました。やっと帰って来られてよかったです」と話していました。

出張帰りだという男性は「何があったのかなと思ったら、電気が消えて、下から突き上げるような揺れを感じました。一刻も早く体を休めたいです」と話していました。

宮城 大崎市でも架線の柱折れ曲がる 広い範囲で設備の被害か

JR東日本が宮城県大崎市で撮影した写真では、線路の架線を支える柱が根本から折れ曲がり、傾いているのが確認できます。

「逸脱防げず 分析して検証を」脱線調査経験の専門家

鉄道工学の専門家で、国の運輸安全委員会で新幹線の脱線事故を調査した経験がある、日本大学の松本陽 上席研究員は「脱線事故が起きてしまったが、幸いけが人は出ず、これまでの教訓が生かされたと思う。ただ、車輪がレールから大きく外れる“逸脱”を防ぐための装置が取り付けられていたにもかかわらず、逸脱を完全に防ぐことができなかった」と指摘しました。

そのうえで「運輸安全委員会は、現場近くの地震の揺れを分析したうえで列車にどんな影響を及ぼしたか検証し、今後の対策に生かしてほしい」と話していました。

また高架の下にある橋脚が一部崩れたことについて「東日本大震災や熊本地震では目立った被害がなかったので、橋脚の耐震補強は十分だと考えられていた。今回の被害を映像で見てショックを受けたが、原因を分析してさらに対策を強化する必要がある」と指摘していました。

高速バスのターミナルは混雑 仙台

東北新幹線が不通となっている中、仙台市のバスターミナルには首都圏や東北各地への移動手段を求め多くの人が訪れて混雑しています。
JR仙台駅前にある高速バスのターミナルは17日午後、東北新幹線や在来線を使う予定だった人たちなどがバスのチケットを買い求めに訪れていました。ただ、地震の影響による高速道路の通行止めなどによって運休するバスも相次いでいます。

東北自動車道 通行止め解除(午後3時半)

宮城県警察本部によりますと、地震のため通行止めとなっていた東北自動車道の白石インターチェンジと福島県の国見インターチェンジの間の下り線は、午後3時半に通行止めが解除されました。
これで宮城県、福島県内の東北自動車道は全線で通行ができるようになりました。

一方常磐自動車道では、30センチ程度の大きなひび割れや段差が複数のか所で発生しているのが確認されたということです。
現在復旧作業を急いでいて、19日の午前中をめどに通行止めを解除したいとしています。

航空各社 18日も臨時便

東北新幹線が一部区間で不通となっていることを受け、航空各社は17日に続き18日も臨時便を運航することを決めました。

全日空と日本航空はJR東日本が東北新幹線の全線での運転再開が今月中は困難だという見通しを明らかにしたことを受けて18日以降の臨時便の運航を決めました。

▽全日空は18日が羽田空港と仙台空港を結ぶ6便、19日から今月24日までは羽田空港と仙台空港を結ぶ一日8便となっています。また18日と19日の羽田空港と秋田空港を結ぶ合わせて4便については機体を大型化するということです。

▽日本航空は18日が羽田空港と仙台空港を結ぶ8便、羽田空港と花巻空港を結ぶ4便、羽田空港と山形空港を結ぶ2便、大阪空港と花巻空港を結ぶ2便となっています。

19日以降も状況に応じて臨時便を出すということで、決まり次第ホームページなどで周知するとしています。

斉藤国土交通相「長引く可能性も」

斉藤国土交通大臣は参議院予算委員会で、東北新幹線の脱線について「JR東日本から、17両中16両が脱線するなど場合によっては、運転見合わせが長くなる可能性があると報告を受けている。可能なかぎり早期に復旧の見込みについて公表するよう指導したい」と述べました。