岸田首相 一般の事業所では濃厚接触者 特定しない方針

岸田総理大臣は16日夜、記者会見し、今月21日が期限となっている18都道府県のまん延防止等重点措置について、すべての地域で解除する方針を明らかにしました。
また社会経済活動を維持するため、地域の感染状況などに応じて濃厚接触者の特定は医療機関や高齢者施設、家庭内などに限定し、感染防止対策が行われている一般の事業所では特定しない考えを示しました。

この中で岸田総理大臣は「新型コロナの全国的な感染者数は、ピーク時の半分程度まで落ち着いてきた。病床利用率や在宅療養者数も、地域差はあるものの明確な低下傾向が確認されている」と述べました。

そのうえで、今月21日が期限となっている18都道府県のまん延防止等重点措置について、すべての地域で解除する方針を明らかにしました。

そして17日、感染症などの専門家でつくる「基本的対処方針分科会」に諮り、国会に報告した上で対策本部で正式に決定すると説明しました。

また、新型コロナ対策の今後の基本的な考え方について「オミクロン株であっても致死率や重症化率がインフルエンザよりも高く、汎用性の高い経口治療薬もいまだ存在しない。さらなる変異の可能性も残る」と指摘し、しばらくは最大限の警戒をしつつ、安全・安心を確保しながら「可能な限り日常の生活を取り戻す」期間にしていくと強調しました。

そして「第6波」に備えて準備した新型コロナ対策の全体像を堅持しながら、オミクロン株の特徴に合わせて強化するとしたうえで、飲み薬や点滴薬などの治療薬をさらに300万回分追加で確保し、国産治療薬の開発に向けた治験への支援を倍増するほか、抗原検査キットは買い取り保証を行って今後6か月で3億5000万回分を確保する考えを明らかにしました。

ワクチン接種をめぐり、岸田総理大臣は「4回目接種のありようについては、専門家の知見を踏まえ検討するが、いかなる結論にも対応できるようファイザー社、モデルナ社との交渉を進め4回目接種の必要量を確保できる見通しが立った」と述べました。

そしてファイザーを7500万回分、モデルナを7000万回分、それぞれ追加で購入し、最も適切な時期に最新のワクチンを接種できるよう必要量を確保する方針を示しました。

一連の対策には今年度予算の予備費から1兆3500億円をあてることを明らかにしました。

一方、社会経済活動の回復に向けて、岸田総理大臣は大規模なイベントや旅行、大人数での会合などにあたって、安全・安心を高めるために、ワクチンの接種歴や抗原検査キットの活用を推奨する考えを示しました。

また、濃厚接触者となったことで無症状でも仕事を休まざるをえず、業務に支障が出るケースが出ているとして、濃厚接触者の範囲の重点化と待機期間の短縮を進めることを明らかにしました。

具体的には、地域の感染状況などに応じて濃厚接触者を特定するのは医療機関や高齢者施設、家庭内などに限定し、感染防止対策が行われている一般の事業所では特定しない考えを示しました。

そのうえで、濃厚接触者となったエッセンシャルワーカー以外の一般の人は検査キットを活用することで待機期間を短縮できるようにすると説明しました。

一方、観光需要の喚起策をめぐって「まずは重点措置の終了に伴い『県民割』について関係団体の合意を前提に来月1日から地域ブロックへと拡大する。ワクチン接種歴や検査キットを活用した取り組みを条件に盛り込み、安心して県境をまたいだ旅行を楽しんでいただけるようにする。全国的『Go To』については、引き続き注意深く、検討していく」と述べました。

また、岸田総理大臣は「わたし自身が最も心を痛めているのは子どもたちのことだ」と述べ、新型コロナの影響が長期に渡る中で、感染防止と子どもの健やかな学びが両立できるよう、専門家の意見を聴きながら検討していく考えを示しました。

そして「これから年度末や新年度を迎え、多くの人が集まり出会う季節となる。感染リスクの高い行動を控え、改めてマスクの着用、手洗い、3密の回避や換気などの基本的感染防止策の徹底を心がけていただくようお願いする」と呼びかけました。

まん延防止「効果は出ていると考える」

岸田総理大臣は記者会見で、今回のまん延防止等重点措置の効果について「医療体制を強化し、稼働させる取り組みを進める意義があった。また、飲食店でのクラスターは、ことしの最初の時点では、かなりの数報告されていたが、現在はほとんど報告されていない。こうした変化が生じていることを考えると、行動制限や感染対策の政策効果は出ていると考えている」と述べました。

そのうえで「今回の対策を振り返り、それをしっかり踏まえたうえで、ことし6月をメドに、中長期的な観点から感染対策の強化と検討を行っていく」と述べました。

日本でマスク着用せず行動できる時期「難しい」

岸田総理大臣は記者会見で、日本でマスクを着用せずに行動できる時期の見通しについて「今後しばらくは最大限の警戒をしながら、可能なかぎり日常生活を取り戻す移行期間だ。マスクの着用は感染防止対策の基本であり、引き続き、移行期間では国民にお願いし続けていかなければならない。今の時点で具体的に『いつになったら着用しなくてすむのか』を申し上げることは難しい」と述べました。

トリガー条項凍結解除 “あらゆる政策で何が効果的か検討”

岸田総理大臣は記者会見で、ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除について「激変緩和措置の拡大や業種や分野別の対策、地方自治体が支援を行った際の財政的支援など重層的な対策を用意しており、対策の効果をしっかりと確認しなければならない。今後、さらに価格が高騰する状況になるならば、国民生活や日本経済を守るために、あらゆる選択肢を排除することなく措置を用意しなければならず『トリガー条項』の凍結解除をはじめ、あらゆる政策について何が最も効果的なのか、どのように実施することがより大きな効果につながるのかという観点から、しっかり検討していきたい」と述べました。

また、日本の原子力発電所への武力攻撃に備える法整備の必要性を質問されたのに対し「国内法と国際法をしっかり連動させて原発の安全を守っていくことが基本だが、ミサイルなどの技術も毎日進歩しているので、国民の生命や暮らしを守るために十分かどうかは絶えず考えていかなければならない。国家安全保障戦略をはじめとする3文書の見直しの中で具体的に考えていく」と述べました。

さらに、オリンピック・パラリンピック担当大臣を置くため、閣僚の数を1つ増やしている措置の期限が今月末となっていることについて「法律で定められているように今月末で閣僚の数が1つ減ることに対応していかなければならない。現在、兼務となっているワクチン接種の担当大臣を誰にするのか、ワクチンを含めた感染症対策にどんな体制で臨むのかは今、調整している」と述べました。

また、記者団が「閣僚としての期限を迎える大臣にワクチン接種を兼務させたのは、政権発足当時、ワクチンの問題を軽視していたのではないか」と質問したのに対し「全くあたらない。ワクチンの接種や感染症対策は政府全体としてどう対応するかということだ。引き続き、新しい体制でも政府全体で総力戦で感染症対策に立ち向かっていきたい」と述べました。