岸田首相 ロシアへの制裁強化「最恵国待遇」撤回を表明

岸田総理大臣は16日夜、記者会見し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は歴史に刻むべき非道な行為だと厳しく非難したうえで、貿易上の優遇措置などを保障する「最恵国待遇」を撤回し、輸出入を制限するなどさらに制裁を強化する方針を示しました。

また避難民の受け入れに向け、松野官房長官のもとに連絡調整会議を設置したと発表しました。

この中で、岸田総理大臣は「ロシアの今回の暴挙は歴史に刻むべき非道な行為だ。自由、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜くため、わが国は断固としてこれを糾弾する。G7=主要7か国と連携して、事態の展開に合わせて機動的に厳しい制裁措置を講じていく」と述べました。

そして「国際社会の一致団結した怒りの声や制裁措置に対し、ロシアが対抗措置を取り始めた。エネルギーと食料の純輸入国である日本の経済と生活への打撃が懸念される」と指摘したうえで「ロシアの揺さぶりや脅かしに屈することは決して許されない。われわれは侵略と戦い、祖国を守るため、懸命に行動するウクライナの人々を断固たる決意で支援する。今こそ省エネや避難民の受け入れをはじめ国民の協力が不可欠だ。政府としても国民への経済的打撃をできるかぎり小さくするため、ありとあらゆる政策を思い切って講じていく」と強調しました。

そのうえで、ロシアに対する制裁のさらなる強化を行うとして、先にG7が発表した首脳声明を踏まえ、ロシアに対して外交的・経済的圧力を一層強め、法令上の措置を含めて必要な対応をとる考えを示しました。

具体的には、貿易上の優遇措置などを保障する「最恵国待遇」を撤回し、輸出入の管理のさらなる強化に向け、ロシア向けのぜいたく品の輸出や一部物品の輸入を禁止し、今後、速やかに対象品目を特定すると明らかにしました。

また、IMF=国際通貨基金や世界銀行など国際的な金融機関からロシアが融資を受けることを防ぐため、G7で連携して取り組むほか、ロシアのプーチン大統領に近いエリート層や「オリガルヒ」と呼ばれる富豪などに対する資産凍結の対象範囲をさらに拡大し、デジタル資産などを用いた制裁回避に対応するため、暗号資産の交換業者などの協力も得て、金融面での制裁をさらに強化する方針も示しました。

また、岸田総理大臣は、ウクライナの国民に対し、食料や医療品など必要な支援を届けるとともに、NGOとも連携して支援を進めるほか、ウクライナ側からの要請を踏まえ医療用資材や双眼鏡などの輸送を16日から始めたと説明しました。

さらにウクライナからの避難民を積極的に受け入れていく方針を重ねて表明したうえで、松野官房長官のもとに関係閣僚らによる「ウクライナ避難民対策連絡調整会議」を設置したと発表し「関係省庁が連携して、避難民と受け入れ先のマッチングなど、円滑な受け入れや生活支援を行っていく」と述べました。

このほか、ウクライナ情勢を背景に原油などの価格が高騰していることについて「すでにガソリン価格を172円程度に抑える激変緩和措置など、当面の対応を決定し、国民に届けている。今後も原油価格、原材料価格、食材価格などへの波及状況を注視し、長引く場合はさらに機動的に対応していく」と述べました。

“ロシアへの制裁強化へ最大限努力” 

岸田総理大臣は記者会見で、ロシアへのさらなる制裁の強化について「わが国自身のエネルギー安全保障を追求しながら、可能なかぎりG7=主要7か国に同調させるべく、最大限、制裁措置の強化に向けて努力していきたい。 G7が共同声明で明らかにした5項目について、早急に実施するところから制裁への強化に取り組んでいきたい」と述べました。

「中国にも責任ある行動求めたい」

岸田総理大臣は記者会見で、ウクライナ情勢における中国の役割について「一刻も早くロシアの侵略を止め、ロシア軍を撤退させるために、国際社会は結束しなければならない。国際秩序のありようが問われている事態において、中国にも責任ある行動を求めたい」と述べました。

そのうえで「わが国は、中国の隣国であるがゆえに、経済、文化などさまざまな関係があるし、東シナ海などにおいてさまざまな課題もあり、対話をしていかなければいけない立場にあるので、対話の機会に、国際秩序を安定させることの大切さなどをしっかり訴えていく」と述べました。

そして「日本として、中国に責任ある行動をとってもらうべく、働きかけを行っていく姿勢は大事なのではないか。国際法違反の状況に対して、国際社会で協調して強いメッセージを発することや、緊張を緩和させるための制裁措置をはじめとする努力で協力していきたい」と述べました。

ウクライナの避難民受け入れ「状況みながら適切に対応したい」

岸田総理大臣は記者会見で、ウクライナからの避難民の受け入れに関連して「わが国は難民認定については、難民条約の定義に基づいて、難民を認定すべきものは適切に認定してきた。難民と認められないものであっても、今回のウクライナ難民のように人道上の配慮が必要だと認められるものは、わが国への在留を認めるなど、状況に応じて適切に対応してきた」と述べました。

そのうえで「今回のウクライナのケースも、今後も状況をみながら適切に対応していきたい。『ウクライナ避難民対策連絡調整会議』を中心に、難民と受け入れ先のマッチング以外にも、日本語教育や就学、就労、定住など、さまざまな円滑な受け入れのために、必要な措置や生活支援を行っていきたい」と述べました。

サハリンの石油・天然ガス開発事業について

岸田総理大臣は記者会見で、日本の大手商社も出資するロシア サハリンの石油・天然ガス開発事業について「サハリン2をはじめとするプロジェクトは、わが国が長期的に低価格でエネルギーを調達できる権益を持っている。サハリン2は、需要量のおよそ9%にあたるLNG=液化天然ガスを供給していて、エネルギーの安定供給上、わが国にとって重要なプロジェクトだ」と指摘しました。

そのうえで「エネルギー安全保障の観点をしっかり追求しながら、可能なかぎり制裁措置をG7に同調させていく取り組みを進めていきたい」と述べました。