ロシア “国債デフォルト”の見方強まる 外貨準備の凍結などで

欧米各国から厳しい経済制裁を科されているロシアは16日以降、ドル建ての国債の利払いなどの期限を相次いで迎えます。
制裁によって多額の外貨準備が凍結されていることなどから、デフォルト=債務不履行に陥るという見方が強まっています。

ロシアは今月以降、国債の利払いなどの期限を相次いで迎える予定で、このうち16日はおよそ1億1700万ドル、日本円でおよそ138億円のドル建て国債の利払いが必要になります。

支払う余力はあるとみられる一方、ロシアは経済制裁によって外貨準備の半分近くにあたるおよそ3000億ドル、日本円で35兆円相当が凍結されています。

こうしたことから、ロシア政府は自国通貨のルーブルで支払いを行う方針も示していますが、価値が急落しているルーブルでの支払いは一方的な返済条件の変更にあたるとして、格付け会社などからデフォルト=債務不履行にあたると認定される可能性があります。

ロシアの外貨建て国債の残高は日本円にしておよそ2兆4000億円で、専門家の間では規模はそれほど大きくないとの指摘もありますが、デフォルトとなった場合、保有する投資家などが損失を被る懸念があります。

また、ロシアの政府や企業にとっては資金調達の手段が狭まることになり、国内経済への影響は避けられない見込みです。

ウクライナへの軍事侵攻後、格付け大手各社はデフォルトの懸念が高まっているとして、ロシア国債の格付けを大幅に引き下げています。

日本の景気には下押し圧力 企業 家計にも影響

ロシア国債がデフォルトと認定された場合の影響について、みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「ロシア国債の残高はさほど大きなものではない。ただ、見えているデータ以外にも、ノンバンクやファンドがリスクを負ってロシアに投資しているかもしれない。金融市場や世界経済への影響はこれから注視していく必要がある」と指摘しています。

そのうえで唐鎌氏は、デフォルトや一連の制裁によって欧米や日本の“ロシア離れ”が進むことでロシアからの資源供給が減り、原油や穀物などの価格が一段と上昇することが懸念されると指摘し、「輸入物価が上がると、結局のところ、われわれが日々消費や投資する対象のモノやサービスも値上がりする。しかし、賃金はそう簡単には上がらない。実質所得が下がり、日本の景気にとっては下押し圧力になってくる。企業も家計も両方に影響する」と話しています。

デフォルト認定の場合 “ロシア離れ”が進むか

ロシアの中央銀行によりますと去年9月末時点で海外の投資家が保有するロシア国債の残高は、670億ドル余りです。

このうちデフォルトに陥るという見方が強まっている外貨建ての国債は、およそ200億ドル日本円にしておよそ2兆4000億円となっています。

日本では、公的年金の積立金を運用しているGPIF=年金積立金管理運用独立行政法人が、去年3月末時点でロシア国債をおよそ280億円保有しています。

ただ、市場関係者の間では日本の金融機関全体でも保有額はそれほど多くはないため、デフォルトと認定された場合でも金融システムへの影響は限定的だという見方が出ています。

一方、今後は、国債以外のロシア向け融資全体に影響が広がることへの懸念もあります。

国際決済銀行によりますと、日本の金融機関全体でロシア向けの貸し出しなどの与信残高は、去年9月末時点で1兆円余りにのぼっていて、大手銀行では今後の返済などに影響が出ないか慎重に見極めたいとしています。

さらに、国債のデフォルトは市場でロシアの対外的な信用力が失われることを示すため、一連の制裁措置もあいまって新たな投融資や企業の進出は難しい状況となり、日本企業の“ロシア離れ”が進むことも想定されます。

ロシア国債の評価額「資産ゼロ」と計上する動きも

金融市場では、ロシア国債のデフォルトを懸念して、資産運用会社がロシアの国債などに投資する投資信託という金融商品で、売買を停止する動きが相次いでいます。

資産運用会社などでつくる投資信託協会によりますと、今月7日時点でロシア関連の投資信託のうち20本以上が、新たな買い付けや解約による換金が停止され、その資産の総額はおよそ200億円にのぼるということです。

これらの投資信託は、いずれもロシアの国債や株式への投資比率が比較的高いもので、一連の経済制裁を受けて国債や株式の売買が事実上できなくなったため、投資信託の価格を算出することができない状態だということです。

一方、こうした状況を受けて、デフォルトが認定される前に、ロシア国債の評価額をゼロとし、損失を計上する動きも出ています。

三菱UFJ国際投信は、およそ20の投資信託について、今月10日以降のロシア国債の評価額をゼロとし、この結果、価格が半分以下に下落したものもあるということです。

会社では運用を途中で終えて、資金を投資家に返還する「繰り上げ償還」も視野に入れているということです。

また、個人投資家向けにルーブル建てのロシア国債を販売している証券会社では、新規の販売を停止しています。

しかし、すでに保有している個人投資家にとっては、経済制裁によってルーブルでの利払いを円に替えたり、市場で売買したりすることが難しくなっています。

このため、会社では売却を希望する投資家から独自に価格を算定して買い取る措置を取っています。