HIV検査数 過去20年間で最少 コロナ禍で保健所業務がひっ迫か

エイズを引き起こすHIV=ヒト免疫不全ウイルスの検査数は去年1年間でおよそ5万8000件と、過去20年間で最も少なくなりました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う保健所の業務のひっ迫などが影響しているとみられ、厚生労働省は感染者を十分に把握できていないおそれがあるとしています。

厚生労働省は15日、去年1年間に国内の保健所や医療機関で行われたHIVの検査数と感染者数を公表しました。

それによりますと、検査数は5万8172件で新型コロナの感染拡大前の2019年のおよそ4割まで減少し、過去20年間で最も少なくなりました。

また、感染者数は速報値で前の年より72人少ない1023人で、このうちおよそ30%にあたる306人がエイズの発症後に感染が分かったということです。

厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い保健所や医療機関の業務がひっ迫して検査が滞ったことや、受検者の検査控えが影響したとみていて、感染者を十分に把握できていないおそれがあるとしています。

HIVは早い段階で検査を受けて治療を始められればエイズの発症を抑えられるほか、ほかの人に感染を広げるリスクを減らすことができることから、厚生労働省は全国の自治体に対して外部機関への委託などでの検査体制の確保を求めています。

エイズ発症前の治療のため検査機会の提供が重要

HIVの検査数が減少していることについて、国立病院機構名古屋医療センターの横幕能行エイズ総合診療部長は「エイズは発症する前の早い段階で治療できれば、感染していない人と変わらない人生を歩むことができるので、新型コロナウイルスの対応で保健所が忙殺される状況でも検査機会を提供する方策を考える必要がある。自治体はエイズの診療に携わっている地域の医療機関に積極的に声を掛けて連携し、どうやって検査機会を持続して提供していくかを検討してほしい」と話しています。