“ロシア軍 暴力的・無差別的な傾向強まる” 米国防総省高官

ロシア軍がウクライナで続ける軍事侵攻についてアメリカ国防総省の高官は14日、ロシア軍が人口の多い地域を制圧するため長距離からの砲撃を増やし、無差別的な傾向が強まっていると指摘しました。
一方、両国の代表団による停戦をめぐる交渉は15日も続けられる予定ですが、具体的な進展に結び付くか見通せない状況です。

ウクライナに侵攻するロシア軍は首都キエフの包囲や東部の要衝マリウポリの掌握に向けて攻勢を強めています。

国連人権高等弁務官事務所は13日までに確認されただけで46人の子どもを含む少なくとも636人の市民が死亡したと明らかにしました。

一方、EU=ヨーロッパ連合のボレル上級代表は14日、ロシア軍が攻勢を強めている東部のマリウポリだけでこれまでに2400人以上の市民が犠牲になったと述べました。

マリウポリを巡っては、退避する人が乗った車、少なくとも160台が14日、避難ルートを通って初めて退避できたと地元の議会などが明らかにした一方、マリウポリに救援物資を送ろうとする車列についてロシア側が妨害していると非難しています。

またキエフでは14日、マンションが砲撃を受け複数の部屋から炎や黒煙があがる様子や、バスとみられる車両が爆発する様子も伝えられています。

アメリカ国防総省の高官は14日、記者団に対し、ロシア軍はこれまでに900発以上のミサイルを発射したとしたうえで人口の多い地域を制圧するため長距離からの砲撃を増やし、暴力的、無差別的な傾向が強まっていると指摘しました。そしてウクライナ側から激しい抵抗を受けながらも、ロシア軍は投入した戦力のうち今も90%弱が戦闘可能な状態を維持しているとの見方を示しました。

両国代表団の停戦交渉 15日も継続へ

こうした中、停戦に向けたロシアとウクライナの代表団による交渉が14日、オンライン形式で行われましたが、ゼレンスキー大統領はこの日、新たな動画をSNSに投稿し「交渉はかなり良好に進んでいると報告を受けた」と明らかにしたうえで15日も交渉が続けられるという見通しを明らかにしました。

ただロシア側はウクライナの「中立化」や「非軍事化」を引き続き要求するなど双方の立場の隔たりは大きいとみられ、具体的な進展に結び付くか見通せない状況です。

官房長官「停戦に向けた前進は見られていないと認識」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「停戦交渉は一時中断したものの15日に再開する見通しと承知している。ただ現時点で停戦に向けた前進は見られていないと認識している」と述べました。

そのうえで「プーチン大統領は非武装化や中立化、クリミアの主権の承認などウクライナが到底受け入れられない要求を掲げ、要求がすべて満たされた時のみ停戦に応じるという強硬な立場を繰り返し明らかにしている。ロシアが侵略をやめ国際社会の声に耳を傾けるよう、引き続きG7をはじめとする国際社会と連携し適切に対応していく」と述べました。

またウクライナに滞在する日本人は13日時点でおよそ60人だと明らかにしたうえで「現時点までに日本人の生命や身体に被害が及んだという情報には接していない」と述べました。