ウクライナ隣国のモルドバ 市民からの寄付が避難者支える

ウクライナからの避難者を受け入れている隣国モルドバでは、経済状況が厳しい中でも市民からの多くの寄付が集まり、避難してきた人たちを支えています。

ウクライナと国境を接するモルドバは、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻以降、これまでに10万人以上の避難者を受け入れています。

首都キシニョフでは、市が2か所の避難所を運営していて、このうちの1つでは新型コロナウイルスの隔離施設を活用して400の個室を用意し、これまでに延べ1万5000人が利用したということです。

施設の担当者によりますと、ベビーカーや衛生用品など多くの寄付が市民から集まっているということで、避難所には、各家庭から寄せられた保存食や防寒具などが保管され、必要とする人たちに無料で配られていました。

ウクライナ東部から家族17人で避難してきたルドミラ・ガルブスさんは、「1日3食食べることができ、子どもにはお菓子がもらえ、ボランティアに面倒を見てもらって助かっています」と話していました。

こうした中、モルドバのポペスク外相が14日、NHKのインタビューに応じ、「モルドバはウクライナとのつながりが強い。砲撃から逃れてくる人は誰でも受け入れる」と述べ、支援の意義を強調しました。

一方、モルドバはヨーロッパ最貧国の1つとも言われていて、ポペスク外相は、「厳しい経済状況が続いていて、予算に限りがある。今後、国境近くで戦闘が激化すれば、新たな難民の急増に対応できない可能性が高い。モルドバだけでは支えることができない」と述べ、日本を含めた国際社会に支援を呼びかけました。

日本のNGO「精神的に不調訴える人多い 国際的支援が重要」

モルドバには幼い子どもを連れた女性などの避難が相次ぎ、現地に入っている日本のNGOは「家族と離れ離れになり、精神的に不調を訴える人の姿も多く見られた。国際的な支援が重要だ」と訴えています。

海外の紛争地や災害現場などで支援に取り組む日本のNGO「ピースウィンズ・ジャパン」は、先月末からポーランドに職員を派遣しましたが、避難してくる人への支援態勢が比較的、手厚かったため、現地時間の今月8日からウクライナの南部と国境を接するモルドバで情報収集を進めています。

現地で活動する松澤礼奈さんによりますと、モルドバの国境付近では子どもを連れた女性などが次々と避難してくる姿が見られ、中には家族と離れ離れになってその不安から精神的な不調を訴える人も少なくなかったということです。

避難してきた人の中には「子どもたちを連れて2日間、ずっと車を運転してきた。モルドバには親類も友人もいないので、どれくらいここにいるかも分からない」と話す母親もいました。

避難した人は用意された大型のバスに乗り込んでモルドバの各地に設けられた一時避難所などに移動しているということで、NGOは現地で食料やシーツなどを購入して避難所の1つに提供しました。

東京にあるモルドバの大使館によりますと、今月11日現在、31万人を超える人が避難のためモルドバに入国し、このうちおよそ10万3000人がモルドバ国内にとどまっているということです。

「ピースウィンズ・ジャパン」の松澤さんは「現時点で大きな混乱はないが、モルドバも経済的に豊かと言えないため、今後は寄付などを通じた国際的な支援が非常に重要になってくる」と話していました。

このNGOは、ウクライナ国内に向けた支援にも取り組み、連携するウクライナの支援団体に送金して医薬品などの調達に役立てててもらうことにしています。