岸田首相「日米同盟の『拡大抑止』は大変重要」参院予算委

国会では14日、参議院予算委員会で集中審議が行われました。
ウクライナ情勢を踏まえて、岸田総理大臣は「日米同盟の『拡大抑止』は大変重要だ」としたうえで、年末までに改定する方針のいわゆる安全保障関連の3つの文書の見直しを通じて、日米同盟の抑止力や対処力の在り方も議論する考えを示しました。

自民 青山氏 ウクライナ情勢踏まえた日米同盟について

日米同盟の拡大抑止とは、アメリカの核戦力と通常戦力の抑止力によって日本を守るという考え方です。

自民党の青山繁晴氏は、ウクライナ情勢を踏まえた日米同盟について、「日米安保があっても、本当に日本を救うのかと懸念している国民が増えているのが現実で、機能するよう強化し直すしかない。日本が自分の抑止力を持たねばならないのではないか」と質問しました。

岸田総理大臣は「日米同盟の『拡大抑止』は大変重要な存在であり、国家安全保障戦略をはじめ3文書の見直しなどを通じ、防衛力の強化はしっかり考えていかなければならない。日米同盟の抑止力や対処力も、在りようを議論していかなければならない」と述べました。

また、アメリカの核兵器を同盟国で共有する「核共有」について「非核三原則や原子力基本法をはじめとする法体系からしても認められない。日米同盟のもと『拡大抑止』は機能していると考えるからこそ核共有の議論は考えない」と述べました。

立民 森参院幹事長 日ロ両国8項目の経済協力プランについて

立憲民主党の森参議院幹事長は、政府の新年度予算案に盛りこまれている、日ロ両国による8項目の経済協力プランについて「このお金を含めた予算案には賛成できない。プーチン大統領の行動に、国際社会が一致団結して『ノーだ』と言っている時に、なにが日ロ経済協力8項目のプランだ」と削除するよう求めました。

岸田総理大臣は「去年末に編成したあと、大変な事態が生じて変化した。予算案の中には、わが国のエネルギー安全保障、人道的な支援、そして日本企業に対する情報提供をはじめとする支援が入っており修正することはできない」と述べました。

公明 秋野氏 ロシアの原発攻撃めぐり問い

公明党の秋野公造氏は、ロシアによるウクライナの原子力発電所への攻撃をめぐり「かつてチェルノブイリ原発の事故の医療支援は、日本が先頭に立って行った。顔が見える支援として放射線被ばくをした際には除染を行ったり、日本に移送して緊急被ばく医療を行ったりする準備を検討すべきではないか」と質問しました。
林外務大臣は「唯一の戦争被爆国であり、また、東京電力福島第一原子力発電所の事故を経験したわが国にとって、指摘は大変重要であり、早速、関係当局とともに協議を開始したい」と述べました。

これに関連して、岸田総理大臣は、福井県警が設置している原子力関連施設の警備の専従部隊について「原発の安全に国民の関心が高まっている今、福井での取り組みを横展開できないか、考えることが重要だ」と述べました。

国民 舟山氏 物価高騰への対応について

国民民主党の舟山康江氏は、物価高騰への対応について「ウクライナ危機の前から、コロナの影響と合わせて、円安により輸入価格が上がり、原材料や企業物価の高騰につながっている。給料も上がらなければ、ものが買えない。価格転嫁と賃上げをどのように進めていくのか」とただしました。

岸田総理大臣は「中小企業の円滑な価格転嫁を進めることの重要性を改めて強く感じるとともに、物価が上がるならば、賃金や所得を引き上げなければならず、春闘でも協力をお願いしている。経済全体が循環する中での成長を伴う価格の上昇を実現するべく努力をしていきたい」と述べました。

維新 石井氏 エネルギーの安定供給の確保について

日本維新の会の石井苗子氏は、エネルギーの安定供給の確保について、「国民が不安を抱えているのは石油は大丈夫か、値段はどのくらい上がるのかということだ。今の情勢が長引くとしたら、安定したエネルギー供給をいかに確保していくのか」と問いました。
萩生田経済産業大臣は「国民生活への影響を最小限に抑えられるよう全力で努力していきたい。そのうえで、再生可能エネルギーの最大限導入や、安全最優先の原発再稼働などによるエネルギー自給率の向上に取り組むほか、資源の調達先の多角化、エネルギーの安定供給について政策的にも前に進めていきたい」と述べました。

共産 井上参院幹事長 核兵器禁止条約に日本不参加について

共産党の井上参議院幹事長は、核兵器禁止条約に日本が参加していないことについて「プーチン大統領が、核兵器で世界をどう喝していることは言語道断だ。核兵器禁止条約に唯一の戦争被爆国日本が背を向けていることは許されない、というのが被爆者の共通の思いだ。この思いに応えてほしい」と求めました。

岸田総理大臣は「核兵器のない世界を目指すという大きな目標に向け、核兵器禁止条約は出口にあたる重要な条約だが、核兵器国は一国たりとも参加していない。わが国は唯一の戦争被爆国として、核兵器国を動かす責務を担っており、現実的な取り組みを進めていきたい」と述べました。

ウクライナ避難民の国内での受け入れについて

一方、岸田総理大臣は、ウクライナからの避難民の国内での受け入れについて「当面の滞在先の確保や生活用品の給付、日本語教育や就労など、避難を希望する人の要望もしっかり踏まえながら、どのような支援ができるか、企業や自治体関係者とも連携しつつ検討していきたい」と述べました。

原子力規制委 更田委員長「原発運転員は厳しい状態」

ロシアによるウクライナの原子力発電所の攻撃をめぐり、原子力規制委員会の更田委員長は「チェルノブイリ原発は最終的に停止してから20年が経過し、使用済みの燃料の冷却はずいぶん進んでいる。電源の必要性はかなり低くなっており、全部の電源が失われても1か月かそれよりも長い期間、冷却はできると考えている」と述べました。

一方で、ウクライナ南東部にあるヨーロッパ最大規模のザポリージャ原子力発電所については「運転が続いている状態で何かあった時に扱いがやっかいだ。ロシアによる制圧下にあって運転員も心理的、体力的に極めて厳しい状態にあるだろう」と述べました。