現金受領の広島県議ら34人を一転起訴 河井元法相 選挙買収事件

河井克行元法務大臣の実刑判決が確定した3年前の参議院選挙をめぐる大規模な買収事件で、広島地方検察庁は現金を受け取ったとされながら不起訴になったあと、検察審査会から「起訴すべき」と議決された広島の地元議員らのうち、体調不良の1人を除く34人について14日、公職選挙法違反の罪で一転して起訴しました。
このうち25人は略式起訴で、ほかの9人は公開の法廷で正式な裁判が開かれます。

河井克行元法務大臣の実刑判決が確定した3年前の参議院選挙をめぐる大規模な買収事件では、ことし1月、東京の検察審査会が裁判で現金を受け取ったと認定されたものの不起訴となった広島の地元議員ら100人のうち、35人を「起訴相当」46人を「不起訴不当」と議決したと公表しました。

これを受けて検察当局が再捜査した結果、広島地方検察庁は「起訴相当」とされた地元議員ら35人のうち、体調不良の1人を除く34人について14日、公職選挙法違反の罪で一転して起訴しました。

このうち25人は、書面だけの審査で罰金刑などを求める略式起訴で、買収の趣旨を否定するなどした9人は正式に起訴され、公開の法廷で裁判が開かれます。

起訴された34人は、今後、有罪が確定すれば公職選挙法の規定で公民権が停止され、現職の議員は失職することになります。

一方「起訴相当」とされた体調不良の1人と「不起訴不当」とされた46人の合わせて47人について、東京地検特捜部は改めて不起訴にしました。

起訴された議員 今後は

再捜査の結果、起訴された34人のうち26人は「起訴相当」と議決された時点で広島県議会議員など議員を務めていました。

このうち半数の13人は14日までに辞職し、残りの13人は現職の議員です。

現職の議員のうち4人は書面だけで審理される略式起訴で、買収の趣旨を否定するなどした9人は公開の法廷で裁判が開かれます。

4人はすでに辞職願を出していますが、今後、罰金などの有罪が確定すれば公職選挙法の規定で公民権が停止され、その時点で現職であれば、失職することになります。

正式に起訴された9人も今後の裁判で有罪が確定すれば公民権停止となり、その時点で現職の場合は、失職します。

有罪が確定した場合、公民権停止の期間は原則5年間ですが期間は裁判所の判断で短縮される場合もあります。

東京地検 森本次席検事「検察審査会の議決 理解できる内容」

東京地方検察庁の森本宏次席検事は、臨時の記者会見を開き、議員ら34人を一転して起訴した理由を説明しました。

この中で森本次席検事は「検察審査会の議決は、国民の中から選ばれた人たちによる判断なので、それらを踏まえて処分を再検討すべきと考えた。また、検察審査会の議決自体が理解できる内容だった」と述べました。

また、当初、現金を受け取ったとされる議員ら全員を不起訴にしたことについて、検察と議員らとの間で、事実上の「司法取引」が行われたのではないかという質問に対しては、「事実上の『司法取引』は行っていない。そうした指摘が必ず出ると思っていたので、捜査は慎重にやってきたつもりだ。少なくとも議員らの取り調べでは、録音録画も行っている」と述べました。

元刑事裁判官 水野智幸氏「国民の意識に近い妥当な判断」

広島の地元議員ら34人が一転して起訴されたことについて、元刑事裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授は「公職選挙法を最も守らないといけない立場の議員が起訴されたことは、検察が検察審査会の議決に真摯(しんし)に応えた結果で、国民の意識に近い妥当な判断だ」と評価しました。

その一方「検察が検察審査会の議決を受けて一転して起訴するケースは、香典などを違法に寄付した罪で略式起訴された菅原元経済産業大臣や、賭けマージャンをしたとして賭博の罪で略式起訴された東京高等検察庁の黒川元検事長の事件などこのところ続いている。検察は、初めから検察審査会がどのような判断をする可能性があるかを踏まえて刑事処分を行うべきだ」と指摘しました。

松野官房長官「政治家は疑念持たれないよう常に襟を正して」

松野官房長官は、記者会見で「検察の捜査に関わることでありコメントは控えたいが、法務大臣経験者について刑事裁判で有罪判決が確定したことや、それによって国民の政治不信を招いたという批判があることは重く受け止めている。政治家は責任を自覚し、国民に疑念を持たれないよう常に襟を正していかなければならない」と述べました。

自民 茂木幹事長 議員の処分問われ「県連で適切に判断」

自民党の茂木幹事長は記者会見で、起訴された議員の処分を党として行うか問われたのに対し「議員の出処進退は、地方議員においても、まず自らが判断すべきだ。党則では、地方議員の党紀に関する審査は都道府県連で行うことになっており、県連で適切に判断されると考えている」と述べました。

立民 泉代表「自民 全国共通のおかしな体質」

立憲民主党の泉代表は、党の執行役員会で「本当にありえない認識、感覚に驚くばかりだ。自民党は京都でも議員による不透明な資金の流れが指摘されるなど、このようなことは枚挙にいとまがなく、全国共通のおかしな体質を持っていると言わざるを得ない。我々は絶対に許さず、今の自民党の政治を変えなければいけない」と述べました。

検察幹部「国民の声として受け入れる必要あると考えた」

検察審査会の議決を受け、広島の地元議員ら34人を一転して起訴したことについて検察幹部の1人は「検察は当初、不起訴にしたが、犯罪は成立するとして起訴猶予としていた。このため検察審査会が『起訴すべき』と示した判断は、よほどありえないものでなければ、国民の声として受け入れる必要があると考えた」と話していました。

また別の幹部は「刑罰は国民の良識にかなったものでなくてはならない。国民から見て検察権の行使が『独善的』だとか『恣意的』だなどと批判を受けることが容易に想定される事件は、国民の良識がどこにあるか謙虚に見極めていかなければならない」と話していました。