スノーボード 浮かび上がった“公平性”の課題 パラリンピック

スノーボード 浮かび上がった“公平性”の課題 パラリンピック
北京パラリンピック、スノーボードはパラリンピックの単独の競技となって2大会目でした。日本からは男子6人が出場。チームとして技術の向上に励みましたが、メダル獲得はなりませんでした。
スノーボードクロスでは、今大会から4人が一緒に滑ることになり、より白熱したレースが繰り広げられた一方で、障害の程度の違いをどうやって公平なものにしていくのかといった課題も浮かび上がりました。
(スポーツニュース部記者 持井俊哉)

チームで挑んだ日本

スノーボードに出場した男子6人を率いてきた二星謙一監督は、今大会、日本はひとつのチームとして大会に挑んだと振り返りました。

「4年前は個人個人だったが、今はチームとして結束力のあるチーム」

パラスノーボードが独立した競技となり、初めて開催されたのは前回のピョンチャン大会で日本は、金メダルと銅メダルを獲得しました。
その大会後、強化指定選手として選ばれたのが、今大会の代表となった6人でした。
<腕に障害があるクラス(UL)>
 大岩根正隆(41)
<足に重い障害があるクラス(LL1)>
 小栗大地(41)
 小須田潤太(31)
<足に障害があるクラス(LL2)>
 市川貴仁(30)
 岡本圭司(40)
 田渕伸司(40)
障害の程度や個性が異なる6人の平均年齢は37歳。海外遠征などで一緒に過ごす時間が長かった6人は、全員でパラリンピックを目指してきました。
そして全員の出場が決まったときは「この6人で行くことができてよかった」と選手たちは口をそろえました。

4年後への可能性

迎えた北京パラリンピック。
選手たちは試合前の円陣で気持ちを高めました。

最初の種目はスノーボードクロス。
準々決勝では、岡本選手と田渕選手が同じ組に入り、田渕選手は岡本選手が先行できるようにほかの選手を抑える作戦を立てて臨んでいたといいます。

「1人でも表彰台に」というチームの思いがこもったレースでした。

しかし、この種目では小栗選手と市川選手の5位が最高で、次のバンクドスラロームでも、目指してきたメダルには届きませんでした。
レースのあと選手たちが口にしたのは仲間への思いでした。

「世界一最高のチームの一員になれたのが最高にうれしい」

お互いの強みを伸ばすため何ができるのかを考えて進歩してきた、このチームの精神は日本のパラスノーボードが、4年後に向けてさらに進化していく可能性を秘めています。

中国の躍進 “本番と同じコースで何度も”

今大会で躍進したのが、開催国の中国です。
出場選手は男女合わせて18人と最多で、金メダル3つを含む10個のメダルを獲得しました。
特に男子スノーボードクロスの腕に障害があるクラスでは中国勢が表彰台を独占しました。

2種目に出場し、金メダルと銀メダルを獲得した紀立家選手は本番と同じコースで何度も練習を重ねた地元開催のメリットがあったことを明かしました。
紀立家選手(中国)
「私たちは何年も前から準備を進めてきた。海外の選手を参考に、みんなで勉強して、トレーニングでとことん追い込んだ」

“公平性”をどう保つか

しかし、パラスノーボードの“公平性”をめぐっては課題も浮かび上がりました。

パラリンピックのアルペンスキーやクロスカントリースキーでは、障害の程度に応じた係数を実際のタイムにかけ合わせてなどして公平性を保っています。
一方、スノーボードの腕に障害があるクラスでは、肩から先がない選手と手首から先がない選手が、同じクラスで同じ条件のもと滑ります。このためスタートバーを引く際や、滑走中のバランスを取る際に差が生まれてしまいます。
また今大会の女子は、出場する選手が少なかったことで、より“公平性”がクローズアップされました。

今大会で行われたのは足に障害があるクラス1つだけで、腕に障害があるクラスと足に重い障害があるクラスは設けられませんでした。
出場する選手が少ないというのがその理由でした。

アメリカのブレナ・ハッカビー選手は前回大会では、足に重い障害があるクラスに出場し2種目で金メダルを獲得しました。
しかし、今大会では、足に障害があるクラスで、自分よりも障害の程度が軽い選手たちと競うことになりました。

「膝上切断という大きな不利がある。でもレースに出場できない選択の方が私にとってはダメージが大きい」
結果的にハッカービー選手は、スノーボードクロスで銅メダル、バンクドスラロームでは、2回目に会心の滑りを見せて、逆転で金メダルを獲得しましたが、レース後、より公平に試合ができる環境が必要だと訴えました。
ブレナ・ハッカビー選手
「ここで最高の選手たちと一緒にレースができるのは、とても光栄なことだと思う。ただ、これが終わったら障害が重いクラスに戻りたいしこの大会をきっかけに大きな変化があり、パラスノーボードが広がっていくことを願う」
独立した競技となって2大会目となったパラスノーボード。
4年後に向けてより魅力的なものに進化させていくためにも、今大会で浮かび上がった“公平性”の課題に真剣に向き合っていくことが必要だと感じました。