ゼレンスキー大統領「約1300人のウクライナ兵が死亡」

ウクライナのゼレンスキー大統領は12日に開いた記者会見で、ロシアによる軍事侵攻が始まって以降「およそ1300人のウクライナ兵が死亡した」と明らかにしました。

「降伏する意思がないことを改めて強調」

また「われわれにとってこの戦争での勝利はウクライナ人が生き続け、ウクライナを存続させることを意味する。ウクライナの存続を望むのであれば、勝つしかない」と述べ、降伏する意思がないことを改めて強調しました。

「少なくとも579人が死亡」

国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まった先月24日から今月11日までにウクライナで少なくとも579人が死亡したと発表しました。

「42人は子ども」

このうち42人は子どもだということです。
亡くなった579人のうち、130人が東部のドネツク州とルガンスク州で、ほかの449人は首都キエフや第2の都市ハリコフ、北部のチェルニヒウ、南部のヘルソンなど各地で確認されています。

犠牲者の多くは砲撃やミサイル、空爆などによって命を落としたということです。
また、けがをした人は1000人を超えたということです。

国連人権高等弁務官事務所は、数百人の死傷者がいるとされる東部マリウポリなど、詳しい状況が確認できていないケースも多いとしていて、亡くなった人やけがをした市民は実際にはさらに多いとみられます。

ウクライナの公共放送 ユーチューブで連日伝える

ウクライナの公共放送は動画投稿サイト、ユーチューブで国内各地の被害状況を英語で連日、伝えています。
12日の動画では、ウクライナ北部の都市チェルニヒウで深夜、ロシア軍が中心部にあるホテルなどを爆撃し、周辺の建物をことごとく破壊したと伝えています。

この攻撃でけがをした人はいませんでしたが、一帯では停電が続いているほか、携帯電話やインターネットがつながりにくい状態で、復旧に向けた取り組みが進められているということです。

また、首都キエフ近郊にある軍の飛行場周辺にミサイル6発が着弾し、弾薬庫の燃料タンクが炎上して人々が消火に追われる様子を伝えています。

「第2の都市ハリコフ近郊では複数の医療機関が砲撃を受ける」

一方、第2の都市ハリコフ近郊では複数の医療機関が前日に続いて砲撃を受け、ガスが使えなくなったほか、一部で停電が起きていると伝えています。

映像には砲弾によると見られる痕が建物に多く残っている様子や、窓が割れた救急車などが映されていて、被害の大きさを物語っています。

この日は犠牲者はいませんでしたが、前日の攻撃では3人が亡くなったほか、病院のスタッフがけがをしたということです。

ザポリージャ原発「ロシアが管理しようとしている」

IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は12日、声明を発表し、ウクライナ南東部にあるザポリージャ原子力発電所をロシア国営の原子力企業ロスアトムが完全かつ恒久的に管理しようしているとウクライナ側から報告を受けたとしています。

ウクライナ国営の原子力企業の報告では、ザポリージャ原発はロシア軍司令官の指揮下にあり、およそ400人のロシア兵士がいるということです。

一方、ロスアトムの代表はグロッシ事務局長に対して、ロスアトムの専門家がザポリージャ原発にいることは認めたものの、原発の運用は掌握しておらず、原発を管理体制に組み込む意図もないと否定したとしています。

「ロシア兵よ、止まれ。家族を思い出して、国に帰れ」

ウクライナ各地でロシア軍による攻撃が続く中、西部の都市リビウでは、幹線道路などに市民に対して戦闘に備えるよう訴える看板が数多く設置されています。
このうち、銃を構える2人の兵士が描かれている看板には「国の守り方を心得よ」と書かれていて、市民に対して、地元で結成されている防衛組織に参加するよう呼びかけています。

また、今後、ロシア兵が市街地に攻め入ってくる事態も想定して、ロシア兵向けの看板も設置されていて、「ロシア兵よ、止まれ。家族を思い出して、国に帰れ」と記されたものもあります。

ウクライナでの戦闘はこれまでのところ首都キエフの周辺や南東部に集中していますが、これらの地域と比べると、比較的安全だとされている西部のリビウでも日に日に緊張が高まっています。

ウクライナ西部が支援物資供給拠点に

ルーマニア国境から40キロほど離れたウクライナ西部にはヨーロッパ各国から送られた医薬品などの支援物資が集まり、国内各地に送り届ける拠点になっています。
ウクライナ西部チェルニフツィ市はルーマニア国境までおよそ40キロのところにある人口およそ26万人の街です。

首都キエフまで500キロ余り離れていますが、市内各所にはウクライナ軍の兵士が配置され、市役所の入り口には土のうが積まれるなどロシア軍の侵攻に備えていました。

中心部にある病院にはヨーロッパ各国から届けられた薬や医療器具などの支援物資が集まり、薬剤師やボランティアが仕分け作業に追われていました。

この病院によりますと、戦闘が続いている地域の病院の求めに応じて、必要とされる医薬品などを届けているということです。

避難所で4万人受け入れ

一方、市の中心部にあるスーパーでは食用油や小麦粉の購入が制限されていたほか、街角には空爆に備え、地下シェルターの場所を知らせる貼り紙が張られるなど、市民生活に暗い影を落としています。

また、チェルニフツィ市によりますと、戦闘などで家を追われた人たちのため、50か所余りの公共施設などに避難所を設けていて、現在、およそ4万人を受け入れているということです。

ロマン・クリチュク市長は「ここはまだ空爆を受けていない街の1つなので安全だ。軍や警察などと常に連携をとって情報収集をしている。シェルターなども準備している」と話していました。

砲撃被害のウクライナ東部では「けが人に医薬品が届いていない」

また、支援物資の拠点となっている病院のビクトル・プロッツ院長は「砲撃などの被害を受けて東部などでは包帯や、やけど用の薬が足りていません。けが人に医薬品が届いていないという情報が各地の病院から寄せられている」と話していました。

キエフから家族14人で避難しているという女性は「最初に避難していたキエフ近郊の息子の家の近くに砲撃を受けたので、ここに逃れてきました。ウクライナのために力になりたいので、国内に残るつもりです」と声を詰まらせながら話していました。