【詳しく】ウクライナへの侵攻 隣国ポーランドの現地新聞は?

ウクライナへのロシアの侵攻が始まって2週間余り。

避難者は8日時点で215万人を超え、このうち隣国ポーランドに避難した人は129万人余りに上ると言われています。
ポーランドの人たちはどう受け止めているのか?
ロシアによるウクライナの侵攻をどう思っているのか?

ポーランドの現代史などに詳しい津田塾大学の吉岡潤教授に、地元新聞などをもとに分析してもらいました。
(国際部記者 吉元明訓)

ポーランドってどんな国?

ウクライナの西側に隣接していて、ウクライナの周囲の国の中ではロシアを除けば、人口が最も多い国です(3827万人、2020年末時点)。1999年にNATO、2004年にEUにそれぞれ加盟しています。

吉岡さんによると、ポーランドにとってロシアは「軍事的な脅威として大きな不安をもたらす存在」。

かつてのロシア帝国に虐げられ、第2次世界大戦では領土の一部を旧ソビエトに占領され、冷戦期には従属させられてきた歴史があるからだといいます。

一方、ウクライナとの関係は歴史的、民族的な対立により常に良好だったわけではありませんでしたが、冷戦終結後、東ヨーロッパをめぐる国際関係が変化する中、両国とも対ロシアを意識して「互いに思うことはあるけれど、仲よくしないといけない関係」にあるといいます。

避難する人の多くがポーランドに 受け止めは?

こうした中で起きたロシアのウクライナへの侵攻。

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所によると、8日の時点で、ウクライナから国外に避難した215万人を超える人たちのうち、およそ6割にあたる129万人余りがポーランドに避難しているといいます。

吉岡さんは、ポーランド国内の全国紙やテレビの報道を分析することで、国内の受け止めが見えてくるといいます。

ウクライナに侵攻した直後、各メディアが報道した世論調査は次のような結果でした。
《全国紙「ジェチポスポリタ」の調査》※2月25日実施
▼受け入れるべき
・すべての避難民を受け入れるべき 57.9%
・最も必要に迫られ脅威にさらされた人のみを受け入れるべき 34.8%

▼受け入れるべきではない
・必要な期間だけウクライナ領で避難民収容所を建設し維持すべき 3.1%
・そもそもウクライナ避難民への支援に関わるべきではない 1.0%

▼わからない 3.2%

《テレビ局「TVN24」》※2月25日実施
▼ウクライナからの戦争避難民を受け入れについて
・政府負担で避難所を確保すべきである 80%
・戦争避難民を自宅に受け入れ、住居と食事を与えてもよい 33%
・支援物資を送るつもりがある 80%
・資金援助をするつもりがある 52%
・街頭に出て支持を表明するつもりがある 6%
・ポーランドに居住するウクライナ人と個人的なつながりがある 53%
・戦争避難民の大量流入は自分たちやその家族にとって脅威となるだろ 18%

世論調査から見えてくることは?

吉岡さんは、これまでのポーランド国内の対ウクライナ感情からすると、かなり避難者や支援に前向きな印象を受けたと話します。

2014年にロシアが一方的にウクライナのクリミアを併合した際に行われた、調査会社の世論調査では、「ポーランドはどうふるまうべきか」という質問に対して、「他国と歩調を合わせる」が67%、「関与すべきでない」が21%というものでした。

今回、ポーランド国内の世論がウクライナ寄りになっているのは、多くの人がロシアに対して危機感を感じているからだと、吉岡さんは指摘します。

(津田塾大学 吉岡潤教授)
「クリミアの時も大きな問題として捉えられていましたが、今回、もしウクライナがロシアに占領されてしまうと、国境を接するポーランドにもロシアによる侵攻や武力衝突のおそれが出てきます。そうした危機感も『ウクライナを助けなきゃ』という強い思いにつながっているのだと思います」

一方、避難民の大量流入が続いていることから今後不安を感じるという意見が増えてくる懸念もあるとしています。

ロシアの侵攻については、どう受け止めている?

先ほどのテレビ局の世論調査では、ロシアによる侵攻についての設問もあり、次のような結果でした。

《テレビ局「TVN24」》※2月25日実施
▼ウクライナに対するロシアの侵攻を非難するか
・強く非難する 81%
・どちらかというと非難 8%
・どちらでもない 7%
・どちらかというと非難しない 1%
・非難しない 3%

こうした調査結果から、吉岡さんは、ポーランド国内では、ロシアの脅威がこれまで以上に切迫したものとして捉えられていることがわかるとしています。

(津田塾大学 吉岡潤教授)
「ロシア軍が集結している場所との距離感が『すぐ隣で起こっている』という感覚なのだと思います。情報の切迫度がはるかに具体的なんです」

加えて、ポーランド国内で危機感が高まっている理由の1つとして吉岡さんが挙げたのが、第2次世界大戦中、旧ソビエトに領土を一部占領された時との“共通点”です。

当時、旧ソビエトは「ドイツがポーランドに侵攻したからポーランド政府は存在しない」として、そこに住む“兄弟民族”である、ウクライナ人とベラルーシ人を救出する名目で、ポーランドの東半分を占領しました。

今回、プーチン大統領が「ウクライナ政府によって虐げられた人を保護するため」だとして、侵攻を正当化している点などは、そうした歴史と似通っていて、強い切迫感を覚えるポーランド人が多いのではないかと、吉岡さんは分析しています。

ウクライナ危機とポーランド

ポーランドの外務省は、欧米諸国がウクライナへの武器供与を進める中、8日、声明を発表して、所有するすべてのミグ29戦闘機を、即時に無償でアメリカに提供すると発表しました。

旧ソビエト製のミグ29戦闘機は、ウクライナ軍が扱いに慣れている機体で、ウクライナ側が、供与を要請していたことを受けての対応とみられます。

しかしアメリカ側はウクライナへの移送にあたって懸念があるとして慎重な姿勢を示しています。

ロシアの侵攻を受けて、ウクライナへの支援の動きが一層高まる中、歴史上、関係が深いポーランドの動向も注目していきたいと思います。