“まん延防止”解除 条件緩和の新たな考え方を提示 政府分科会

今月21日に期限となる「まん延防止等重点措置」の解除の条件について、政府の新型コロナ対策分科会で議論が行われました。
政府から新規感染者数が微増や高止まりの状況でも、病床使用率の低下が見込まれれば解除できるなどと、条件を緩和する新たな考え方が示され、専門家側からは大筋で賛成する意見が出されたということです。

11日に開かれた会合では、18都道府県で適用されている重点措置を解除する際の条件について、新たな考え方が政府から示されました。

重点措置の解除を判断する際には、これまでは「新規感染者が減少傾向で医療への負荷の低下が見られる」こととしていましたが、社会経済への負荷が大きいとして新たな考え方では、

▽新規感染者数が微増傾向や高止まりの状況でも病床使用率が低下し、医療への負荷が下がると見込まれる場合や、
▽病床使用率や重症病床の使用率が50%を超えていても、新規感染者数が減少傾向で、今後、医療への負荷が下がると見込まれる場合は、解除できるとしています。

また、大規模なイベントの人数制限について重点措置の対象地域では最大2万人としてきましたが、感染防止計画を策定したうえで大声を出さない場合は、収容定員まで入れることができるとする方針も示されました。

内閣官房によりますと、専門家側からは大筋で賛成する意見が出されたということで、今後、新たな考え方に基づいて重点措置の解除の判断を行うかどうか、政府の基本的対処方針分科会で議論されるということです。

尾身会長「対策の負の影響も十分考慮」

政府の分科会の尾身茂会長は「行動制限による社会への影響が大きく、特に子どもたちの学びの機会が制限されて精神面でも影響が出てきているなど、対策の負の影響も十分考慮しないといけないという専門家の共通認識があった。さらに、3回目のワクチン接種率が高齢者で6割を超えて重症化をかなり効果的に防げるレベルになってきたということもある。社会や経済の活動を少しずつ動かしながら対策を行う時期に来ている」と話しています。

専門家から柔軟な判断を求める意見書

分科会のメンバーで、行動経済学が専門の大阪大学の大竹文雄特任教授は、11日の会合で、オミクロン株の対策について、社会経済的な観点も取り入れた柔軟な判断を求める意見書を提出しました。

この中では、オミクロン株は、若くて基礎疾患のない人では重症化のリスクが低いことが分かってきたとして医療提供体制の見直しの必要性を指摘し、また、飲食店への対策を中心とした「まん延防止等重点措置」については、感染が拡大したあとでは効果が薄いなどとして、財政的な影響も考慮した判断が必要だと指摘しています。

そのうえで、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人については、ワクチンの3回目接種の促進や早期治療体制の構築、重症化リスクの高い人に行動制限をしてもらい感染するのを防ぐことなどが必要だとしました。

意見書について大竹特任教授は「重症化リスクが高い変異ウイルスかどうかを見極めたうえで適切な対応をとるべきだ。行動制限などの規制による社会経済的なコストを可視化して意思決定をする必要がある」と話していました。

ワクチン接種や検査を活用 政府の考え方 了承

11日開かれた政府の新型コロナ対策分科会では、感染対策をしながら社会・経済活動を続けるため、ワクチンの接種歴や検査による陰性の確認をどう生かせばよいか、政府が取りまとめた考え方も示され、了承されました。

政府が取りまとめた考え方では、ワクチンの接種歴の確認や陰性確認を行うことが推奨される場面として、大人数での会食やホームパーティーといった飲食、小規模のイベントや結婚式、成人式、都道府県間の移動や高齢者施設での面会を挙げています。

この際のワクチンの接種回数については、3回目の追加接種を要件とすることが望ましいものの自治体や事業者の判断で2回接種の人でも認めることが可能だとしています。

さらに、感染リスクが高い場面ではワクチンを接種していない人に配慮して、接種が済んでいる人も含めて事前に検査を受けることが望ましいとしています。

また、子どもについては、6歳以上12歳未満では検査で陰性を確認することが必要とした一方、6歳未満の未就学児では同居する保護者などが同伴する場合には検査は不要だとしています。

こうした仕組みを活用する際には差別的な扱いが起きないようにすることも必要だと指摘していて、分科会でこうした考え方について議論が行われ、了承されたということです。

松野官房長官「経済活動維持とのバランスを意識」

松野官房長官は午後の記者会見で、まん延防止等重点措置を解除する際の考え方について「多くの地域でオミクロン株の感染減少が継続している。引き続き、医療提供体制への負荷の低下に努める必要があるが、第6波の出口に向け、今後は社会経済活動の維持とのバランスを意識しながらどのような対策が必要か考えることが重要だ」と述べました。

また、現在の感染状況について「重点措置が適用されている18都道府県のうち15都道府県で1週間の新規感染者数が前の週の1倍を下回り、減少が継続しているが、軽症や中等症の医療提供体制のひっ迫や、一部地域で高齢の重症者による重症病床使用率の高止まり傾向が続く可能性がある」述べました。

そのうえで「現時点で、自治体から重点措置の延長や解除の要請は来ていない。引き続き、感染状況や医療のひっ迫度合いなどを最大限の警戒感を持って注視しつつ、知事や専門家と緊密に連携し対応していく」と述べました。