韓国大統領選挙 きょう投票 与野党候補が競り合う

5年に1度の韓国大統領選挙は、9日朝から投票が行われています。支持率で競り合ってきた革新系の与党のイ・ジェミョン候補と、保守系の最大野党のユン・ソギョル候補は、日本に対する姿勢に温度差も見られ、選挙結果は、冷え込んでいる日韓関係にも影響を及ぼすことが予想されます。

韓国ではムン・ジェイン(文在寅)大統領の任期がことし5月に満了するのに伴う第20代大統領選挙の投票が、9日午前6時から、1万4000か所余りの投票所で始まりました。ソウル市内の投票所では、新型コロナの感染対策が取られる中、有権者が次々と訪れて1票を投じていました。

選挙戦は、革新政権の継続を掲げる与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)候補と、5年ぶりの政権交代を目指す保守系の最大野党「国民の力」のユン・ソギョル(尹錫悦)候補が、世論調査の支持率で最終盤まで競り合う展開となりました。

テレビ討論会では、韓国国民の間で不満が高まっている不動産価格の高騰や厳しい就職事情への対応、それに新型コロナの感染拡大を受けた経済対策などについて論戦が交わされました。

両候補はいずれも日本との関係を改善する必要があるとしていますが、イ候補は「過去の歴史について日本が心から反省しているとは思えない」と述べるなど、日本に厳しい発言も目立ちます。

ユン候補は「反日を扇動するだけでは国際社会の変化に立ち向かえない」などと強調していて、日本に対する姿勢に温度差も見られ、選挙の結果は冷え込んでいる日韓関係にも影響を及ぼすことが予想されます。

韓国大統領選挙は午後7時半に投票が締め切られたあと即日開票され、9日夜遅くにも勝敗が判明する見通しです。

与党 イ・ジェミョン候補とは

与党「共に民主党」のイ・ジェミョン候補は、南東部アンドン(安東)出身の57歳。生活が苦しい家庭で育ち、中学や高校には通えずに工場で働きながら家計を支えました。

高校卒業と同程度の学力が認められる検定試験に合格して大学に入学し、卒業後は人権派弁護士として活動しました。その後、2010年にソウル近郊・ソンナム(城南)市の市長に当選して政界入りし、2018年からは同じソウル近郊のキョンギ(京畿)道の知事を務めました。

大統領選挙に向けた党内選挙では、分かりやすいメッセージや大胆な行動力で支持を集め、国政に関わったことがない非主流派でありながら2度目の挑戦で与党の公認候補に選ばれました。

選挙戦では、地方行政を率いた実績をもとに「有能な経済大統領」になると強調し、韓国の経済力を世界5位に引き上げると訴えたほか、国民に一定額を無条件で支給して最低限の所得を保障する「ベーシックインカム」の導入を目指したいとする考えも示しました。

外交面では国益中心の「実用外交」を掲げ、日本との関係について、歴史や領土の問題と経済的な協力などを切り離して対応するとしています。ただ「日本が過去の歴史について心から反省しているとは思えない」と述べるなど、厳しい発言も目立ちます。

さらに北朝鮮に対しては、ムン・ジェイン政権の融和的な政策を継承する姿勢を示し、キム・ジョンウン(金正恩)総書記との首脳会談にも意欲を見せています。
非核化をめぐっては、北朝鮮の対応に応じて段階的に制裁を緩和する一方、約束を守らなかった場合には制裁をもとに戻すと主張しています。

最大野党 ユン・ソギョル候補とは

最大野党「国民の力」のユン・ソギョル候補は、首都ソウル出身の61歳。両親が大学教授という家庭で育ち、名門のソウル大学で学んだユン氏は、司法試験にたび重なる挑戦の末に合格して検察官となりました。

保守系のパク・クネ(朴槿恵)前大統領やイ・ミョンバク(李明博)元大統領をめぐる贈収賄事件などを徹底捜査した手腕が革新系のムン・ジェイン大統領に評価され、2019年に検事総長に抜てきされました。

するとユン氏は、大統領の側近で法相に起用されたチョ・グク氏の疑惑を追及して辞任に追い込むなどした結果、政権との対立が深まり、去年3月に検事総長を辞任しました。

政権と真っ向から対じした姿が支持されて政界入りへの待望論が高まる中、最大野党に入党し、大統領選挙の公認候補に選出されました。

選挙戦ではムン政権を厳しく批判し「無能な政権を政権交代によって審判する。真の公正な社会をつくる」として、5年ぶりの政権交代の実現を訴えました。

日本に対しては関係改善への意欲を示し、首脳が相互に相手国を訪問する「シャトル外交」を再開するとともに、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題や韓国向けの輸出管理を厳しくした日本の措置などについて包括的な解決を目指す考えを示しています。

北朝鮮をめぐっては、ミサイル防衛を強化するためにアメリカの迎撃ミサイルシステム「THAAD」の追加配備が必要だと訴え、日米韓3か国の連携を重視していて、北朝鮮の完全な非核化を目指す中で、その進展具合によっては北朝鮮への経済協力を行うなどとしています。

日本との関係 両者は何を訴えた?

慰安婦問題や太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題などで冷え込んでいる日本との関係について、両候補とも改善する必要があるとしていますが、立場の違いも目立っています。

革新系の与党のイ・ジェミョン候補は、歴史や領土をめぐる問題と、経済や社会、外交的な交流・協力を切り離して対応するとしている一方で、日本に対して厳しい発言をしています。

イ候補は記者会見で「日本は韓国を数十年間支配した前歴があり、いまも軍事大国化を夢見ている。過去の歴史について日本が心から反省しているとは思えないので、私たちが心配するのは当然だ」と批判しています。

日韓間の懸案となっている太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題については「真摯(しんし)な謝罪をすれば賠償の問題は現実的な方策を見いだせる」と強調し、日本側の対応を求めています。

保守系の最大野党のユン・ソギョル候補は現在の日韓関係について「ムン・ジェイン政権が国益を優先するのではなく、外交に国内政治を持ち込んだため、国交正常化以降、最悪の状態に陥った」と述べ、ムン政権の対日政策を批判しています。

そのうえで「価値と利益を共有して信頼を構築していく両国関係の新たな50年を描く」として、関係改善に意欲を見せています。

具体的には、首脳が相互に相手国を訪問する「シャトル外交」を再開し、慰安婦や「徴用」をめぐる問題、半導体の原材料などの韓国向けの輸出管理を日本が厳しくした措置など、両国間の懸案の包括的な解決を目指すと強調しています。

北朝鮮との関係 両候補で分かれる主張

北朝鮮への対応をめぐっては両候補で主張が分かれています。

革新系与党のイ・ジェミョン候補は、南北関係の改善を優先したムン・ジェイン政権の取り組みを評価したうえでキム・ジョンウン総書記との首脳会談にも意欲を見せています。非核化をめぐっては北朝鮮の対応に応じて段階的に制裁を緩和し、約束を守らなかった場合には制裁をもとに戻す考えです。

保守系最大野党のユン・ソギョル候補は、アメリカとの同盟や日本との協力に基づく強い抑止力が必要だという立場で、北朝鮮のミサイルに備えてアメリカの迎撃ミサイルシステム「THAAD」を追加配備する必要性を訴えています。

ただ、非核化の進展によっては北朝鮮への経済協力を行うとしているほか、軍事境界線にあるパンムンジョム(板門店)に、韓国、北朝鮮、アメリカの連絡事務所を設置することを目指すとしています。