ロシア国防省 キエフなど4都市 避難ルート設置で一時停戦 発表

ロシアのウクライナへの軍事侵攻が続く中、ロシア国防省は首都キエフなど4つの都市で、市民のための避難ルートを設置し、これらの地域で一時的に停戦すると発表しました。
ただ、ロシアとウクライナは、これまでも東部の都市で予定されたものの、一時的な停戦が実現できず、どこまで市民の避難につながるかは不透明です。

ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は、ウクライナ東部のハリコフにある核物質を扱う研究施設を砲撃するなど攻勢を強めています。

ロシア国防省は7日、首都キエフやハリコフ、東部の要衝マリウポリ、それに北東部のスムイで、日本時間の7日午後4時からそれぞれ市民のための避難ルートを設置し、これらの地域で一時的に停戦すると発表しました。

避難は、市民を陸路で移動させたあと航空機などを使って、別の場所に脱出させるということで、ロシア軍は無人機で監視活動を行うとしています。

ロシア国防省は、一時的な停戦は、プーチン大統領がフランスのマクロン大統領から要請を受けて実施されるとしています。

今回の一時的な停戦についてウクライナのレズニコフ国防相は、「避難ルートを築くためにあらゆることを行っている」と述べ、市民の避難を実現させたいという考えを強調しました。

しかし、東部の都市マリウポリでは、これまで2回合意したにもかかわらず、いずれも一時的な停戦が実現できず、ウクライナ側とロシア側はそれぞれ相手が攻撃を行ったと批判しています。

今回の避難をめぐっては、対象となる市民の数が、これまでで最も多くなりますが、どこまで避難につながるかは不透明です。

“避難は6つのルートで”

ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は7日、ウクライナ国内の4つの都市からの市民の避難は6つのルートで行われると説明しました。

それによりますと、
首都キエフからはベラルーシ南東部のゴメリに向かうルートです。

ロシア国防省は、ゴメリからは航空機でロシアに移送するとしています。

また東部要衝のマリウポリからは、ウクライナのザポリージャとロシア南部のロストフ・ナ・ドヌーに向かう2つのルートがあるとしています。

第2の都市ハリコフからは、ロシア西部のベルゴロド。

そして、北東部のスムイからは、ロシアのベルゴロドとウクライナ中部のポルタワに移すとしています。

「避難ルート」設置は過去にも

ロシアが一時的な停戦を約束したうえで住民を避難させるルートを設けるのは、過去にプーチン政権が軍事介入したシリアの内戦で、敵の拠点を陥落させる前に繰り返していた方法でもあります。

シリアのアサド政権の後ろ盾となっているロシアは2015年、内戦への軍事介入に踏み切り、政権側が反政府勢力の拠点を次々に攻略していくのを支援しました。

このうち、北部の最大都市アレッポや、首都ダマスカス近郊の東グータ地区では、本格的に攻勢を強める前、一時的に停戦したうえで、今回と同じように「人道回廊」と名付けた避難ルートを設けました。

ロシアとしては、市街地への攻撃に伴って多くの市民が犠牲になり、国際社会からの批判が高まることが予想されたため、人道的な配慮として「避難のチャンスを与えた」と、強調するねらいがあったとみられます。

しかし、実際には市民が攻撃を恐れるなどして避難できないうちに攻撃を再開し、制圧しています。

今回、ウクライナでもロシア軍が「人道的な配慮はした」とアピールする一方で、住民の避難が進まないまま都市の掌握に向けて攻勢を強め、さらに多くの市民が犠牲にならないか懸念されます。

松野官房長官「国際刑事裁判所めぐる動向を注視」

松野官房長官は、午後の記者会見で、「ロシアのプーチン大統領に関しICC=国際刑事裁判所の訴訟手続きを進める必要性をどう考えるか」と問われ「今回のロシアによる軍事行動は明白な国際法違反で断じて許容できず、厳しく非難するものだ。かねてからICCをめぐる動向を注視してきているが、事柄の重要性にも鑑み、わが国の対応について予断することは差し控えたい」と述べました。

その上で「今月4日のG7外相会合で発出した共同声明では、一般市民に対する武器の無差別使用を含む戦争犯罪について責任を問うとともに、国際刑事裁判所の検察官によるものを含む継続的な調査および証拠収集を歓迎する旨を表明している」と説明しました。