東京マラソン キプチョゲが優勝 鈴木健吾が4位

パリオリンピックの代表選考レースの出場権をかけた東京マラソンが行われ、男子は鈴木健吾選手が2時間5分台の好タイムで日本選手トップの4位に入りました。
優勝は世界記録保持者で去年の東京オリンピックで金メダルを獲得したケニアのエリウド・キプチョゲ選手で2時間2分40秒でした。

パリオリンピックの代表選考レース、MGC=マラソングランドチャンピオンシップの出場権をかけた東京マラソンは、去年、新型コロナウイルスの影響で実施されなかったため2年ぶりの開催となりました。

日本からは、男女のトップ選手が参加したほか海外勢ではいずれもケニアのエリウド・キプチョゲ選手とブリジット・コスゲイ選手の男女の世界記録保持者が出場する注目の大会となりました。

このうち男子のレースはスタート直後からキプチョゲ選手を中心とする海外勢と、日本記録更新を狙う日本勢に分かれて展開しました。
キプチョゲ選手は、20キロすぎまでみずからの世界記録より速いペースでレースを進めて37キロ手前で独走状態に入り、2時間2分40秒で初優勝しました。
一方、日本勢は、日本記録保持者の鈴木健吾選手などが20キロ付近から先頭をうかがい23キロすぎから4人の集団に絞られました。
鈴木選手は25キロ付近で後続を引き離し、30キロまでに後続の選手に20秒以上の差をつけました。

このあと独走状態を続けた鈴木選手は37キロすぎからペースが落ち、みずからが持つ2時間4分56秒の日本記録には届きませんでしたが、おととしの大会で当時の日本新記録を出した大迫傑選手の記録より1秒速い、2時間5分28秒の日本選手トップとなる4位に入りMGCの出場権を獲得しました。

キプチョゲ「我々が団結しスポーツで世界に平和を」

レースを終えたキプチョゲ選手は「東京オリンピックで東京を走ることができず、またここに戻ってくると約束していたので本当にうれしい。いいレースができて、インスピレーションを与えることができたと思う」とレースを振り返りました。
そのうえで、みずからロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いていることを切り出し「我々が団結してスポーツで世界に平和をもたらそう。世の中には問題を起こす人たちと、解決する人たちの2つしかいない。1つのチームになって解決を見いだそう」と訴えていました。

先頭集団がコース外れペースが落ちるアクシデントも

レースではキプチョゲ選手を含めた先頭集団がコースを間違えそうになるアクシデントが起きました。主催者側の説明によりますと10キロすぎの折り返し地点の近くで、前を走っていた中継車がう回しようとコースを外れたところ、選手たちがついていってしまったということです。このためキプチョゲ選手たちの集団は、この地点を含む1キロのペースが10秒近く遅くなりましたが、次の1キロでは元のペースに戻りました。
東京マラソン財団の早野忠昭レースディレクターは「ご迷惑をおかけした。キプチョゲ選手の代理人もノープロブレムと言ってくれた」と話していました。

鈴木健吾「日本選手の中で勝てたことは収穫」

男子で日本選手トップとなった鈴木健吾選手はフィニッシュした際に涙を見せました。鈴木選手は、去年のびわ湖毎日マラソンで日本記録保持者となりましたが「前に出て目立つのは得意ではないので周りからの見られ方もそうだし、レースも外せないので精神的にも削られる場面が多かった」と振り返りました。涙を見せた理由について「1年間、苦しいこともあったが今回走ったことで自分の中で乗り越えられる部分があった」と話していました。
またレース展開については「早い段階で勝負を決めたいと思っていて、一気に勝負を仕掛けた。苦しい局面も多かったが、1人で最後まで押し切れて日本選手の中で勝てたことは収穫だった」と手応えをつかんだ様子でした。
一方、優勝したキプチョゲ選手と3分近い差がついたことについて「チャレンジをしながら少しずつ距離を縮めていきたい」と先を見据えていました。

女子は一山が日本選手トップ

女子は一山麻緒選手が13年ぶりにマラソンに挑んだ新谷仁美選手に競り勝ち、2時間21分台の好タイムで日本選手トップの6位に入りました。優勝は世界記録保持者で去年の東京オリンピックで銀メダルを獲得したケニアのブリジット・コスゲイ選手で、2時間16分2秒でした。

女子のレースはスタート直後からコスゲイ選手を中心とする海外勢と、日本記録更新を狙う日本勢に分かれて展開しました。

去年の東京オリンピックで銀メダルを獲得したコスゲイ選手は、みずからが持つ2時間14分4秒の世界記録には2分ほど及びませんでしたが、2時間16分2秒で初優勝しました。

一方、日本勢は東京オリンピックでマラソン8位入賞の一山選手と、東京オリンピックの10000メートル代表の新谷選手との激しい競り合いとなりました。

30キロすぎまで日本記録に近いペースでレースが展開され、残り3キロとなっても一山選手の後ろに新谷選手がピタリとつけて走りました。

一山選手は40キロ手前で新谷選手を一気に離すと、2時間21分2秒の好タイムで日本選手トップの6位に入り、MGCの出場権を獲得しました。

一方、新谷選手も13年ぶりのマラソン挑戦で最後まで粘りの走りを見せ、2時間21分17秒で7位となりMGCの出場権を獲得しました。
また、2時間27分38秒で10位に入った森田香織選手もMGCの出場権を獲得しました。

13年ぶりにマラソンに挑戦した新谷選手は「一山選手から離れたラスト2キロくらいのところで足が動かない感じが出てきて、マラソンは本当にどの種目よりも過酷な種目だと思う。私はもう二度と走りたくないと思いました」と新谷選手らしい語り口でレースを振り返りました。

去年の東京オリンピックの10000メートルで満足のいく結果が残せなかったことが、マラソン再挑戦の大きな理由になっていて「ちょっと立ち直れなくて、つらい時期が続いてしまったが、一番、自分にとって苦手とするマラソンに挑戦しようと思えたのも、多くの人たちが支えてくれたおかげだと思っている。自分でももう1回頑張ろうと思えたし、うれしい気持ちなので、本当にありがとうございました」と感謝の気持ちを明かしていました。

一山「スピードと持久力もまだまだ足りない」

女子で日本選手トップとなった一山麻緒選手は「しっかり最後まで動かすという練習を積めて、余裕がないわりには最後の最後まで大きくフォームを崩さずに動かすことができた」と練習の成果が出たとしながらも「2時間20分を切ることが目標だったので、後半にもう1段階、上げられるような思い切りの良さと、スピードと持久力もまだまだ足りないなと思う」と課題を口にしていました。
またフィニッシュのあとに、最後まで競り合った新谷仁美選手と涙を見せながら会話していたことについては「新谷選手が一緒に走ってくれたことが私にとっても心強かったし、『一緒に走ってくれてありがとうございました』という思いを伝えました」と明かしていました。

瀬古リーダー “鈴木 フロックではない”

日本陸上競技連盟の瀬古利彦ロードランニングコミッションリーダーは今回のレースを振り返り、男子で日本選手トップの鈴木選手について「見事に2時間5分台で走り、去年のびわ湖毎日マラソンの日本記録がフロックではないとここで証明した」と高く評価しました。

女子で日本選手トップの一山選手については「オリンピックが終わった後でやっと復活して、まだここにいると見せてくれた」とこちらも評価していました。

またトラックで活躍してきた新谷選手が13年ぶりのマラソン挑戦で一山選手と最後まで競り合ったことについて「今回は2時間21分かかったが日本記録を持つハーフマラソンの力からすれば彼女はフルマラソンで2時間17分から18分の力を持っているので、彼女が本当に1発当たって走ってくれたら、日本のマラソンは変わる。もっともっと頑張ってほしい」と期待を寄せていました。

一方、男子で圧倒的な強さを見せて優勝したキプチョゲ選手については「迫力があって、フォームもきれいで何も言うことがない。目の前で見られたことをうれしく思う。20年間、世界のトップで、神のような人だ。よくぞ地球上に現れた」と絶賛していました。

パリオリンピックの代表選考レース MGC出場権獲得選手一覧

男子(8人)
4位の鈴木健吾選手(日本選手トップ)
7位の其田健也選手
8位の湯澤 舜選手
9位の聞谷賢人選手
11位の土方英和選手
13位の佐藤悠基選手
18位の定方俊樹選手
25位の田口雅也選手
女子(3人)
6位の一山麻緒選手(日本選手トップ)
7位の新谷仁美選手
10位の森田香織選手

3年ぶり 市民ランナーが参加

「東京マラソン」は新型コロナウイルスの影響で去年は事実上の中止となり、開催自体は2年ぶり、市民ランナーの参加は3年ぶりの開催で、東京にまん延防止等重点措置が適用される中、参加ランナーは、全員事前のPCR検査などが義務づけられました。
都庁前のスタートでは、ランナーどうしの間隔をあけるためスタートを3回に分け、東京都の小池知事が10分おきに号砲を鳴らすとランナーたちは一斉に走り出しました。
給水所ではボランティアが手袋をつけて水を用意し、ランナーは手を消毒してから受け取るなどの感染対策がとられました。また、密を避けるためスタッフが沿道では応援しないように呼びかけていました。
今回の大会で主催者は参加人数をコロナ禍前の3万8000人からエントリーを2万5000人に制限し、その後65歳以上の人に対しては重症化リスクが高いとして参加を見送るよう求めた結果、6日の参加者はおよそ1万9000人だったということです。