日野自動車 排出ガスなどの不正データを国に提出 会見で陳謝

トラックメーカー大手の日野自動車は、エンジンの排出ガスや燃費などについての不正なデータを国に提出し、生産に必要な認証を取得していたことを明らかにしました。
排出ガスの濃度が法律で定められた基準を満たしていないおそれなどがあるということで、3種類のエンジンと、これを搭載する車両の出荷を停止したとしています。

日野自動車は4日午後、下義生会長や小木曽聡社長が出席して記者会見を開き、製造する3種類のエンジンで、排出ガスや燃費についての不正なデータを国に提出して生産に必要な「型式認証」を取得していたことを明らかにしました。

このうち中型エンジンについては、長時間作動させたうえで排出ガスの数値を計測すべきにもかかわらず、部品を途中で交換して試験を行っていて、排出ガスの濃度が法律で定められた「保安基準」を満たしていないおそれがあるということです。

また、大型のエンジンでは、燃費の性能が基準を満たしていないことが分かり、不適切な機器の設定により燃料の測定を行うことで、実際よりも燃費が良いように偽っていたとしています。

いずれも担当者が、試験の際に排出ガスや燃費などが性能を満たさないことを把握し、不正だと認識したうえで不適切な手順を踏むなどしたということです。

このほか、不正なデータを提出したかは明らかになっていませんが、小型のエンジンでも、燃費の性能が基準を満たしていないことが分かったということです。

確認された不正を踏まえ、日野自動車は、3種類のエンジンと、これを搭載する車両の出荷を停止したとしています。

不正なデータの提出について、会社は平成28年以降に販売されたエンジンについて確認されているとしていますが、それ以前のエンジンについては今後調査を進めるとしています。

小木曽社長は「会社として重く受け止め、お客様に大変なご迷惑をおかけすることを心からおわび申し上げます」と述べて陳謝し、事実関係の詳細な調査や再発防止策の検討、それに販売済みの車両について、リコールの必要性の判断などを進めていくとしています。

不正の背景は“現場のプレッシャーに対処していなかったこと”

不正が発覚したことを受けて、下会長と小木曽社長は4日、都内で会見し、小木曽社長は冒頭「お客様をはじめとするさまざまな方々へ多大なるご迷惑とご心配をおかけすることとなり、深くおわび申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」と陳謝しました。

そのうえで小木曽社長は「現場における数値目標達成や、スケジュール厳守へのプレッシャーなどへの対応が取られてこなかったことが、問題の背景にあると考えており、経営として非常に重く受け止めている」と述べ、現場のプレッシャーに十分対処していなかったことが不正の背景にあるという認識を示しました。

そのうえで、今後、外部の有識者による「特別調査委員会」を設置して全容解明を急ぐとともに、組織の在り方や開発のプロセスも含めて再発防止策をとりまとる方針を明らかにしました。

また、会社は不正が確認されたエンジンを搭載している中型トラックの「日野レンジャー」、大型トラックの「日野プロフィア」、それに大型観光バスの「日野セレガ」の3車種の出荷を当面、停止するとしています。

これらの車種は国内販売の35%に当たるということで、小木曽社長は「社内でさまざま工夫を行い、雇用への影響を極力なくすようにしていきたい」と述べました。

一方、今回の不正を受けた経営責任については、下会長が「目の前のことをしっかりやっていきたい」と述べたほか、小木曽社長も「会社のどこに問題があったのか、調査を継続し、責任についてはこうした対応に総力を尽くしていくことだと考えている」と述べ、再発防止に取り組むことで責任を果たしたいという考えを示しました。

日野自動車とは

東京 日野市に本社を置く、日野自動車は、アジアや北米市場を中心に世界で90を超える国や地域に展開する商用車メーカーです。

創業は1910年。

東京 羽村市や茨城県古河市などに工場があり、小型から大型までさまざまな種類のトラックのほか、観光バスや路線バス、それにディーゼルエンジンを生産しています。

1966年にトヨタ自動車と業務提携し、その後、2001年に子会社となり、トヨタの車の受託生産も行っています。

昨年度の売り上げは、およそ1兆5000億円でした。

日本自動車販売協会連合会によりますと、国内の去年の大型と中型のトラックの販売台数は、日野自動車が3万1997台でシェアが37%と、この分野ではトップです。

一方、おととしには、日本で製造したエンジンが、アメリカの規制基準を満たさなかったとして、アメリカとカナダにある工場でトラックの生産を停止していました。

過去の不正事例は

車の燃費や排ガスにかかわる検査や試験をめぐっては、これまでも不正が明らかになっています。

三菱自動車工業では、6年前の2016年に実際よりも燃費をよく見せようと、意図的に不正な操作を行って国に提出するデータに手を加えていたことが発覚しました。

この不正で売り上げが大きく落ち込んだことから、フランスのルノーと連合を組む日産自動車から34%の出資を受けて事実上の傘下に入るきっかけになりました。

同じ年には、スズキも燃費のデータを測定する際に国が定める走行試験を実施せず、装置ごとのデータを積み上げて検査機関に申請する不正を行っていたことが発覚しました。

不正が相次いだことを受けて道路運送車両法が改正され、メーカーが国に虚偽の燃費データを申請した場合には、その車を事実上、販売できないようにするなど罰則が強化されました。

しかし、その後も不正が続きます。

2018年には、SUBARUが燃費と排ガスをチェックする際、国が定めた基準に沿わない形で測定するなどの不正を行っていたことが明らかになりました。

この年は、ほかにも日産で排ガスのデータを社内基準に合うよう書き換えていた不正が発覚したのに加え、スズキやマツダでも、国が定めた基準を満たしていないデータを使うなど不適切な検査が相次いで明るみになりました。