ザポリージャ原発 ロシア軍の攻撃で火災 “極めて危険な行為”

ウクライナの外相は、ウクライナ南東部にある国内最大規模の原発がロシア軍の攻撃を受け、火災が起きていると明らかにし、直ちに攻撃をやめるよう訴えています。

ロシアとウクライナは3日、停戦をめぐる2回目の交渉を行いましたが、ロシア軍はウクライナ各地で攻撃を強めています。

ウクライナのクレバ外相は4日、ツイッターでウクライナ南東部、エネルホダルにある国内最大規模のザポリージャ原子力発電所について「ロシア軍があらゆる方向から攻撃している。すでに火災が起きている。もし爆発したら、チェルノブイリの10倍の影響が及ぶ。ロシア側は直ちに攻撃をやめるべきだ」と訴えました。

ザポリージャ原発で4日に撮影された映像では、白いせん光が走り、画面の右手からは煙が上がっている様子が確認できます。

複数の海外メディアは、ウクライナ当局者の話として、火災が起きたのは原発の敷地内にある訓練用の施設などだと伝えています。

IAEA=国際原子力機関はツイッターで、ウクライナ当局からこれまでのところザポリージャ原発で放射線量に変化はないと報告を受けていると明らかにしました。

また、IAEAのグロッシ事務局長はもし原子炉が攻撃されれば、深刻な危険が及ぶとして直ちに攻撃をやめるよう訴えました。

一方、ロシアとウクライナの停戦をめぐる2回目の交渉が3日に行われ、双方の代表団は、戦闘地域の住民のための避難ルートを設置する方針で合意しました。

ロシア側の交渉団は「実質的な一歩だ」としていますが、ウクライナのゼレンスキー大統領は「人々が犠牲にならないよう妥協を見つけるべき点もあるが、妥協できない点もある」として、双方、交渉を続けるとしながらも、依然、難航していることを示唆しています。

今後、人々が退避する間、一時停戦が実現するのか、また、次の交渉で停戦につながるかは見通せない状況です。

米専門家 “欧米や日本にサイバー攻撃も”

外交の専門家で、アメリカ外交問題評議会のリチャード・ハース会長は、ブッシュ政権で国務省の政策立案に関与した経歴もある外交の重鎮です。

3日、NHKのインタビューに応じたハース氏は、ロシアとウクライナの停戦をめぐる交渉について「プーチン大統領には妥協する姿勢が見られない。ロシア国内でプーチン氏に妥協を迫るに十分な圧力もない」として、功を奏する可能性は現時点では低いとの見方を示しました。

そして、ロシアが今後、ウクライナに対して取りうる対応について、ハース氏は「すでに一部確認されているが、最初に起きるのは市民を対象にしたロシア側の通常兵器による攻撃の強化だ」と指摘しました。

そのうえで「西側諸国の金融機関や企業に対するサイバー攻撃が行われる可能性が、かなりある。対象はアメリカ、ヨーロッパ、それに日本のような国だろう」と述べ、制裁を科している西側諸国に対する報復として、サイバー攻撃を行うおそれがあると警鐘を鳴らしました。

また「ヨーロッパへの、天然ガスなどのエネルギー資源の輸出を制限することもあり得る。ロシア側も歳入を得られなくなり打撃になるが、プーチン氏はヨーロッパに比べればダメージが少ないと考えるかもしれない」と述べました。

さらに、ハース氏は「化学兵器のような大量破壊兵器の使用もありうる」と述べ、ロシアが通常兵器以外の武器を使用する可能性も排除できないと指摘しました。

松野官房長官「人道回廊の保持 着実な履行期待」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「ロシアとウクライナの間で第2回の停戦交渉が行われ、民間人退避のための人道回廊の保持について合意したと承知している。合意が着実に履行されることを期待し、わが国としても、高い関心を持って交渉の行方を注視していく」と述べました。

また、ウクライナに在留する日本人について「今月2日の時点で確認されているのは、およそ110人で、現時点までに生命、身体に被害が及んだとの情報には接していない」と述べました。

一方、ロシアと同盟関係にあるベラルーシの「危険情報」を3日に引き上げたことに関連し「ベラルーシの在留邦人は、今月1日時点の在留届けベースでおよそ70人で、現地の日本大使館からは随時、領事メールを発出し、注意喚起を行っている。現時点までに生命、身体に被害が及んでいるとの情報には接していない」と述べました。