政府 原油価格上昇で追加対策を決定 補助金上限5円から25円に

原油価格の上昇が懸念される中、政府は石油元売り会社への補助金の上限を現在の5円から25円に引き上げることなどを盛り込んだ追加対策を決定しました。松野官房長官は速やかに実施するとともにさらなる対応策も含めて検討するよう関係閣僚に指示しました。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響で原油価格のさらなる上昇が懸念される中、政府は4日朝、総理大臣官邸で関係閣僚会合を開き追加対策を決定しました。

それによりますと、ガソリンなどの小売価格の上昇を抑えるため石油元売り会社への補助金の上限を現在の5円から25円に引き上げ、今月10日以降、適用するとしています。

またタクシー事業者に対して燃料のLPガスの高騰分を補填(ほてん)するほか、地方自治体を通じて、灯油購入支援や暖房費の支援などを行うとしています。

さらに原油価格の上昇の影響を受けている中小企業の資金繰りを支援するため、全国1000か所に融資の特別相談窓口を設けて、低い利子で融資するなど幅広い分野向けの政策パッケージも盛り込んでいます。

そして、こうした対策の予算規模は3600億円程度としています。

松野官房長官は「各種対策を重層的に講じ国民生活や企業活動への影響を最小限に抑えていく。情勢が日々変化する中で機動的な対応が必要だ」と述べ支援策を速やかに実施し効果を検証するとともに、さらなる対応策も含め検討するよう関係閣僚に指示しました。

追加対策の詳細

政府が決定した原油価格高騰の追加対策の詳細です。

ガソリンや灯油などの小売り価格上昇を抑えるため石油元売り会社に出している補助金の上限を、現在の5円から25円に引き上げます。

今の制度はレギュラーガソリンの小売価格の全国平均が1リットル当たり170円を超えてから発動されますが、追加対策は今月10日以降、1リットル当たり172円を超えた時点で適用されます。

これにより、ガソリン価格が1リットル当たり197円程度までは店頭での価格が常に172円程度に抑えられるよう、補助金を元売り会社に支給します。

また運輸業界への支援も拡充します。

原油価格の上昇に伴ってタクシーの主な燃料となるLPガスの価格も上がっていることから、タクシー会社への補助金の上限についても現在の1リットル当たり5円から25円に引き上げます。

住民の生活に欠かせない離島を結ぶ赤字路線を運航する航空会社に対しては、ジェット燃料の価格の上昇に相当する分を新たに補助するとしています。

漁業者向けには重油などの燃料費の価格が一定の水準を上回った場合に補填金を支給するための基金について原油価格の高騰による財源の枯渇を防ぐため、98億円を積み増します。

温室栽培の農家に対してはさらなる価格高騰に対応できるよう積み立て基金の制度を拡充します。

このほか、地方自治体を通じて、灯油購入の支援や暖房費の支援などを行います。

また、原油価格の上昇の影響を受けている中小企業の資金繰りを支援するため、全国1000か所に融資の特別相談窓口を設けて、低い利子で融資するなど、幅広い分野向けの政策パッケージが盛り込まれています。

松野官房長官「“トリガー条項”よりも大きな支援規模に」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で、政府が決定した追加対策について「最大25円の支給となる場合は、ガソリンや軽油のみならず、灯油や重油も対象にするため、ガソリン税の上乗せ分の課税を停止する、いわゆる『トリガー条項』の凍結解除よりも大きな支援規模となる」と述べました。

そのうえで「来年度も原油価格が上昇し続ける場合には、どの程度長期化するかや、追加対策の効果、国民生活や企業活動への影響なども見極めながら『トリガー条項』を含む、あらゆる選択肢を排除することなく政府全体で検討する」と述べました。

また、岸田総理大臣が国民に省エネを呼びかけたことに関連し「政府としては、公用車の電動車への置き換えや、庁舎のLED照明の導入、再生可能エネルギー電力の調達などを積極的に進めていく」と述べました。

山口環境相「身の回りの省エネを」

原油価格の高騰を受けた追加対策が決定されたことに関連し、山口環境大臣は閣議のあとの記者会見で「このウクライナのようなエネルギーの危機的な状況が起こっている中では消費するエネルギーを少なくすることが非常に大事なことだ。エネルギー消費の6割が家計関連のもので、国民の皆様に、改めて身の回りの省エネに関心を向けていただき、少しずつでも行動に移すようお願いしたい」と述べ、省エネへの協力を呼びかけました。