英衛星通信企業 ロシアのロケットによる衛星打ち上げ停止発表

イギリスの衛星通信企業「ワンウェブ」は、ロシアの宇宙開発公社が、今月6日に予定されていたロケットの打ち上げを拒否する姿勢を示したことを受けて、今後、ロシアのロケットによる衛星の打ち上げを停止すると発表しました。

イギリスに本社を置く衛星通信企業「ワンウェブ」は、ロシアの宇宙開発公社「ロスコスモス」と衛星の打ち上げ契約を結んでいて、今月6日にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、ロシアのソユーズロケットで小型の通信衛星36基の打ち上げを予定していました。

しかし、ロスコスモスのロゴージン社長は、各国がロシアに対する経済制裁を発表したことに反発し、2日、衛星が軍事利用されないことを約束したうえで、ワンウェブの株式の一部を所有するイギリス政府が株式を手放さないかぎり、打ち上げを行わないとするメッセージをロケットに描かれたアメリカや日本などの国旗を覆い隠す映像とともにツイッターに投稿しました。

これに対しワンウェブは3日、取締役会での投票の結果として「バイコヌール宇宙基地からの今後のすべての打ち上げを停止することを決定した」と発表しました。


イギリス政府のクワテンビジネス・エネルギー・産業戦略相は「ワンウェブの決定を支持する」と述べ、ロシアとの協力関係を見直すとしています。

協力に影響

ロシアはアメリカやヨーロッパ各国、それに日本などとともに国際宇宙ステーションの運用に参加していますが、かつてロシアの副首相を務めた、宇宙開発公社「ロスコスモス」のロゴージン社長は、各国によるロシアへの経済制裁が始まって以来、こうした協力関係を終わらせることを繰り返し示唆しています。

ロシアの宇宙船は、国際宇宙ステーションの高度を維持するため、定期的なエンジン噴射の役割を担っています。

しかし、ロゴージン社長は先月「ロシアとの協力関係を断ち切れば、国際宇宙ステーションが制御不能になって軌道を外れ、アメリカやヨーロッパに落下する事態を誰が救うのか」とか、「500トンの構造物がインドや中国に落下する可能性もある。すべてのリスクはあなた方のものだ」などと、脅しともとれる投稿をツイッターに行っています。

また、来月、南米のフランス領ギアナからESA=ヨーロッパ宇宙機関の衛星がロシアのロケットで打ち上げられる予定でしたが、ロシア側の技術者が一斉に帰国することになったため打ち上げが危ぶまれています。

また、ESAとロシアが共同で開発を進め、ことし打ち上げられる予定だった火星探査機についても、ESAが「予定どおりの打ち上げは考えにくい」とする声明を発表するなど、影響が広がっています。

一方、NASA=アメリカ航空宇宙局は「国際宇宙ステーションでの活動に変化はない」として、抑制的な反応を示しています。

今月末には、アメリカ人宇宙飛行士がロシアの宇宙船で地球に帰還することになっていますが、予定どおり実施されるのか注目されています。