地方鉄道問題でヒアリング 地方切り捨てと反発の声も

存続が危ぶまれる全国の地方鉄道について、廃線にしてバスに転換するなど抜本的な見直しも視野に議論する国の検討会で、赤字運営が続く鉄道が通る自治体へのヒアリングが行われました。
一部の自治体からは「ローカル線の収支のみを問題視することは地方の切り捨てに直結する」といった意見が出されました。

3日の検討会には国土交通省と鉄道事業者の幹部や専門家など、およそ20人が出席し、自治体へのヒアリングで、赤字路線をめぐって、鉄道事業者と協議を続けている滋賀県と広島県の知事が意見を述べました。

このうち、滋賀県の三日月知事は、赤字が続く地元の私鉄に、財政支援することを決めた背景について「地域の活性化をテーマに日頃から鉄道事業者と議論し顔の見える信頼関係を築いてきたので、財政支援を決断できた」などと説明しました。

一方、赤字路線の存廃について、JR西日本と議論している広島県の湯崎知事は「一部のローカル線の収支のみを問題視することは、地方の切り捨てに直結する。新幹線や特急で訪れる観光客を中山間地に呼び込むためにはすべての鉄路を維持すること重要だ」などと主張したということです。
出席したJR西日本の倉坂昇治副社長は「お互いに情報を出し合いコミュニケーションをしっかり取らせていただき、よりよいものを見いだしていくということが必要だと改めて感じた」と話していました。

近江鉄道 自治体が施設維持管理 民間が鉄道を運行

近江鉄道は滋賀県東部の米原市から甲賀市までの5市5町全長59.5キロを結ぶ私鉄で、鉄道事業は利用者の減少によって平成6年度から赤字が続き存続が危ぶまれていました。

このため滋賀県と沿線の5市5町では3年前の11月に法定協議会を設置して議論を重ねた結果、おととし12月に令和6年度以降、自治体が施設を維持管理し、民間が鉄道を運行する「上下分離方式」で運営することが決定されました。

県や沿線自治体では割引切符の導入やイベントの開催など鉄道の利用促進を図るとともに「上下分離方式」に移行された令和6年度以降、年間6億円から7億円ほどとされる維持費を負担することになっています。

検討会に参加した滋賀県土木交通部の中嶋毅理事は「人口減少などの大きな社会変化によって鉄道事業が純粋な民間事業としては成り立たなくなり、鉄道を地域全体でどう生かしていくか考える時期に来ていると受け止めている。その一方で鉄道は地域にとって経済や文化を支える基盤なので国に対しては地域の声がしっかりと届く形の仕組みやていねいな議論、合意形成のプロセスを踏んでいただきたい」と話していました。

JR芸備線の場合は

広島市と岡山県新見市の全長159キロ余りを結ぶJR芸備線は、利用者の落ち込みが続いています。

このうち、落ち込みが際立っているのが広島県北部の区間で、2020年度の1キロ当たり1日に平均何人を運んだかを示す「輸送密度」の実績は、広島県庄原市の東城駅と備後落合駅の区間は9人と、JR西日本の管内で最も少なくなっているほか、備後落合駅と備後庄原駅の区間は63人にとどまり、そのほとんどが通学で使う高校生や中学生です。

このため、去年8月、JR西日本と沿線の自治体が検討会を立ち上げ、利用促進のための取り組みを続けています。

これまでに、臨時列車を活用したツアーの実施や乗り継ぎのしやすい便を増やしたほか、沿線の庄原市の住民グループが酒だるで寄付を呼びかけて300万円以上の募金を集め、去年11月からはプロ野球のカープをイメージしたラッピング列車が運行されています。

しかし、先月の検討会では、区間によっては休日の平均乗客数が前の年の同じ時期と比べて2.3倍増えたものの、平日の通勤や通学など日常的に利用する人の数は増えていないことが報告され、利用促進に向けた課題が改めて浮き彫りになっています。

芸備線の備後庄原駅を利用している高校生や中学生からは「通学で毎日使っています。減便はしかたがないと思いますが、廃線になったら困ります」とか「バスだと往復で1000円くらいですが、汽車だと660円なので金銭的な面もあり芸備線を使っています。ただ、便が少なく不便なところもあります」などといった声が聞かれました。