「こうした状況でも気候変動 考え続けて」IPCCウクライナ代表

ロシアによるウクライナへの侵攻は、科学者にも影響を及ぼしています。気候変動の国際会議にオンラインで参加していたウクライナの代表の1人がNHKの取材に応じ、会議の場で「ウクライナ情勢によって注目度が小さくなり申し訳ない」と述べたことを明かしたうえで「こうした状況でも多くの人に気候変動について考え続けてほしい」と訴えました。

取材に応じたのは国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」にウクライナ代表団の1人として参加していたスヴィトラーナ・クラコフスカさんです。

会合中の先月24日、ロシアによる侵攻が始まりました。

代表団はできるかぎり参加を続けると事務局に伝えましたが、子どもを連れてシェルターへ避難する人や通信状況が悪化する人が相次ぎ、最終的に11人全員が離脱を余儀なくされたということです。

クラコフスカさんは「せめて私だけでも議論についていこうとしましたが、ミサイル攻撃を受ける中で、家族も心配となり気候変動について考えることは不可能となっていきました」と話します。

会議は先月27日に閉幕し、気候変動の自然や社会への影響に関する報告書が8年ぶりにまとめられました。

クラコフスカさんは、どうしても伝えたいことがあり、なんとか閉会式に参加し発言しました。

クラコフスカさんは「たくさんの科学者などが何年もかけて取り組んできた報告書が、ウクライナ情勢によって注目度が小さくなってしまう。私もウクライナのほかの代表たちも本当に申し訳なく思う」と述べたということです。

ロシアも含む各国の反応からは思いは受け止められたと感じたといいます。

クラコフスカさんは「今後、国内で気候変動対策を推し進めていくはずだったのにすべての計画は破壊されてしまいました。私は、いま、何も手に付かず、ただただ、命を守らないといけません。それでも多くの人には報告書を通して気候変動について考え続けてほしいです」と訴えています。

そして「国家間の合意の効力が失われた世の中のままでは非常に危険です。気候危機も、解決することはできない危うい状況にあります」と一刻も早い平和の回復を願っていました。