小島慶子さんが語る更年期 ”悪口にするのはおかしいよね”

小島慶子さんが語る更年期 ”悪口にするのはおかしいよね”
「よく聞かれるんです。何でそんなに自分のことを人に言うのが平気なの?って」

エッセイストの小島慶子さん。
自分の更年期の症状について、さまざまなメディアで語っています。

症状の個人差が大きく、ひとりで悩みを抱える人が少なくない更年期。
“語る”ことで変えていきたいーそう思うきっかけとなった30代の頃のショックだった出来事、40代の体の異変など赤裸々に話してくれました。
※文末に「更年期とは 」「ホルモン補充療法(HRT)とは?」のリンクがあります

「よ、更年期!」それ、もうやめようよ

小島さんは現在49歳。
更年期の不調を感じ始めたのは3年ほど前だったそうです。
どうして話そうと思ったんですか?とたずねると、まだ症状が出る前の、30代のころの出来事を話してくれました。
「テレビのバラエティー番組で『よ、更年期』って言われて。どうやらこれは、『よ、おばさん』とか『よ、お前もう中年だな』っていう、女の人が若くなくなったことをばかにする時に使う意味合いがあるんだ。それを私が今、言われてるんだってびっくりしたんです。更年期が悪口みたいに使われるのはおかしい。だからバラエティー番組でも真面目に対応してたんです。『私はまだ更年期の年齢ではないけど、更年期でつらい人は多いみたいです』と」
「テレビを見てる人で、誰にも言えないでしんどい思いをしている更年期の方っていっぱいいると思ったんです。もし自分がそういう状態で、テレビでばかにされているのを見たら、とっても傷つくし誰にも言えなくなる。それはなくしたいと思ったから。だから自分が更年期になったときは、それもうやめようって言えたらいいなというのがいちばん大きい動機ですね」

うまく言えない不快感に初めはとまどい

問題意識は持っていたものの、いざ不調が出始めると、人になかなか言えなかったそうです。

その理由は、症状が出た「体の部位」にありました。
「説明が難しいんですが、ちつの突き当たりと子宮の辺りに何かずっと帯電してるような感じがしたんです。静電気がその辺にたまってるような感じがあって何とも言えない不快感だった。痛いのとも違うし、かゆいのとも違う。あえて言うなら足がしびれた時のような名状しがたい不快感があって、これなんなんだろうと思っていると原稿を書こうと思ってもなかなか手につかなかった。インターネットでいくら検索しても私と同じようなちつのあたりのイライラした感じってヒットしないんですよね。性病でないことは検査で分かっていたし、じゃあこれはもしかして性欲なのか?いや、そうじゃないんだよなって」
「やっぱり心理的な抵抗があって、こんなことに悩んでいるのも恥ずかしいことなんじゃないか。人に言ったら、みっともないと言われるんじゃないか、そんな思いがない交ぜになって、人にはなかなか言えませんでした」

解決のきっかけは、かかりつけ医

ほかにも頭痛やめまい、どうきなど原因不明の不調が出ていた小島さん。
ある日、かかりつけの婦人科医にすべて話すことにしました。
「『先生これ何でしょう?なんて説明したらいいか分かんないんですけど、とりあえず話しますね』と症状を訴えました。『これって何か名前があるんですか』と聞いたら『更年期って、みんな人それぞれ名付けられないような不快感とか困り事があるものなのよ』と」
「軟着陸できる方法があるから大丈夫」と言われたという小島さん。

かかりつけ医に、女性の泌尿器に詳しい医師や骨盤底筋周辺の不快感に詳しい専門家を紹介してもらい、相談しました。

合わせて複数の漢方薬やホルモン補充療法などを試し、自分に合う薬を見つけたことで症状は徐々に気にならなくなっていったといいます。
「じゃあちょっとこれ飲んでみましょうかとか、この薬は合ってたみたいとか、試行錯誤しながら。今はほぼうまくおつきあいできていて、気になることは無くなってよかったなと思いますね。そこからだんだん整理がついてきて、自分だけじゃないってことも分かった。それでやっとこうやって人にお話しできるところまで、たどりついた感じです」

体の話は、恥ずかしくない

当時を思い返すと、自分で「治療への壁」を作っていたと感じるそうです。
「自分の生殖器とか性を、どういうものと考えてるかっていう事なんだと後から分かりましたね。『あ、私の体はエロいものだ』とか『生理はきたないものだ』と思うとそれがいちばん壁になると。それは呼吸したり、食べ物を消化したりする体のほかの部位と同じように大事な役割のある器官なので、不調があったら専門家に話を聞けばいいという風にフラットに考えると、お医者さんにも行きやすくなると思いますし、大事にしようって思える気がします。そこはたぶん更年期と向き合う上でとっても大事な心構えだと思います」
今は症状について話すことに抵抗はないと語る小島さん。
最近、出演したラジオ番組でも話題にしました。
「私いま49歳で、更年期なんですね。あの、ビックリしちゃった方ごめんなさいね。これ人体の話だと思って聞いてくださいね。毎月生理のある体から、生理のない体に変わる途中で、女性ホルモンが減っていって、それに伴っていろんな謎の不調が出るんですよ。それでね…」
パーソナリティーを務めるのはタレントの大竹まことさん。
大竹さんの更年期に関する疑問にひとしきり答えたあと、最後にこんなやりとりがありました。

(小島さん)きょう、すごくいっぱい私の体のこと聞いてもらえたから、大竹さんも体調悪いとき、私いつでも話聞くからね。
(大竹さん)じゃあ来週は頻尿の話を。
(小島さん)オッケー!
(大竹さん)頻尿づけだよ、来週。
(小島さん)是非是非、大事なことですよ。
(文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」2月24日放送より)

困りごとを抱えた人が歓迎される世の中に

更年期は“新しい自分”との出会いだと話す小島さん。

自らの経験を語ることで更年期の女性だけでなく“いろいろな体を持つすべての人”が大切にされる社会になって欲しいといいます。
「ヒトの体に起きることはどれも大事にしようってみんなが思ってくれるといいなと思います。それは男性も更年期があるから。男性が更年期に直面したときにも、同じように性的な衰えをばかにしたりするんじゃなくて、大丈夫、みんな経験することだからっていうふうに大切にしてもらえるといいと思うし。だからまずは、まだまだネガティブなイメージの強い女性の更年期が大きく変わるといいなあって思います」
「どんな年齢でも、どんなジェンダーでも、どんな体でも、その人の体と命が大切にされて、ちゃんと敬意を払われて、助けが欲しいっていう時はちゃんと助けてもらえる。困りごとを抱えた人が歓迎される世の中に暮らしたいんです、私」

今、更年期症状でつらいあなたへ

「しんどいよね。もうね、私の体とあなたの体は違う体だからたぶん違うしんどさなんだと思うんだけど、でも何かこの更年期ならではの何とも説明しようのないしんどさは分かる気がする。前に比べると、これ何とかしようっていうふうに世の中が思ってくれてるから、情報も増えたし、あと仲間も増えたし、きっと何かいい方法はあると思うんで。遠くで緩やかにつながりながら、一緒に乗り越えたいなって思います。本当に一緒にね、なんとかなんとか、なんとか、なんとかなるよ、きっと。生きてれば、何か方法が見つかると思うし、ここちょっとしんどいなって思うけど、そこを抜けた先には、たぶん今の更年期の私たち真っただ中の私たちにはまだ見えてない、きっと『あら、よかったわ、ここ来て、ここいいところじゃない?』っていう風景もあると思うから、そこまで一緒に何か手をつないでいけたらいいなと思います」

病院を受診した人はわずか3割

更年期は閉経前後の10年間を指し、女性ホルモンが急激に減ることでさまざまな心身の不調があらわれることがあります。

主な症状はほてりや発汗、気分の落ち込み、不眠などで、生活に支障をきたすほど症状が重い場合は「更年期障害」と診断されます。

インターネットで行ったアンケートでは、更年期の症状を経験したと答えた40代と50代の女性のうち病院を受診した人は31%。

更年期症状と診断された人はさらに少なく、19%にとどまっています。
(NHK「更年期と仕事に関する調査2021」より)
3月8日は女性の生き方について考える国際女性デーです。
自分の体のこと、そして身近な人の体調のこと、少しだけ考えてみませんか。

(社会番組部 柳田理央子・ネットワーク報道部 野田麻里子)