【わかりやすく】ウクライナ情勢 現地の状況は?

ウクライナの首都キエフに迫るロシア軍。
1日にはキエフにあるテレビ塔が攻撃されたほか、地方都市でも州政府の庁舎がミサイル攻撃を受けるなど、犠牲者は増え続けています。
国外に避難した人の数はすでに67万人。
今世紀最大の危機となるおそれも指摘されています。
ロシア軍は今後どう動くのか。キエフへの本格的な侵攻はあるのか。詳しく解説します。

ウクライナの被害 最新の状況は?

ウクライナ内務省は、首都キエフ中心部、大統領府から6キロほどの場所にあるテレビ塔が1日、ロシア軍の攻撃を受けたことを明らかにしました。

この攻撃でこれまでに5人が死亡、5人がけがをしたとしています。

ロシア国営のタス通信は、ロシア国防省が「キエフにある情報作戦の拠点などを攻撃する」として、周囲の住民に避難を呼びかけていると伝えていました。

ウクライナ側の通信網を遮断するねらいがあるものとみられます。
また、北東部にあるウクライナ第2の都市ハリコフでは州政府の庁舎がミサイル攻撃を受けるなど、中心部や住宅街が攻撃を受け少なくとも21人が死亡。

けが人は112人にのぼっています。

このほか、北西部の都市ジトーミルでも爆撃で少なくとも2人が死亡するなど、連日、犠牲者が増え続けています。

ロシア軍はどこまで侵攻?

アメリカ国防総省の高官は「ロシア軍はウクライナ国内で戦力を増強し続け、国境周辺に展開していた戦闘部隊のうちこれまでに80%以上を投入、400発以上のミサイルを発射した」と分析しています。
キエフに向けて南下していた部隊が、どうして前日と同じ場所にとどまっているのか。

アメリカ国防総省の高官は
▽ウクライナ軍の激しい抵抗を受けている、
▽燃料・食料不足で遅れが出ているという見方を示した一方で、
▽部隊の再編成や作戦の再評価のためみずからの判断で作戦を中断している可能性もある、と指摘しています。

あるロシア軍兵士のことば

こうした中、国連総会の緊急特別会合でのウクライナのキスリツァ大使の発言が大きな注目を集めています。

「正式な発言を述べる前に、まず、ロシア語に切り替えたいと思います」と切り出したキスリツァ大使。

紹介したのは、今回の軍事侵攻で死亡したロシア兵のスマートフォンに残されていたとする母親とのやり取りでした。
母親
『アリョーシャ、元気なの?どうして長い間、返信しないの?』
兵士
『ママ、僕はもうクリミアを離れたし、軍事演習もやっていない』
母親
『そうなの。どこにいるの?お父さんが、あなたに小包を送れるか聞いているわ』
兵士
『小包?こんな状況には必要ないよ』
母親
『いったいどうしたの?』
兵士
『ママ、僕はウクライナにいる。本当の戦争だ。怖いよ。すべての都市を爆撃している。市民も狙っている。ウクライナの人は、僕たちを大歓迎すると言われたけど、彼らは装甲車の前に立ちふさがったり戦車の前に身を投げ出したりして通らせないようにしている。僕たちを『ファシスト』と呼ぶ。ママ、本当につらいよ…』

強まるロシア包囲網

ロシアの軍事侵攻への批判が高まる中、これまでの方針を転換しウクライナへの支援を表明する国が相次いでいます。
その1つがトルコ。

エルドアン大統領は「危機の拡大を防ぐために私たちの国に与えられた権限を行使することにした」と述べ、国際条約に基づいてトルコが管理するダーダネルス海峡とボスポラス海峡で艦艇の通過を制限する措置をとると明らかにしました。

また、これまで紛争中の国に兵器を供与しない立場をとってきた北欧諸国も軍事支援を行う方針に転換。

1939年に当時のソビエトの侵攻を受けたロシアの隣国・フィンランドは、ウクライナにライフル2500丁や1500の対戦車兵器などを供与すると発表。

スウェーデンも、5000にのぼる対戦車兵器などを送ると発表しました。

そして永世中立国のスイス。

プーチン大統領の資産を凍結するなど、EUが科した制裁を適用することを発表。

「ロシアがヨーロッパの主権国家に対して前例のない軍事侵攻を行ったことが決め手になった」としています。

停戦に向けた2回目の交渉はいつ?

情報が錯そうしています。

当初、ロシア国営のタス通信は関係者の話として「2回目の会談が2日にも行われる見通し」と伝えていました。

会談の場所は、ベラルーシとポーランドの国境沿いの、ベラルーシ側にある施設、とされています。

しかし、その後ロシアの別の通信社は「双方の代表団に近いトルコ政府の高官が『会談は、水曜日には行われそうにない』と発言した」と報道。

会談が1日か2日延期される可能性を伝えています。
2回目の会談に向けて、ウクライナのゼレンスキー大統領は「砲撃が行われている状況で交渉のテーブルにつくことはできない」と訴えている一方、「ロシアが現実的でない要求をしている」という見方も出ていて、2回目の交渉で停戦につながる進展が見られるかは依然、不透明な状況です。

どれぐらいの人が避難しているの?

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のグランディ難民高等弁務官は1日の記者会見で「ロシアによる軍事侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は67万7000人にのぼった。このままでは今世紀最大の危機となるおそれがある」と危機感を強めています。
中でもその半数が避難しているのがポーランドです。

ウクライナと国境を接するポーランドでは、1日午後3時時点でウクライナから避難してきた人はおよそ41万人にのぼっています。

ポーランドとの国境にある町メディカを取材すると、大勢の人たちがウクライナ側の検問所から歩いたり、用意されたバスに乗ったりしてポーランド側に逃れてきていました。

ウクライナでは18歳から60歳の男性の出国が制限されていることから避難しているのは子どもを連れた女性や年配の人たちがほとんどで待ち受けていた人たちと再会し、涙を流す人の姿も見られました。

避難してきた人たちは?

ウクライナから避難してきた人たちからは、一刻も早く戦争が終わってほしいという声が聞かれました。

数日かけて娘とともに避難してきたという35歳の女性

「娘が7歳なのでどうしても逃げたくて、無事にたどり着くことができてよかったです」
「多くの人が危険な状況です。こんなことが2022年に起きるべきではありません」

5歳と9歳の子どもとともに逃れた34歳の女性

「温かく迎え入れてくれたボランティアの方々に感謝しています。ここなら銃撃もなく、子どもが安心できます」
「どうか戦争を止めて、家族と一緒に過ごせるようにしてください」

検問所で夫と別れたという女性

「夫は61歳になりますが、祖国を助けるために戻りました。私たちをポーランドに連れてきて、また戻ったのです。とにかく早く、この悲劇を終わらせてほしいです。私たちは何も悪いことはしていないはずです」

日本からはどんな支援ができる?

日本赤十字社は3月2日から5月末まで救援金を受け付けています。

ICRC=赤十字国際委員会などは1日、「この先、何百万人もの人々が耐えがたい苦境に陥るだろうと懸念している。人々のニーズは刻一刻と増し命を救うために早急な対応が必要だ」とするコメントを発表しました。

避難民などへの食料や水、シェルター、心理的サポートの提供のほか、医療施設への支援強化が必要だということで、あわせて2億5000万スイスフラン、日本円にして310億円余りの支援を国際社会に呼びかけています。

振込先の情報

▽ゆうちょ銀行・郵便局 口座番号00110-2-5606
▽三井住友銀行 すずらん支店 普通預金2787781
▽三菱UFJ銀行 やまびこ支店 普通預金2105784
▽みずほ銀行 クヌギ支店 普通預金0623471

口座名義はいずれも「日本赤十字社(ニホンセキジュウジシャ)」