米石油大手 日本政府や商社参加の「サハリン1」から撤退へ

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、ロシア極東のサハリンで行われている石油・天然ガス開発事業「サハリン1」からアメリカの石油大手が撤退の手続きを始めると発表。
この事業には日本政府や大手商社も参加していて、難しい対応を迫られることになります。

「サハリン1」は「サハリン2」とともに、ロシア極東のサハリン北東沖で行われている石油と天然ガスの大型開発プロジェクトの1つで、日本も深く関わっています。
中心となっているアメリカの大手石油会社エクソンモービルが1日、撤退に向けた手続きを始めると発表しました。
この事業には日本政府が50%を出資する「SODECO・サハリン石油ガス開発」に大手商社の「伊藤忠商事」と「丸紅」などが参加し、この会社を通じてプロジェクトの30%の権益を保有しています。
サハリン石油ガス開発はNHKの取材に対し「現在、情報を確認中だ」としています。
また、経済産業省は「現在、情報を収集していて、今後の対応について検討している」としています。
原油輸入の大半を中東に依存している日本にとって、サハリン1の原油は調達先の分散につながるほか、地理的に近く、輸送コストを抑えることができるというメリットがあります。
ただ、アメリカの大手石油会社が撤退を表明するなかで、難しい対応を迫られることになります。

「サハリン1」とは

「サハリン1」は、サハリン2とともにロシア極東のサハリン北東沖で日本が参加する形で進められている大型の石油と天然ガスの開発プロジェクトで、現在は主に原油を出荷しています。

総事業費は1兆3000億円余り。アメリカ、ロシア、インド、日本が共同で出資する形で事業を行っています。

中心となっているのは、アメリカの石油大手「エクソンモービル」で権益の比率は30%、それにロシアの政府系のエネルギー企業が20%、インドの国営石油会社が20%となっています。

日本勢は政府が50%を出資する「SODECO・サハリン石油ガス開発」に大手商社の「伊藤忠商事」と「丸紅」、それに政府が出資する「石油資源開発」などが参加し、この会社を通じてプロジェクトの30%の権益を保有しています。

サハリン2に比べて日本政府の関与が強いのが特徴で、官民をあげて開発を進めてきました。

2005年以降、3つの油田で生産が行われていて、2018年には1日30万バレルの原油を生産しています。

生産された原油は200キロ余り離れた極東ハバロフスク地方の沿岸にある出荷ターミナルまでパイプラインで輸送されたあと、日本などにタンカーで輸出されています。

また天然ガスについても今後開発し、LNG=液化天然ガスを生産して日本などへ輸出することなども検討されています。

官房長官「関与の在り方について検討」

松野官房長官は午後の記者会見で「エクソンモービルの判断については答える立場にない。国際的なロシア制裁強化の動きの中で、エネルギーの安定供給に支障を来さないことを大前提にG7=主要7か国とも歩調を合わせ、プロジェクトへの関与の在り方について検討していきたい」と述べました。