ひな祭りの成り立ち

ひな祭りの成り立ち
中学入試でもたびたび出題される、年中行事。今回は「ひな祭り」の成り立ちについて深掘りします。

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問題
ひな人形は上から順に、1段目には内裏びな(男びなと女びな)を並べ、2段目には(  )、3段目には五人囃子と続きます。
(  )に入る言葉を選びなさい。

1 右大臣・左大臣
2 絵馬
3 鯉のぼり
4 三人官女
5 短冊
6 羽子板
7 はまぐり
8 まつたけ

(2015年 慶應義塾中等部 改題)
三人官女が正解です。

女の子の誕生を祝い、健やかな成長を祈って贈られる、ひな人形。調べてみると時代とともにその様式を変えてきたことが分かりました。

ひな祭りはいつから?

教えてくれたのは、日本人形研究の第一人者、大妻女子大学教授の是澤博昭さんです。
ひな祭りが始まったのはいつごろからなのでしょうか。
是澤さん
「こんにちのようなひな祭りが文献上で確認できるのは、大体、江戸時代に入ってから。平安時代の貴族の子どもたちの『ひひな(=人形)遊び』と季節の変わり目に汚れをはらう行事、これがいつの間にか溶け合って、ひな祭りが生まれたと考えられているんです」
こちらは、四季折々の習慣などをつづった江戸時代の書物、「日本歳時記」に描かれた初期のひな祭りです。
大人の女性たちが、ひな人形やひな道具を敷物の上に広げて遊ぶ様子が描かれています。

ひな壇が始まったきっかけ

では、ひな壇に飾って祝う今の様式に、なぜ、変わっていったのでしょうか。
当時、ひな人形を贈ることには今とは別の意味があり、それが、ひな祭りが変化していく一因になったと是澤さんは指摘します。
是澤さん
「ひな人形は、当時は子どもにあげるというよりも、愛する女性への贈り物なんです。愛する女性がいちばん欲しがる流行のひな人形をいかに贈るか。そこが男性のステータスになってくるんです。流行のものを贈りたいですよね?」
特別なひな人形を大切な女性に贈りたい。
その思いにも押され、ひな人形はより華やかに進化していったというのです。
そのころ、特に人気を博したのが「古今雛(こきんびな)」です。
繊細な刺しゅうを隅々まで施すなど、きらびやかな宮中の暮らしぶりを表しています。
是澤さん
「雲の上の高貴な人たちの世界を想像し、形になったのが『古今雛』なんです。みやびな世界は庶民にとっての憧れなのではないでしょうか」
さらに、三人官女や五人ばやしなども加わって、より一層、豪華さを増したひな人形。
飾りつけて楽しむのが、ひな祭りの祝い方の主流となっていきました。
そして、たくさんの人形を飾りやすいように、ひな壇が作られるようになり、江戸後期には今のひな飾りの様式が出来上がっていったといいます。

ひな人形の疑問を解決!

では成り立ちがわかったところで、ひな人形にまつわる疑問をいくつか尋ねてみました。
まず、迷いがちな人形の並べ方です。
是澤さん
「よく『お内裏様の左右はどっちですか?』と言われるが、本来、決まりはないです。もともと内裏びなを中心にして、思い思いの人形を持ち寄る人形祭りなんですよ。基本的には自由に楽しく飾ればいいです」
そのうえで是澤さんは、並ぶ決まりは昭和初期になってから作られたものだと説明します。
こちらは、「近代日本経済の父」と呼ばれる渋沢栄一などが行った人形を通した国際交流事業の様子です。
この事業をきっかけに、ひな人形の飾りつけ方が便宜的に決められたというのです。
是澤さん
「渋沢栄一の日米人形交流で、内裏びなの位置をどっちか決めないと外国人に対して恥ずかしいということで、当時の天皇のご真影の並びにしたんです。結婚式は男性が右にいますよね。あの並び方に決めてしまうんです。それまでどっちでもよかったんです」
最後にもう一問。
「3月3日を過ぎたらすぐにしまわないと…」という言い伝えについては?
是澤さん
「こうでなければいけないことはないので、都合に合わせて片づけたらいいと思います。人々の遊び心が、子どもの健やかな成長への願いにつながり、形になったのがひな祭りなので、4月ごろまで桃とか桜の季節に合わせて楽しめばそれでいいと思います」
是澤さんによりますと、ひな祭りは、子どもから大人まで、すべての女性の健康を祝う、世界的にも珍しい祝いの行事なんだそうです。
いくつになっても飾って全くかまわないそうですから押し入れに入れたままという方も、ことしは飾りつけて家族で楽しんでみてはいかがでしょうか。
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