ロシア・ウクライナ会談 一定評価も次回進展見られるか不透明

ロシア軍によるウクライナへの侵攻が続くなか行われた双方の代表団による会談について、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアから確かな合図を受け取った」と一定の評価を示しました。ただ、双方の立場の隔たりは大きく次回の交渉で停戦につながる進展が見られるかは依然、不透明です。

ロシア軍によるウクライナへの侵攻は、首都キエフや第2の都市ハリコフなどに加え、地元メディアによりますと、新たに南部の都市ヘルソンでもロシア軍が包囲しようとするなど各地で攻勢を続けています。

こうした中、2月28日に行われたロシアとウクライナの代表団による会談では交渉を継続することで一致しました。

会談の内容についてウクライナのゼレンスキー大統領は28日、フェイスブックに投稿し、交渉は難航したことを認める一方で、「ロシア側からは確かな合図を受け取った。キエフに交渉団が戻ったら、分析をしたうえで、2回目の交渉をどのように進めるか決断する」と一定の評価を示すとともにロシア側の提案を慎重に分析する考えを明らかにしました。

双方の立場の隔たりは大きく、数日以内に再び行われる見通しの2回目の交渉で停戦につながる進展が見られるかは依然、不透明です。
会談の内容について、ゼレンスキー大統領は28日、EU=ヨーロッパ連合に正式に加盟申請し、ロシアとの交渉を進めるにあたってヨーロッパとの連携を強調しロシア側をけん制するねらいもあるとみられます。

ロシア大統領府報道官 ゼレンスキー政権と交渉継続の意思か

一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は1日、ロシアは、ゼレンスキー氏をウクライナの大統領と見なしているのかと記者団に聞かれたのに対して「そうだ。ウクライナの大統領だ」と述べました。

プーチン大統領は先月25日、ウクライナ軍に対して、ゼレンスキー政権を見限り、権力を奪取するよう促す発言をしていましたが、ゼレンスキー政権との間で交渉を継続する意思を示したものとみられます。

ロシア ウクライナ 双方の要求は

ロシア側は、ウクライナの「中立化」と「非軍事化」が停戦の条件だとしています。

このうち「中立化」は、ウクライナがNATO=北大西洋条約機構に加盟しないことを法的に確約させることとみられます。

また、「非軍事化」は、ウクライナの武装解除を目指し、NATO加盟国から支援されている最新の対戦車ミサイルや無人機などの撤去を求めることなどが含まれるとみられます。

さらに、2014年にロシアが一方的に併合したウクライナ南部のクリミア半島についてもロシアの主権を認めるように要求しています。

一方、ウクライナ側は即時停戦とロシア軍の撤退を求めています。

ゼレンスキー大統領は「人々の命が失われるのを防ぐため、交渉のテーブルにつこう」と呼びかけています。

ウクライナでは、各地で民間人の犠牲者が増え続け、一部の地域や、原子力発電所など重要なインフラが占拠されたと伝えられています。

ウクライナ側は、特に民間施設や市民への攻撃を止めるよう強く要求し、ロシア軍の撤退を求めているとみられます。

第2の都市ハリコフ中心部がミサイル攻撃 州知事がSNS投稿

ウクライナ第2の都市ハリコフの州知事は1日、自身のSNSに投稿し、中心部や住宅街がロシア軍によるミサイル攻撃を受けたと明らかにしました。

投稿された映像では、州政府の庁舎が、ミサイルによるものと見られる攻撃を受け、大きな爆発が起きています。

あたりは一面が吹き飛ばされ、がれきが散乱する様子が映されています。

いまのところ死傷者がいるかなど詳しい状況は分かっていないということです。

ウクライナ内務省の高官は一連のロシアによる攻撃で少なくとも10人が死亡し、35人がけがをしたとしています。

今回の攻撃についてゼレンスキー大統領はビデオ声明を発表し「ミサイルはロシア西部のベルゴロド州から発射されたもので、これは戦争ではなくロシアによる国家テロだ」と強く非難しました。

ウクライナのクレバ外相はツイッターに投稿し、「ハリコフで中央広場と住宅街がミサイルの攻撃を受けた。プーチンは、多くの市民を殺害し戦争犯罪を重ねている。圧力を強めて、ロシアを孤立させてほしい」と訴えました。

永世中立国スイス プーチン大統領の資産凍結など制裁適用

スイス政府は28日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、プーチン大統領やラブロフ外相の資産を凍結するなど、EU=ヨーロッパ連合が科した制裁を適用すると発表しました。

また、ロシアを出発する航空機に対しては外交や人道的な目的を除いて領空の飛行を禁止するとしています。

スイスは永世中立国ですが、声明では「ロシアがヨーロッパの主権国家に対して前例のない軍事侵攻を行ったことが、これまでの姿勢を変える決め手になった」としています。

国際刑事裁判所 人道に対する罪で捜査開始へ

オランダのハーグにあるICC=国際刑事裁判所は、近年のウクライナ情勢をめぐる戦争犯罪や人道に対する罪について、捜査を始める方針を明らかにしました。

国際刑事裁判所のカーン主任検察官が28日に出した声明によりますと、捜査の対象となるのは、2014年にロシアがウクライナ南部のクリミアを一方的に併合した前後から、今回の軍事侵攻までの間にウクライナで起きた、戦争犯罪や人道に対する罪だということです。

声明で、カーン主任検察官は「裁判所の予備調査の結果、戦争犯罪や人道に対する罪がウクライナで行われたと考える合理的な根拠があると判断した」としています。

ウクライナとロシアはいずれもICCの加盟国ではないものの、ウクライナはICCの捜査に同意しているということです。

ウクライナ情勢についてカーン主任検察官は「今後も注意深く見守り、国際人道法が厳格に順守されるよう、求めていく」としています。

ウクライナの駐米大使「ロシア軍が燃料気化爆弾を使用」と非難

アメリカに駐在するウクライナのマルカロワ大使は2月28日、首都ワシントンで記者団に対し「ロシア軍が燃料気化爆弾を使用している」と主張し、強く非難しました。

「燃料気化爆弾」は猛烈な爆風と熱が発生する威力の強い爆弾で、以前から人権団体などが規制すべきだと批判しています。

また国際的な人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は、ウクライナ北東部で先月25日、ロシア軍により投下されたとみられるクラスター爆弾で子どもを含む3人が死亡したと発表したほか、国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、東部のドネツク州の病院の近くに先月24日、ミサイルが着弾し民間人4人が死亡したと発表しその際にクラスター爆弾が使用された可能性もあると指摘しています。

クラスター爆弾をめぐっては残虐な兵器として使用を禁止する国際条約があります。

ホワイトハウスのサキ報道官は2月28日の会見で、ロシア軍が燃料気化爆弾やクラスター爆弾を使用したという訴えが出ていることについて、記者団に問われたのに対し「確認していない」としながらも、「本当なら戦争犯罪になる可能性がある」と述べました。

ハリコフでインド人の学生も死亡

インド外務省は、ロシア軍との激しい戦闘が伝えられているウクライナ第2の都市ハリコフで、インド人の学生が戦闘に巻き込まれて死亡したことを明らかにしました。

インド外務省の報道官は1日、ツイッターに「けさハリコフでインド人の学生が砲撃を受けて死亡したことを深い悲しみとともに確認した」と投稿しました。

ただ、どのような状況で砲撃を受けたのかなど、詳しいことは明らかにされていません。

ウクライナには医学などを学ぶ留学生を中心におよそ2万人のインド人が滞在していましたが、ロシアの軍事侵攻を受けてインド政府はハンガリーなどウクライナの隣国に救援便を送り、自国民の退避を進めています。

一方、インドとロシアは長年、友好関係にあり、軍事面での結びつきも強いことから、先月25日に国連安保理でロシア軍の即時撤退などを求める決議案が採決にかけられた際にはインドは棄権し、ロシアに対する制裁にも慎重な姿勢を示しています。

しかし、ハリコフで学生が死亡したニュースをインドのメディアは大きく伝えていて、今後ロシアの軍事侵攻に対する批判の声が国内で強まることも予想されます。