ウクライナ ロシア 最新分析まとめ 停戦交渉のゆくえは

連日伝わってくるのは、戦争の生々しい現実。犠牲者は増え続け、多くの人が祖国を離れる決断をしています。

ロシアがウクライナに軍事侵攻を始めてから初めて、双方が停戦に向けた交渉のテーブルにつきました。

これから先、どうなるのか。最新の状況をわかりやすく分析します。

最新分析1. ロシア ウクライナ初交渉 停戦は実現するのか?

ロシアとウクライナの代表団は28日、ウクライナと国境を接するベラルーシ南東部で、およそ5時間にわたって交渉にあたりました。
ウクライナ側は▼即時停戦と▼ロシア軍の撤退を求めています。ウクライナ側は、特に民間施設や市民への攻撃を止めるよう強く要求し、ロシア軍の撤退を求めているとみられます。
ロシア側は、ウクライナの▼中立化と▼非軍事化が停戦の条件だとしています。このうち「中立化」は、ウクライナがNATO=北大西洋条約機構に加盟しないことを法的に確約させることとみられます。また、「非軍事化」は、ウクライナの武装解除をめざし、NATO加盟国から支援されている最新の対戦車ミサイルや無人機などの撤去を求めることなどが含まれるとみられます。さらに、2014年にロシアが一方的に併合したウクライナ南部のクリミア半島についてもロシアの主権を認めるように要求しています。

双方が歩み寄ることはできるのか。

交渉のあと、ロシア代表団のトップのメジンスキー大統領補佐官は「あらゆる議題が詳細に話し合われ、いくつかの点では共通の土台を見いだせる」と述べ、双方がいったん帰国し、数日以内に再びベラルーシとポーランドの国境地帯で交渉する見通しを明らかにしました。

一方、ウクライナ代表団のポドリャク大統領府顧問も、ツイッターで「ロシアから突きつけられていた最後通ちょうはなくなった」として一定の進展があったことを示唆しました。

ただ「交渉は難しい。ロシア側は自分たちが始めた破壊的なプロセスにこだわっている」として、ロシアが強硬な姿勢を崩さず双方の主張の隔たりが大きいことをうかがわせています。
会談のあと、ゼレンスキー大統領はフェイスブックにビデオ声明を投稿し、「私たちが望むような結論はまだ出ていない。ロシアはみずからの立場を主張し、停戦のための議論をした。ロシア側からは確かな合図を受け取った。キエフに交渉団が戻ったら、分析をしたうえで2回目の交渉をどのように進めるか決断する」と述べました。

今後の交渉が停戦につながるのか、なお楽観できない情勢です。

最新分析2. 軍事侵攻の状況は?

ゼレンスキー大統領は28日、フェイスブックにメッセージ動画を投稿。

「ロシア軍による攻撃でこの4日間で16人の子どもが亡くなり45人の子どもがけがをした。攻撃のたびに死傷者が出ている」と述べました。

衛星を運用するアメリカの民間企業「マクサー・テクノロジーズ」は、現地時間28日に撮影されたロシア軍の車列の画像を分析。
▼ロシア軍は、ウクライナの首都キエフに向けてさらに南下。車列の先頭は、中心部から北西におよそ27キロ離れたアントノフ空港に沿った高速道路上にある
▼車列には装甲車や戦車が加わり、道路沿いの60キロ余りの広い範囲に展開
▼国境を越えたベラルーシ側にも多くの軍用車両や攻撃用ヘリコプターが配備。キエフを目指して大規模な部隊が動員か
また、アメリカ国防総省の高官は28日、ロシア軍の軍事侵攻の状況について、最新の分析を明らかにしました。
▼国境周辺に展開していた戦闘部隊のうち75%近くの戦力をウクライナ国内に投入した
▼380発以上のミサイルを発射した
▼首都キエフに向けてこの1日で5キロ前進、北におよそ25キロの地点にいる
▼ウクライナ第2の都市 ハリコフや東部ドネツク州マリウポリへの侵攻を試みている。しかし激しい戦闘が続き、制圧できていない
▼ウクライナ全土の制空権を奪えていない。ウクライナ軍の航空機やミサイル防衛システムは維持されている
アメリカ国防総省のカービー報道官も28日「ロシア側が想定していたよりも数日遅れている」と述べ、計画どおりに進んでいないとの見方を示しました。

その理由について、ロシア軍の部隊がウクライナ側から想定していた以上の激しい抵抗を受けているのに加えて、燃料など作戦に必要となる物資の不足に直面していると指摘しました。

また、ロシア軍と対じするウクライナ軍について、「非常に効果的に抵抗している」としたうえで、アメリカなどが供与した兵器を使ってロシア軍を押し返していると分析しています。

最新分析3. 核戦争について心配すべきか?

プーチン大統領は2月27日、核戦力を念頭に抑止力を特別警戒態勢に引き上げるよう、国防相などに命じました。

これについてアメリカ国防総省の高官は28日「ロシア側を監視しているが、プーチン大統領の命令を受けた具体的な動きはまだ確認されていない」と指摘しました。

バイデン大統領も記者団から「アメリカ国民は核戦争について心配すべきか」と問われたのに対し「その必要はない」と応じました。

またホワイトハウスのサキ報道官は「核兵器を念頭にした挑発的な発言は思い違いによるリスクを招くおそれがあり危険だ」とプーチン大統領を批判。

「アメリカもNATO=北大西洋条約機構もロシアと戦うつもりはない。プーチン大統領の命令を精査しているが現時点でわれわれが警戒レベルを変更する理由は見当たらない」と述べ、冷静に対応する姿勢を強調しています。

国外への避難の状況は?

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所は28日、ウクライナから国外に避難した人の数が50万人以上に上ったと明らかにしました。

ポーランドとの国境に近いウクライナ西部の都市リビウの駅は、ポーランドなどへ向かう列車に乗ろうとする人々であふれかえっていて、国外に逃れるために目的地の変更を強いられる人も出てきています。

また、ウクライナでは防衛態勢を強化するため18歳から60歳の男性の出国が制限されていることから、女性や子どもたちだけで国外に避難し、家族が離れ離れになるケースも相次いでいます。

この先どうなるのか?

数日以内にロシアとウクライナの代表団は交渉が行われる見通しですが、戦況が交渉の行方に影響を与えることは間違いありません。

アメリカ国防総省の高官は、ロシア軍が依然としてキエフへの侵攻を主要な作戦としていることは変わらないとして、今後さらに前進を続け、数日のうちにキエフを包囲しようとしていると指摘しています。

またカービー報道官は「ロシア軍がこのまま停滞したままでいるとは考えられず、ウクライナ軍の抵抗や物資をめぐる課題を乗り越えようとするだろう」と指摘しました。

外交の駆け引きも。

ゼレンスキー大統領は28日、EU=ヨーロッパ連合に正式に加盟申請しました。

ウクライナは2014年、南部クリミア半島をロシアに併合された直後に、EUとの貿易自由化を含む関係強化に向けた協定に署名しましたが、正式に加盟申請するのはこれが初めてです。

ロシアに対抗するために欧米の支援が不可欠で、EUへの加盟申請を行うことでその姿勢をより明確にするねらいがあるとみられます。

ロシア側の動きのすべてを決定するプーチン大統領の言動も焦点です。

プーチン大統領は28日にフランスのマクロン大統領と電話会談を行い、停戦はあくまでも、ウクライナの非軍事化とNATOへの加盟阻止につながる中立化が条件であることを強調しました。

プーチン大統領の強硬な姿勢は変わっておらず、交渉を一層困難にさせるものとみられます。