シェル「サハリン2」撤退 合弁事業進める日本商社 難しい対応

ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受けてイギリスの石油大手がロシア極東 サハリンでの石油や天然ガスの開発プロジェクトから撤退すると発表。合弁で事業を行っている大手商社の三井物産と三菱商事は今後の対応について検討を進めるとしていますが、エネルギー安全保障にも関わる問題だけに難しい対応を迫られそうです。

ロシア極東のサハリン北部で行われている「サハリン2」には、ロシア最大の政府系ガス会社ガスプロムが主導するプロジェクトの合弁会社に、イギリスのシェル、そして日本の三井物産と三菱商事が出資しています。

シェルは28日、サハリン2について、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受けて合弁を解消して撤退すると発表しました。
これについて三井物産と三菱商事は「シェルの発表内容を詳細に分析したうえで、日本政府およびパートナーと今後の対応について検討を進める」とするコメントを発表しました。

「サハリン2」で生産される天然ガスは、LNG=液化天然ガスにして多くが日本に輸出されています。

中東などに比べて地理的に日本に近いという利点をいかし、日本の電力会社やガス会社が長期契約で購入しています。

日本とロシアの経済関係やエネルギー安全保障にも関わる問題だけに、大手商社は難しい対応を迫られそうです。

日本が輸入するLNGの約1割占める

ロシア極東のサハリンで進めてきた「サハリン2」は、総事業費が2兆円を超える、石油と天然ガスの大型開発プロジェクトです。

事業主体の「サハリンエナジー」社には、
▼ロシア最大の政府系ガス会社、ガスプロムが50%、
今回撤退を決めた、
▼イギリスの大手石油会社シェルが27.5%、
日本からは、
▼三井物産が12.5%、
▼三菱商事が10%を、
出資しています。

事業に参加する三菱商事によりますと、原油の本格的な生産は2008年から、LNG=液化天然ガスの生産は2009年から始まっていて、生産能力は原油が1日15万バレル、LNGが年間960万トンとなっています。
サハリン北東部のオホーツク海の大陸棚で採掘された天然ガスを全長800キロのパイプラインでサハリン南部のLNGの生産施設に運び、液化したうえで専用のタンカーで輸出します。

日本と地理的に近いため、生産されるLNGのおよそ6割は日本の電力会社とガス会社が長期契約で購入していて、日本が輸入するLNGのおよそ1割を占めています。

プロジェクトが本格的に始まったのは1994年。

当初は、欧米の石油資本、日本の商社2社の外国資本100%によるプロジェクトでした。

2000年にプーチン氏が大統領に就任。

2000年代に入るとロシアでは「資源ナショナリズム」が台頭し、資源開発は外国に頼らず、自国で行うべきだという世論が高まりました。

こうした中、2006年、ロシア政府は環境対策の不備を主な理由に、サハリン2の事業認可を取り消しました。

結局、シェルの前身の「ロイヤル・ダッチ・シェル」と日本の商社2社が、サハリン2の事業主体である「サハリン・エナジー」の株式の過半数をロシアの政府系ガス会社「ガスプロム」に8800億円で譲渡することで基本合意しました。

その内容はプーチン大統領にも報告されました。

日本とロシアはエネルギー分野で結びつきを深め、サハリン2は、両国が進める経済協力の象徴的なプロジェクトとなっています。

松野官房長官 “現時点でエネルギー輸入に支障はない”

松野官房長官は、午後の記者会見で「サハリン2への影響については、シェルの参画にかかわらず操業が継続されるため、現時点で日本のエネルギーの輸入に支障はないとの報告を受けている。政府としては、サハリン2プロジェクトを含むロシア関連事業は、エネルギー安全保障の観点も含め、G7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携しつつ適切に対応していきたい」と述べました。