WEB特集

韓国の大統領選挙 なぜ歌い なぜ踊る?

3月9日に迫った韓国の大統領選挙。

終盤まで与野党の候補による大接戦となっていますが、候補者の集会で目にするのは大音量の音楽とともに踊るダンサーの集団。実はこれ、韓国の選挙では当たり前の光景なのですが、なぜ選挙で歌って踊るのか。その現場を訪ねてみました。

(ソウル支局記者 佐々一渡)
集会で目にする歌と踊り(クリックすると動画が再生されます)

韓国の名曲が鳴り響く選挙戦

イ・ジェミョン候補のロゴソングの歌詞

1から10までしっかり見ます。

生活の責任を負います。
私のためのイ・ジェミョンです。
もっと大きな未来へ手をつないで行きます。
イ・ジェミョンはやります。
イ・ジェミョンを選びます。
イ・ジェミョン(李在明)候補
革新政権の継続を掲げる与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)候補。集会会場で流れていたのは、ガールズグループ「MOMOLAND」の日本でのデビュー曲となった「BBoom BBoom」のメロディーです。

この歌の歌詞を変えて、貴重な1票をイ候補に投じてほしいと、有権者に訴えていました。
ユン・ソギョル(尹錫悦)候補
一方、5年ぶりの政権交代を目指す保守系の最大野党「国民の力」のユン・ソギョル(尹錫悦)候補。
ユン・ソギョル候補のロゴソングの歌詞

本物、本物、本物、ユン・ソギョルです。

完全に本物です。
ユン・ソギョルが現れました。
最近は厳しく、大変な世の中です。
信じられる人はユン・ソギョル。
国民の選択した候補、望んでいた候補。
今すぐユン・ソギョル。
厳しい寒さの中、会場を盛り上げていたのは、韓国の演歌とも言われる「トロット」の人気歌手ヨンタクさんの「チニヤ」(日本語で「本物」)という曲の替え歌。

ノリノリの音楽に合わせて若いダンサーたちが踊りを披露していました。

替え歌で訴える人柄や政策

こうした歌は「ロゴソング」と呼ばれます。

その多くが韓国で広く親しまれている曲の替え歌で、候補者の名前を繰り返すだけでなく、その人柄や政策などもアピールします。車でロゴソングをかけながら選挙区をまわったり、集会の会場でダンサーがパフォーマンスを繰り広げたりします。

ロゴソングが始まったのは

こうしたロゴソングが大統領選挙で使われるきっかけとなったのは、さかのぼること四半世紀。1997年の選挙です。選挙に関する法律が改正され、集会会場で音楽を流すことができるようになったのです。

1987年の民主化から10年がたち、その進展を示す光景になったとも言えそうです。
キム・デジュン候補(左) 1997年の選挙運動
この選挙では、キム・デジュン(金大中)候補が人気ヒップホップグループの曲を使って若者に浸透したことが、勝利につながる一因になったとも言われています。

それ以降、大統領選挙ではロゴソングが積極的に活用されるようになりました。

タダではできないロゴソング

ロゴソングをつくるにはそれなりにお金もかかります。

韓国の音楽著作権協会によりますと、公式の選挙運動期間中に楽曲を使用するには、1曲当たり200万ウォン、日本円で19万円余りが必要だということです。

さらに、作詞家や作曲家に一定の金額を支払うケースもあるほか、レコーディングなどにも費用はかかります。
それでも、インパクトがある形で自分たちの思いを伝えることができるため、「ユーチューブ」に趣向を凝らした動画をのせるなど、各陣営とも準備したロゴソングを最大限活用しようとしています。

実績・手腕を強調する与党陣営

与党のイ・ジェミョン陣営は、10曲ものロゴソングを準備しました。著名な作曲家や歌手とコラボしてオリジナルの曲を作成したほか、日本の紅白歌合戦にも出場したキム・ヨンジャさんの「アモール・ファティ」もあります。
イ・ジェミョン候補のロゴソングの歌詞

(髪の毛は)抜かないで、植えてください。

インプラントも支援します。
(就職活動の)面接支援、傷病手当は当然です。
全国民が安心できるように。
能力は必須です。危機をチャンスにして前に進もう。
話題を集めた薄毛の治療への健康保険の適用や、就職活動にかかる費用の支援などといった公約を紹介するとともに、地方行政を率いてきた実績もアピール。

政治経験のないユン候補との違いを強調するねらいがありそうです。

多様な曲で幅広い層を意識する野党陣営

その与党の1.5倍の15曲を用意したのが、最大野党のユン・ソギョル陣営。

トロットやフォーク、さらには童謡「幸せなら手をたたこう」など、さまざまなジャンルの楽曲を使い、あらゆる世代への支持を広げたい考えです。

中でも注目を集めたのが、今から40年前に出されたユン・スイルさんの「アパート」という歌をアレンジしたものです。
ユン・ソギョル候補のロゴソングの歌詞

一生稼いで、マイホームの夢のために走ってきましたが
あまりに高くて諦めました、マイホームの夢。

貧しい人は家も買えない。
みんなが不幸な不動産政策を変えましょう。
韓国では、不動産価格の高騰で今のムン・ジェイン(文在寅)政権への不満が高まっていて、それを痛烈に批判しました。

ユン陣営では、15曲中3曲は一般からの公募で選ぶなど、国民の声を聞き国民とともに政権交代を目指す姿勢を強調しています。

世相をも写し出すロゴソング

どんなロゴソングをつくるのか、そして、そこにどんなメッセージを込めるのか。

各陣営の戦略が見えてくると同時にその時々の社会の状況や世相をも写し出すとして、韓国のメディアは候補者のロゴソングが明らかになるとその分析記事も配信します。

2年前の国会議員の選挙は、新型コロナウイルスが広がり始めたばかりで、未知のウイルスに対する国民の不安を和らげるような曲が多かったと指摘されていますが、今回の選挙で使われている曲は全体的に明るいと言われています。
コロナ禍がおよそ2年にわたって続く中、今度は国民を元気づけるような曲が好まれているということです。

実際、主要な4人の候補者のうち3人が野球場での応援歌としてもよく使われるノリのよい同じ曲を使うなど、どの会場でも支持者たちが一緒になって体を動かしていて、盛り上がりを見せています。

過去の選挙と比べても、まれに見る大接戦となっている今回の大統領選挙。

ロゴソングが担う役割もいつも以上に重要視される中、大音量の音楽とともに熱い戦いが続きます。
ソウル支局記者
佐々 一渡
2003年入局
旭川放送局、
国際部、ウィーン支局を経て、2019年から現職

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