「令和臨調」発足へ ポストコロナの社会づくりを議論

ポストコロナの社会づくりに向けた議論を進めようと経済界や労働界、それに学識経験者などによる「令和臨調」が発足することになりました。政治、経済、社会などの課題に対し、政策を提言していく方針です。

これは、各界の有識者が参加する「令和国民会議」、通称「令和臨調」の共同代表に就任する日本生産性本部の茂木友三郎会長らが28日に記者会見して発表しました。

この中で、茂木氏は夏の参議院選挙の前に「令和臨調」を正式に発足させるとしたうえで「目的は平成の時代から先送りされてきた積年の構造改革に取り組むことだ。特に与野党が立場や党派を超えて取り組まなければ解決困難な課題に取り組みたい」と述べました。

「令和臨調」には経済界、労働界、学識経験者などおよそ80人の参加が決まっていて「統治構造」「財政・社会保障」「国土構想」をテーマとする3つの専門部会を設けて、ポストコロナの社会づくりに向けた議論を進めることにしています。

そして国会議員や知事、市町村長のほか、大学生などとも意見を交わしながら政治、経済、社会などの課題に対し、政策提言を行っていくとしています。

茂木氏は「今、世界中で民主主義の危機が叫ばれている。極端で扇情的な意見、迎合的な意見が世論をあおる風潮も散見される。先送りされてきた課題に今取り組まないと、日本の社会と民主主義の危機的な事態を迎えるかもしれないという思いがある」と決意を強調しました。

“ポストコロナ”の社会へ 3テーマで議論

「令和臨調」は、ポストコロナの社会づくりに向け、「統治構造」「財政・社会保障」「国土構想」の3つのテーマを議論する方針です。

「統治機構」

「統治機構」では、平成以降の政治改革を検証しつつ、二院制や国会審議などの国会の在り方、選挙制度、政治と官僚の関係や官僚の働き方改革などについて議論するとしています。

「財政・社会保障」

「財政・社会保障」では、経済成長の長期停滞や格差の固定化などの問題を解決するための財政政策のほか、現在の厳しい財政状況を踏まえた持続可能な社会保障制度などが議題される見通しです。

「国土構想」

「国土構想」では、人口減少と超高齢化という現実を直視し、自由で多様な生き方を可能にする「人づくり」と「ネットワークづくり」に重点を置いた新たな社会像を追求するとしています。

メンバー構成では多様性を意識か

「令和臨調」の共同代表は、日本生産性本部会長でキッコーマン名誉会長の茂木友三郎氏、経済同友会の元代表幹事で東京電力の会長を務める小林喜光氏、元東京大学総長の佐々木毅氏、岩手県知事や総務大臣を歴任した日本郵政グループの増田寛也社長の4人が務めます。
茂木氏と佐々木氏は、前身の「21世紀臨調」でも「共同代表」を務めました。

一方、3つのテーマごとに設けられる専門部会のうち、「統治構造」では「ボストンコンサルティンググループ」の秋池玲子氏、「財政・社会保障」では「日本総合研究所」理事長の翁百合氏、「国土構想」では元消費者庁長官の板東久美子氏がそれぞれ共同座長を務めます。

また「国土構想」の部会の取りまとめにあたる主査は、日本学術会議の会員人事で任命されなかった6人のうちの1人、東京大学教授の宇野重規氏が務めることになっています。
このほか、4年前に全国最年少で町長となった、35歳の新潟県津南町長の桑原悠氏や骨の病気で車いす生活を余儀なくされながらも、起業を果たした32歳の実業家、垣内俊哉氏も参加します。

メンバーの構成では、多様性を意識したものとみられます。

平成では国会改革提言や選挙制度改革案も

「令和臨調」の前身となる「民間政治臨調」は、平成4年に発足しました。
発足した年には、国会議員どうしの政策論争を実現するため、委員会での官僚の答弁をやめたり、本会議の採決に押しボタン式投票を導入したりすることなどを求めた国会改革の提言をまとめました。

翌平成5年には、衆議院の選挙制度をめぐり、中選挙区制度を廃止して、小選挙区制度の導入を柱とした改革案を打ち出すなど、国会の政治改革の議論をリードして存在感を示しました。

その後、平成11年に、憲法の在り方なども含めた幅広い議論と提言を行うため「21世紀臨調」として再スタートしました。

「21世紀臨調」では、若者の意見を広く国の政治に反映させるため、選挙権を認める年齢を18歳に引き下げることや、各政党に対し、衆議院選挙で、政策の財源の裏付けや数値目標を明記した政権公約・マニフェストを示すことなどを次々と提言してきました。