性別変更の女性 凍結精子でもうけた子と法的な親子関係 認めず

生まれたときの性別は男性で、その後、性別適合手術を受けた女性が凍結保存していた精子を使ってパートナーの女性との間にもうけた子どもについて、法的な親子関係が認められるかどうかが争われた裁判で、東京家庭裁判所は「今の法制度では法的な親子関係を認める根拠が見当たらない」として、訴えを退けました。

“血縁上は親子関係も法律上の親子関係とは同義ではない”

性同一性障害と診断され戸籍の性別を変更した40代の会社員の女性は、性別適合手術を受ける前に凍結保存していた精子を使ってパートナーの女性との間に現在3歳と1歳になる2人の娘をもうけました。

パートナーの女性は、出産によって子どもの母親として法的に認められていますが、精子を提供した女性は自治体に提出した認知届が受理されなかったということで、法的に親子と認めてもらいたいと訴えを起こしました。

28日の判決で、東京家庭裁判所の小河原寧 裁判長は「血縁上は親子関係にあるが、法律上の親子関係とは必ずしも同じ意味ではない」としました。

そのうえで「性別変更の手続きをしているので『父』とはならず、生まれた子を妊娠・出産したわけではないので『母』ともならない。ほかに今の法制度で法的な親子関係を認める根拠は見当たらない」として訴えを退けました。

性別変更した女性「とても悲しく残念 制度が追いついていない」

親として認めてほしいと訴えていた女性は判決について「親子として認められずとても悲しく、残念です。生物学的にも親子なのに法的には認められないのは、制度が追いついていないと感じます。同性どうしで子どもを育てている家庭は私たち以外にも普通にいるので、諦めず子どもたちが生きやすい社会に変えていきたい」と話し控訴する考えを示しました。

また、仲岡しゅん弁護士は「不当判決なので、今後高裁や最高裁でも争っていきたい」と話していました。
血縁関係があり、実際に親子として暮らしていても法的には親子と認められないー

今回の裁判では、生殖補助医療の進歩や多様な性をめぐる現状に法律が追いついていないことが改めて浮き彫りになりました。

性同一性障害特例法では、戸籍の性別を変える場合に現在、結婚していないこと、未成年の子どもがいないこと、生殖機能をなくすことなど5つの要件を定めていて、すべてを満たしていなければ性別は変えられません。

親子関係などをめぐって社会に混乱を生じさせないよう設けられた要件ですが、性同一性障害の人が戸籍を変える壁になっているとの指摘もあり、今回のケースでは複雑な事情を生む要因の1つとなりました。

また、生殖補助医療をめぐる課題も浮かび上がりました。
第三者からの精子や卵子の提供などで生まれた子どもについては親子関係を定める法律がなかったため、議員立法によって民法の特例法が成立し、去年施行されました。
第三者からの卵子提供で妊娠・出産したときは、出産した女性を母親とし、妻が夫の同意を得たうえで夫以外から精子提供を受けて生まれた子どもは夫を父親とすることが定められています。

ただ、事実婚や同性のカップル、性別変更をした人などの場合に精子や卵子を提供した人と子どもの親子関係がどうなるか、明確ではありません。
法律の付則では、生殖補助医療の規制の在り方などを2年をめどに検討したうえで、親子関係について特例を設けることも含めて検討するとしています。

判決について、家族法が専門の早稲田大学の棚村政行教授は、「生殖補助医療の発達により今回と同様のケースは今後も増えることが予想されるが、今の法律のもとでは、裁判所が事案ごとに個別の判断をするには限界がある」と指摘します。
そのうえで、「生殖補助医療や親子関係に関するルールは子どもの法的な立場の安定やいわゆる『出自を知る権利』のためにも重要だ。立法が進む海外のように活発な議論をして、法整備や社会的な支援についても検討する必要がある」と話しています。