コロナ 介護が必要な人の自宅療養相次ぐ 感染でサービス停止も

新型コロナウイルスの感染拡大で病床がひっ迫し、介護が必要な人が感染しても自宅療養となるケースが相次いでいます。
感染を理由に介護サービスが停止される場合もあり、専門家は早急な対策が必要だと指摘しています。

妻を介護する61歳の夫は

埼玉県三郷市に住む65歳の女性は、10年以上前に脳梗塞をきっかけに介護が必要になり、去年、骨折したことで要介護5の寝たきりとなりました

61歳の夫が仕事をしながら自宅で介護をしています。

先月半ば、夫が新型コロナに感染し女性も感染していることがわかりましたが、女性は無症状で夫も比較的症状が軽いとして2人とも自宅療養となりました。

夫によりますと、それまでデイサービスや訪問診療と訪問看護、それに訪問介護や訪問リハビリを受けていましたが、感染したことを伝えるとすべて停止されてしまったということです。

翌日、訪問してくれる別の事業所が見つかったものの、夫は発熱と全身のけん怠感で立ち上がることもままならない状態だったことから危機感が募ったといいます。

夫は「ある日突然、介護サービスが一斉に受けられない事態に陥るのは想定外でした。妻は24時間介護が必要なので、自分がやらなくてはと思いながらもどうしても体が動かず、追い詰められた気持ちになりました。あのまま訪問介護に来てもらえなかったら妻と共倒れしていたかもしれません」と話していました。
介護の問題に詳しい淑徳大学の結城康博教授によりますと、要介護者や家族が感染した場合在宅介護サービスが停止されるケースは少なくないということで「要介護者が感染した場合は入院して療養することが大事だが、オミクロン株の拡大で自宅療養を余儀なくされる事態となっている。介護を受けられないと心身の状態はどんどん悪化し命にも関わるので早急な対策を講じる必要がある」と指摘しています。

介護現場からは支援を求める声

在宅の要介護者やその家族が感染した場合、介護サービスが受けられないケースがあることについて介護の現場からは行政の取り組みや事業所への支援が必要だという声が出ています。

65歳の女性を担当しているケアマネージャーは、それまで受けていた介護サービスが停止された理由として、感染がわかる直前に女性の自宅を訪問していたため事業所の担当者自身も濃厚接触者になってしまったことや、小規模な事業所が多く、感染対策の資材も知識も十分にないことなどを挙げています。
女性への訪問介護を行った事業所の磯野智弘さんは「介護は身体的な密着があり滞在時間も長いので不安に感じる人が多いし、ヘルパーが感染した場合事業所が閉鎖に追い込まれ経営的なリスクもある。私たちも最初は正直、怖い部分もあったがきちんと感染対策をすれば大丈夫だとわかった」と話します。

そのうえで、感染者に対応するには事業所の費用負担が大きいとして「防護服や検査キットなどの物資の援助や、感染者の対応でふだんより時間がかかる分は介護報酬を加算してほしい」と話していました。

淑徳大学の結城康博教授は「訪問介護は特に運営が厳しく、一部の事業所の善意に頼ることには限界があり、このままでは『介護難民』化が深刻になる。自治体の責任で陽性者にヘルパーを派遣する仕組みを整えたり、対応した事業所には手厚い支援金を出したりするべきだ」と話していました。