【詳しく】ロシアがウクライナで軍事侵攻 いま何が?(2/25)

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって1日がたち、ウクライナ側はこれまでに民間人を含む137人が死亡したと明らかにしました。

現地では攻撃から逃れようと大勢の市民が避難を始めるなど、混乱が広がっています。

新たな局面を迎えたウクライナ情勢、いま何が起きているのか、詳しく解説します。

現在の戦況は?(日本時間2/25 21時現在)

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は各地で続き、首都キエフ近郊では、キエフへの侵攻を目指すロシア軍の戦車部隊とウクライナ軍による戦闘が続いているとみられます。
ウクライナ内務省の高官は自身のフェイスブックで、25日、日本時間の午後6時ごろ、首都キエフ市の北部にあるオボロン地区に、ロシア軍の工作員が侵入しているのを発見し、殺害したなどと明らかにしました。工作員は、ウクライナ軍の制服を着て偽装していたとしています。この地区では、他にもロシア軍の工作員と疑われる人物を目撃したといった情報がSNS上などで伝えられ、ロシア軍がキエフに本格的に侵攻するのを前に工作活動をしていたと見られています。

アメリカの分析は?

アメリカの国防総省の高官は24日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の状況について分析した結果を明らかにしました。

それによると、ロシア軍は複数の段階に分けて展開する可能性があり、現在は「大規模な軍事侵攻の初期段階にある」と分析しています。

どんな攻撃が行われている?

現地時間の24日午前4時半からは、激しいミサイル攻撃が始まり、短距離弾道ミサイルや、中距離弾道ミサイル、巡航ミサイルなどが陸上と黒海の海上から発射されたほか、爆撃機などおよそ75機が使われたとしています。

発射されたミサイルはこれまでに推定で160発以上に上るということです。

これらの攻撃は、弾薬庫や飛行場など軍事施設や防空施設を主な標的にしていたということですが、詳しい被害の状況や民間人を含む死傷者の数はわからないとしています。

ロシアはどこから侵攻している?

ウクライナの国境周辺に展開するロシア軍の地上部隊は、現地時間の24日正午ごろから侵攻を開始したとみられるということで、主に3つの方向から前進しているということです。
【主な侵攻ルート】
1.ウクライナ北部と国境を接するベラルーシから首都キエフに向かうルート

2.ウクライナの北東方向から国境を越えて第2の都市、ハリコフに南下するルート

3.ウクライナ南部のクリミアからヘルソンに北上するルート

ロシアのねらいは?

アメリカの国防総省の高官は「人口が集中する地域の奪取をねらっていると考えられる」と指摘した上で、侵攻の初期段階のため部隊の大部分はまだ投入されていないとの見方を示しました。

また、ロシア軍のねらいについて「ロシアは首都キエフに向かっていて、われわれの分析では、彼らはウクライナ政府を崩壊させ、自分たちの統治方法を確立するつもりだと考えられる」と指摘しました。

ウクライナの被害は?

ウクライナのゼレンスキー大統領は、日本時間のけさ「悲しいことに137人の英雄たち、市民たちを失い、316人がけがをした」と述べて、兵士だけでなく民間人にも犠牲者が出ていることを明らかにしました。
一方、ロシア側は、あくまでも軍事施設を対象にした攻撃で、民間人に対する脅威はないと主張しています。

チェルノブイリ原子力発電所は?

また、ウクライナのシュミハリ首相は24日、北部にあるチェルノブイリ原子力発電所が戦闘の末、ロシア軍に占拠されたと明らかにしました。

戦闘による犠牲者はいなかったとしていますが、敷地内にある放射性廃棄物の貯蔵施設の状態は分かっていません。
ロシアとしては、貯蔵されている放射性廃棄物をウクライナ側に渡さないようにするねらいがあるとみられますが、ウクライナの大統領府顧問は、ロイター通信に対して「ヨーロッパにとって深刻な脅威の1つになった」と述べ、ロシアを非難しています。

ウクライナの人たちの様子は?

現地では、市民の間で攻撃から身を守ろうと、地下鉄の駅の構内に避難したり、隣のポーランドに車や列車などで逃れたりする動きが広がっていて、大きな混乱が起きています。
このうち、ポーランド南東部の町メディカにある国境では、24日、ウクライナ側から歩いて国境を渡る人たちの姿が見られ、中にはベビーカーを押す母親や、スーツケースを引く家族の姿もありました。

ウクライナの人たちは何を思う?

「何も悪いことをしていないのに、なぜ、このような目にあわなければならないのでしょうか。キエフは逃げようとする車で大渋滞でした。爆発を見た人もいて、人々はパニックでした」(24歳女性)「朝、駅で列車を待っている間に爆発音を聞きました。友人や家族は国に残っていて、とても心配しています。多くの人はどこに行けばいいかわからず、家にとどまっています」(32歳男性)

ウクライナのゼレンスキー大統領は?

ウクライナのゼレンスキー大統領は日本時間のけさ国民向けのビデオメッセージをフェイスブックに投稿し、次のように述べました。

「われわれの情報によると、敵は私を1番目の標的、家族を2番目の標的にしている。敵は国家元首を抹殺することで、ウクライナに政治的なダメージを与えようとしている」「われわれはロシアと対話することも、自国の中立的な地位について話すことも恐れていない。ただ、現時点でNATO加盟国ではないウクライナの安全を、どの国が確保してくれるかは、非常に重要だ」

アメリカのバイデン大統領の考えは?

アメリカのバイデン大統領は24日、ホワイトハウスで演説し強く非難しました。

「ロシア軍は正当な理由もなく、必要性もないのに残虐な攻撃に踏み切った。プーチン大統領は侵略者で、彼がこの戦争を選んだ」「この侵攻を見過ごすわけにはいかない。ヨーロッパと世界全体の自由が今、危機にさらされている」

ロシアに対する制裁は?

バイデン大統領は「ロシア経済に厳しい打撃を与える」と述べ、ロシアに対する制裁を発表しました。

・ロシア最大の銀行を含む5つの金融機関がアメリカ国内に保有する資産の凍結など・航空産業などに必要な先端技術の輸出規制の強化などただ、今回の制裁には、最も厳しい措置の1つとされる、銀行間の国際的な決済ネットワークであるSWIFT=「国際銀行間通信協会」からのロシアの銀行の排除は含まれませんでした。

制裁は抑止力になるの?

バイデン大統領は、記者から、制裁が抑止力になっていないのではないかと問われたのに対し「制裁が彼を止められるとは言っていない。制裁が効果を発揮するには時間がかかるが、ロシアを弱体化させることにつながる」と述べ、ロシアの侵攻を直ちに食い止めることを目指したものではないとしました。

今後の各国の対応は?

アメリカ政府高官は24日、国連安保理の緊急会合が25日に開かれ、アメリカなどが提案する決議案について、採決が行われる見通しになったと明らかにしました。
決議案は、ロシアの軍事侵攻を最も強い言葉で非難した上で、ウクライナの主権と領土の一体性を改めて確認し、ロシアに対して軍の即時撤退を求める内容だということです。

ただ、採決では常任理事国のロシアが拒否権を行使し、決議案が否決されるのは避けられないとみられます。

これについてアメリカ政府高官は、決議案には多くの安保理理事国に加え、理事国以外の複数の国からも支持が得られる見通しだとした上で、「採決はロシアが釈明を迫られる場になる」と述べ、ロシアによる侵攻に対し国際社会が一致した姿勢を示す意義を強調しました。