オミクロン 感染者減少も死亡者増加 わかってきたこと【2/25】

感染拡大の第6波はピークを越えたものとみられ、ようやく減少局面に入りました。

ただ、減少のスピードは増加したときと比べて遅くなっている一方、死亡者数はこれまでにないペースで増えています。

オミクロン株の症状、後遺症は。

そして、異なる系統のオミクロン株「BA.2」の感染拡大は。

わかってきたことをまとめました。

(2022年2月25日現在)

“ピークアウト”も 減少スピード鈍化

新型コロナウイルスの新規感染者数は、2月中旬になって全国では2か月半ぶりに減少に転じ、多くの地域で減少局面となっています。

オミクロン株が広がった感染拡大の第6波では、感染者数は2022年に入ってからだけですでに300万人を超えましたが、ようやく「ピークアウト」したように見えます。

ただ、減少スピードは緩やかで、1週間の新規感染者数は2月24日までの1週間では、前の週と比べて0.88倍となっています。
厚生労働省の専門家会合は2月24日、「減少傾向となっているものの、そのスピードは鈍化していて、ワクチン接種の加速に伴って継続的に減少した2021年夏の状況とは異なり、全国的に再び増加傾向に転じる可能性がある」と指摘しました。

日本より先に感染が拡大した海外の傾向を見ると、イギリスでは、1週間の新規感染者数が、1月10日前後に100万人を超えたあと、一気に40%ほど減少。

1月中旬から2週間ほどは横ばいになったものの、2月24日までの1週間では27万人余りと再び減少しています。
アメリカでは、CDC=疾病対策センターによりますと、1月10日に一日の新規感染者数が130万人を超え、1週間平均でも80万人を超えたあと、次第に減少傾向となり、2月23日の時点では1週間平均で7万5000人ほどとなっています。

海外では、ワクチンの追加接種の接種率がイギリスでは55.8%、アメリカでは28.1%あり、さらに、感染拡大の規模が日本よりも大きく、免疫のある人が多くなっていることも、感染が急速に減ってきた背景にあるのではないかと考えられています。
(データはOur World in Data 2月22日時点)

死亡者数 第5波上回る

こうした中で、日本国内で亡くなる人の数は過去最多の状況が続いています。

1日に報告される亡くなった人の数は、およそ1か月前の2022年1月26日には34人でしたが、2月4日には103人と100人を超えたあと、2月22日には322人と初めて300人を超えて、過去最多を更新。

第5波までにはなかった200人を上回る状態が連日続いています。
(※2021年5月18日には216人となっていますが、この日は兵庫県が2021年3月から5月に亡くなったあと、報告されていなかった人の数をまとめて報告しています)

2022年1月以降に発表された亡くなった人の数は、2月24日までで4402人となっています。

デルタ株の時期に亡くなった人は、2021年7月から10月の4か月間でみても3483人で、オミクロン株が主体の感染の第6波では、すでに上回っています。

オミクロン株は重症化しにくいとされ、致死率はおよそ0.14%と以前のウイルスより低くなっていますが、感染規模があまりにも大きいため、重症者数や死亡者数も多くなっています。

亡くなっているのはほとんどが高齢者で、感染によって基礎疾患が悪化するケースが多いとされています。

厚生労働省のまとめでは、1月5日から2月8日までのおよそ1か月で亡くなった817人のうち、90代以上が34.4%、80代が36.6%、70代が19.6%、60代が4.0%で、60代以上が94.6%を占めています。
国内では、デルタ株が広がった2021年夏の第5波は、ワクチンの接種が進んだタイミングだったため、ワクチンによって多くの高齢者の死亡を防ぐことができたとされています。

2回のワクチン接種で一定程度は重症化を防ぐ効果があるとはいえ、接種から時間がたって効果が下がってきたところに、オミクロン株の感染が高齢者にも拡大し、重症化する人も増えていると考えられています。

これまでの感染拡大では、感染者数のピークからおよそ2週間遅れて重症者数がピークとなり、その後、死亡者数がピークとなってきていて、今後も増えるおそれがあります。

京都大学の西浦博教授は、2月24日の厚生労働省の専門家会合で、2021年12月から2022年4月23日までに、新型コロナウイルスで亡くなると推定される人が、合わせて5517人に上る可能性があるとする推定結果を示しました。

この試算にワクチンの3回目接種などの効果は含まれていないということですが、仮に、2月中に高齢者の60%が3回目の接種を終えた場合には、高齢者の死亡を295人減らすことが期待できるとしています。

海外では 死亡者減少の国も、再上昇の国も

海外では、死亡者数がようやく減少に転じた国がある一方、増加している国もあります。

アメリカでは、CDCのデータによりますと、1月中旬から1か月ほど、1週間平均で1日に報告される死亡者数が2000人を超える日が続いてきました。

2月上旬をピークに徐々に減少し、2月中旬には2000人を下回り、2月23日現在、1600人余りとなっています。
イギリスでは、1週間平均で1日に報告される死亡者数は、2月16日までの1週間では123人と、死亡者数が増え始める前の、2021年の年末の水準に戻りました。

一方、イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するウェブサイト、「アワ・ワールド・イン・データ(Our World In Data)」によりますと、1日当たりの死亡者数は、2月23日までの1週間で、フランスは233人と多い状況が続いていて、デルタ株の時期にピークだった2021年8月下旬のおよそ110人を上回っています。

ドイツは、2022年1月下旬には死亡者数が減って1週間平均で140人ほどでしたが、感染が再び急激に広がっていて、現在は204人と再び増えています。

どんな人が重症化?

重症化している人は高齢者や、基礎疾患のある人が多いとされています。

2月24日の厚生労働省の専門家会合では、大阪府で2021年12月17日から2022年2月17日までに重症化したケースを分析した結果が報告されました。

それによりますと、
▽基礎疾患がある人が重症化した率は2.33%と、
▽基礎疾患がない人の0.05%より大幅に高くなっていました。

ここでは、重症化リスクの高い基礎疾患がある患者として、糖尿病や心臓の病気、COPD=慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患の患者、人工透析を受けている患者、免疫抑制剤や抗がん剤などを使っている患者を挙げています。

年代別に見ると、基礎疾患があっても
▽10代から40代では重症化したのは1%未満だったのに対し、
▽50代では1.25%、
▽60代で2.14%、
▽70代で3.71%、
▽80代で3.38%、
▽90代で1.63%、
▽100歳代4.00%などとなっていました。

死亡に至った率は、
▽基礎疾患がなかった場合は0.04%で、
▽基礎疾患があった場合は2.82%となっていました。

また、専門家会合では、広島県で重症化したり死亡したりした割合を調べたデータも報告されました。

それによりますと、感染が判明したときに軽症だった人が、重症化したり死亡したりした割合は第6波では0.4%で、第5波の0.8%より下がっていました。

当初は軽症でも、重症化したり死亡したりした割合は、
▽年齢が80歳以上だと4.4%、
▽糖尿病だと2.1%、
▽心臓や血管の病気だと2.7%、
▽COPDだと5.5%、
▽がんだと2.3%、
▽認知症だと3.7%となっていました。

「BA.2」 1月までで0.6%だが…

感染状況に影響する可能性があり、注視されているのが、オミクロン株の系統の1つで「BA.2」と呼ばれる変異ウイルスです。

日本国内でも市中での感染が報告されています。
世界中で感染が広がっているオミクロン株「BA.1」は、ウイルスの表面にある突起部分「スパイクたんぱく質」の一部に欠けている部分がありますが、「BA.2」ではこの欠けている部分がないことが分かっています。

海外の一部で行われている検査方法ではオミクロン株を検出できないことがあり、「ステルス・オミクロン」と呼ばれることもありますが、日本では別の方法で調べていて検出できるため、この呼び方は当たらないとされています。

ただ、「BA.1」か「BA.2」か区別するには遺伝情報を解析する必要があります。

国立感染症研究所などが2月16日に発表した調査結果では、国内では、「BA.2」は2021年の年末から1月30日までに全国で合わせて94件報告されていて、オミクロン株全体に占める割合はおよそ0.6%だということですが、遺伝子解析に時間がかかることがあり、暫定的な結果だとしています。

理論疫学が専門の京都大学の西浦博教授は、2月24日に開かれた厚生労働省の専門家会合のあと、BA.2の分析について、「現在までに日本での『BA.2』の広がりの実態をリアルタイムで把握できていない。部分的なサンプル調査で十分なので、全国的な調査が必要だ」とコメントしています。

「BA.2」の感染力は? 重症化は?

「BA.2」は感染力が、さらに高いとみられています。

デンマークの保健当局のもとにある研究所によりますと、「BA.2」は、2021年の年末の1週間ではデンマーク国内で検出される新型コロナウイルスの20%ほどだったのが、2022年1月中旬から下旬の1週間では66%ほどになったとしています。

また、イギリスの保健当局によりますと、イギリスでも「BA.2」とみられる変異ウイルスは、2022年1月24日は5.1%だったのが、2月6日には18.7%になったとしています。

感染した人1人が発症し、次に感染した人が発症するまでの間隔、「発症間隔」は、デルタ株では平均4.09日だったのが、オミクロン株の「BA.1」では平均3.72日、「BA.2」では平均3.27日と「BA.1」より半日程度短くなっていて、感染拡大スピードが速いことに関わっている可能性があるとしています。

一方、東京医科歯科大学のグループは、日本国内でオミクロン株に感染した40人を分析した結果として、7割以上が「BA.1.1」という、「BA.1」系統のウイルスだったと発表しました。

デンマークなど「BA.1」が主流の国では「BA.2」への置き換わりが早く進んだ一方、「BA.1.1」が主流の国では置き換わりが遅い可能性があると指摘し、引き続き分析する必要があるとしています。

厚生労働省の専門家会合は2月24日、「いまのところ兆候は見られないが、今後置き換わることで再度感染が増加に転じる可能性に注意が必要だ」としています。

「BA.2」は入院のリスクに差がないという報告も、海外から出ています。

デンマークの研究所の報告によりますと、入院のリスクに差はなく、「BA.1」に感染したあと、「BA.2」に再感染したケースも47例報告されていますが、ほとんどがワクチンを打っていなかった若い世代で、症状は軽く、入院した人はいなかったとしています。

イギリスの保健当局は、データはまだ限られているとしながらも、「BA.1」に感染したあと、「BA.2」に再感染したケースは報告されていないとしています。

また、WHOは「BA.2」による重症化リスクは、「BA.1」より上がっているとする根拠はないとしています。

ワクチンの効果について、イギリスの保健当局は、ワクチンで発症を防ぐ効果は、
▽2回接種から25週以上、およそ半年以上たったあとでは、「BA.1」では9%だったのが、「BA.2」では13%、
▽3回目の追加接種から2週間たった後では、「BA.1」の63%に対し、「BA.2」では70%で、ワクチンの効果に違いはなかったとしています。

上気道の炎症起こしやすく せきやのど、鼻の症状も

オミクロン株について、WHO=世界保健機関は、鼻やのどといった上気道の炎症を引き起こしやすいものの、多くの人にとっては、肺まで達して重症化するリスクはほかの変異ウイルスより低いとしています。

国立感染症研究所は1月24日時点で、新型コロナウイルスの感染者情報を集約するシステム「HER-SYS」に登録された3600人余りのデータを出しています。

届け出の時点でオミクロン株でみられる症状は
▽発熱が66.6%、
▽せきが41.6%、
▽全身のけん怠感が22.5%、
▽頭痛が21.1%、
▽せき以外の呼吸器症状が12.9%、
▽吐き気やおう吐が2.7%、
▽下痢が2.3%などとなっています。

これまで、新型コロナウイルスで特徴的にみられた嗅覚障害や味覚障害を訴えた人は0.8%でした。

このほかの国内や海外の調査でも、せきやのどの痛み、鼻水や鼻づまりの症状が見られていて、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、花粉症の症状と紛らわしいとして、毎年花粉症で悩まされている人は、症状が出る前に早めに医療機関を受診しておくよう呼びかけています。

オミクロン株の後遺症 検証はこれから

オミクロン株に感染したあと、後遺症がどの程度出るのか、各国で関心が高まっていますが、まだはっきり分かっていません。

「Long COVID」と呼ばれる新型コロナウイルスの後遺症について、WHOは「発症から3か月後から始まり、少なくとも2か月は続く症状」としています。

従来の新型コロナウイルスでは、感染を経験した10%から20%ほどで、けん怠感や息切れ、認知機能障害などの後遺症がみられ、「一般的に日常生活に影響を及ぼす」としています。

また、「感染初期の重症度と、その後に後遺症が現れるかどうかに関連はないようだ」としています。

オミクロン株が南アフリカで初めて報告されてから、まだ3か月余りしかたっておらず、後遺症については今後、検証が進むとみられます。

“オミクロン株後”の議論も

イギリス政府に対して感染症対策の科学的なアドバイスを行う専門家グループは1月26日、今後の中長期的な見通しについてまとめた声明を発表しました。

その中では、新たな変異ウイルスの予測は難しいものの、将来的に再び流行の波が訪れることはほぼ確実で、病原性が軽くなるとは限らないとしています。

そして、流行を予測できるような状態になるのは何年も先になる可能性もあるとして、感染状況を把握して報告するモニタリングとサーベイランスの仕組みを維持する必要があるとしています。

これまでの変異ウイルスとの比較

感染力や病原性など、いま分かっていることをWHOや国立感染症研究所、各国の公的機関などの情報をもとに、ほかの「懸念される変異株=VOC」と比較する形でまとめました。
▽感染力
WHOの週報では、オミクロン株はこれまでの変異ウイルスよりも感染が拡大しやすくなっているとしています。

▽病原性
オミクロン株では、入院に至るリスクや重症化リスクがデルタ株に比べて低いとされています。

ただ、感染拡大の規模が大きく、入院者数や重症化する人も増えていて医療機関への負荷は大きくなっています。

▽再感染のリスク
WHOは、オミクロン株ではワクチンや過去の感染によって免疫を持つ人でも再感染しやすくなる変異があるとしています。

イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンは、オミクロン株の再感染のリスクは、デルタ株に比べて5.41倍と高くなっているとする報告を出しています。
▽ワクチンの効果(ファイザー・モデルナのmRNAワクチン)
オミクロン株に対しては、ワクチンの効果が下がりますが、ワクチンの3回目の追加接種によって、再び効果が上がるとされています。

イギリスの保健当局のデータでは、オミクロン株に対しては、ファイザーやモデルナのmRNAワクチンで、2回の接種から20週を超えると10%程度に下がっていましたが、ファイザーかモデルナの追加接種をすると、2週間から4週間後には発症を防ぐ効果は65%~75%に上がりました。

重症化して入院するリスクを下げる効果は、発症を防ぐ効果より高くなっています。
ファイザーやモデルナ、それにアストラゼネカのワクチンを接種した人で分析すると、入院に至るのを防ぐ効果は、2回の接種後2週間から24週間では72%、25週を超えても52%、3回目の追加接種をしたあと、2週以降だと88%となっていました。
アメリカのCDCのデータでは、ワクチンを打っていない人と比較して、ファイザーやモデルナの「mRNAワクチン」で入院を防ぐ効果は、デルタ株の時期には、3回目の追加接種のあとだと、2か月までだと96%、4か月以上たっても76%でした。

オミクロン株の時期には、2回目の接種から2か月までだと入院を防ぐ効果は71%、5か月以上たつと54%となっていましたが、3回目の接種を行うとオミクロン株に対しても入院を防ぐ効果は上がり、接種から2か月以内だと91%、4か月から5か月でも78%になっていました。

CDCは、3回目の接種が重要で、未接種者はできるだけ早くワクチンを接種する必要があるとしています。

▽治療薬の効果
重症化を防ぐために感染した初期に投与される「抗体カクテル療法」は、効果が低下するとされ、厚生労働省はオミクロン株では投与を推奨しないとしています。
一方で、軽症患者用の飲み薬「ラゲブリオ(一般名モルヌピラビル)」や、新たに承認された「パキロビッドパック(一般名ニルマトレルビル/リトナビル)」、それに軽症から重症の患者まで投与される「レムデシビル」など、ウイルスの増殖を防ぐ仕組みの飲み薬には影響が出ないと考えられています。

また、WHOは、重症患者に使われる免疫の過剰反応を防ぐ薬やステロイド剤は、引き続き効果が期待されるとしています。

専門家は

今後の見通しについて厚生労働省の専門家会合の脇田隆字座長は、2月24日の会合のあと「新規感染者数の減少傾向を保つことが、医療の状況の改善につながるが、今は、ぎりぎり減少傾向になっている状態だ。今後、人々の接触機会が増えるなど、少しのきっかけで、再び増加傾向になって医療への負荷につながると考えられる。感染状況を改善させて、それを継続させることが非常に重要だ」と述べました。
また、海外の感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は「BA.2」について、「今の時点では国内で『BA.2』が広がっている状況では無いと考えられる。海外からは『BA.2』によって、重症者が増えたり、ワクチンが『BA.1』よりも効かなくなったりしたという報告はなく、対策としては変わらないと考えられる。ただ、『BA.2』が広がる国とそうなっていない国があり、どうして違うのか、詳しい理由はまだ分かっておらず、国内でも広がると流行が長引くなどの可能性は否定できないため、今後、十分に監視を強めていく必要がある」と話しています。

対策は変わらない

オミクロン株でも、感染経路はこれまでと変わらず、飛まつによる感染、「マイクロ飛まつ」や「エアロゾル」と呼ばれる密閉された室内を漂う、ごく小さな飛まつが主となっています。

ウイルスがついた手で鼻や口などを触ることによる接触感染もあります。

オミクロン株でも、飲食店での職場同僚との忘年会や、自宅での親族との会食など、飲食を通じた感染が見られたほか、職場での密な環境での作業を通じて感染するケースも報告されています。
政府分科会の尾身茂会長は、マスクを外した状況や「鼻マスク」など着用が不十分な状況での感染が思っていたよりもはるかに多いとして、不織布マスクで鼻までしっかり覆ってほしいと呼びかけています。

厚生労働省の専門家会合は、ワクチンの接種に加え、これまでも多くの人が集まる行事で感染が拡大したことから、これから卒業式や春休みなど、行事が行われる年度末に向け、1つの密でも避け、外出の際には混雑した場所や感染リスクの高い場面を避けることや、不織布マスクの正しい着用や手指の消毒、換気といった感染対策の徹底を呼びかけています。