ロシア軍事侵攻 各地で続く 首都キエフ近郊でも戦闘か

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は各地で続き、首都キエフ近郊では、キエフへの侵攻を目指すロシア軍の戦車部隊とウクライナ軍による戦闘が続いているとみられます。

アメリカ国防総省の高官は「大規模な軍事侵攻の初期段階にある」と警戒感を強めています。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は各地で続いていて、ウクライナのゼレンスキー大統領はフェイスブックに投稿し、日本時間25日午前11時、ロシア軍がウクライナでミサイル攻撃を続けていると明らかにした上で「攻撃の目的は、ウクライナ市民や社会全体に圧力をかけることだ」と非難しました。

ウクライナのクレバ外相もツイッターで、「ロシア軍によるキエフへの恐ろしいミサイル攻撃だ」として首都キエフが攻撃を受けたと明らかにしました。

また、ウクライナ内務省の高官は25日、SNSに「きょうが最も厳しい日になる」と投稿し、ロシアの戦車部隊が北部から首都キエフに向かっていて、対戦車ミサイル「ジャベリン」などで応戦することを明らかにしました。

ウクライナ軍の参謀本部はロシア軍の侵攻を止めるためウクライナ軍がキエフの北西部にある3つの橋を爆破したことを明らかにするなど、キエフ周辺ではロシア軍とウクライナ軍による戦闘が続いているとみられます。

一方、アメリカ国防総省の高官は、24日、ロシア軍はこれまでに主に3つの方向から前進していてウクライナ北部と国境を接するベラルーシから首都キエフに向かうルートと、ウクライナの北東方向から国境を越えて第2の都市、ハリコフに南下するルート、それにウクライナ南部のクリミアからヘルソンに北上するルートだとしています。

国防総省の高官は、「人口が集中する地域の奪取を狙っていると考えられる」と指摘した上で、「大規模な軍事侵攻の初期段階にある」と警戒感を強めています。

ウクライナ駐日大使 “最悪のシナリオも想定”

ロシアがウクライナに対する軍事侵攻に踏み切ったことを受けて、ウクライナのコルスンスキー駐日大使が都内で会見を開き「最悪のシナリオも想定しなければならない」と強い危機感を示すとともに、日本も国際社会と足並みをそろえ、ロシアへの制裁を強化するよう求めました。

日本に駐在するウクライナのコルスンスキー大使は25日午前、都内の日本外国特派員協会で記者会見を開き、「われわれの想定は甘かった。ロシアは民間の施設にもミサイルを撃ち込み、多くの犠牲者が出ている。ロシアの攻撃がこれで終わるとは思えず、最悪のシナリオも想定しなければならない」と述べ、ロシアの攻撃が今後も続くことに強い危機感を示しました。

そのうえで、「降伏するという考えはみじんもない。われわれは反撃する」と述べ、ロシアに対して徹底抗戦する姿勢を強調しました。

そして、「ひとりの人間が、理由もなく、このような危機を招いたことは、決して許されることではなく、止めなければならない」と述べ、日本も国際社会と足並みをそろえる形でロシアへの制裁を強化するよう求めました。

ロシア駐日大使 “軍事作戦 都市部には行われていない”

ロシアがウクライナに対する軍事侵攻に踏み切ったことを受けて、ロシアのガルージン大使は都内で会見を開き「軍事作戦はウクライナの都市部に対しては行われていない」と述べ、攻撃は正当だと主張しました。

日本に駐在するロシアのミハイル・ガルージン大使は25日午後、都内の日本外国特派員協会で記者会見を開き「軍事作戦の主な目的は、8年にわたってウクライナ政府が与えた屈辱と大量虐殺から、ウクライナ東部の市民を守ること。そして、拡大を続けるNATOの脅威から、ロシアの安全を確保することだ」と述べました。

そして「空爆などの軍事作戦は、ウクライナの都市部に対しては一切、行われていない。軍の施設などが対象で、ウクライナ国民に直接、影響を及ぼすことはない」と述べ、ロシア軍による攻撃は正当だと主張しました。

また、欧米各国が相次いでロシアへの経済制裁を発表していることについては「制裁を科す側と科される側の双方が損失をこうむり、互いに不利益なものだ」と批判しました。

ガルージン大使は、日本がロシアに追加の経済制裁を発表したことに対して、ロシアから日本に「重大な反応がある」とした上で、具体的な措置の内容については時期がきたら発表するという見通しを示しました。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって1日がたち、ウクライナのゼレンスキー大統領は、これまでに民間人を含む137人が死亡したと明らかにしました。
現地では攻撃から逃れようと、市民の間で避難の動きが広がり、大きな混乱が起きています。

ロシアによる軍事侵攻は24日、ウクライナの各地で始まり、ロシア国防省は、これまでに11の空港を含むウクライナ軍の83の地上施設を攻撃したと発表しました。

一方、ウクライナ政府は首都キエフの北に位置し、1986年に史上最悪の原発事故が起きたチェルノブイリ原子力発電所が戦闘の末ロシア軍に占拠されたと発表しました。

ゼレンスキー大統領は日本時間の25日朝、「悲しいことに137人の英雄たち、市民たちを失い、316人がけがをした」と述べて、兵士だけでなく民間人にも犠牲者が出ていることを明らかにしました。

そのうえで、総動員令を出して防衛態勢を強化するとしていて、海外メディアは、首都キエフを含む主要都市に広範囲に軍を配置すると伝えています。

ロシア側はあくまでも軍事施設を対象にした攻撃で、民間人に対する脅威はないと主張していますが、現地では市民の間で攻撃から身を守ろうと地下鉄の駅の構内に避難したり、隣のポーランドに車や列車などで逃れたりする動きが広がっていて、大きな混乱が起きています。

軍事侵攻についてロシアのプーチン大統領は、「いま起きていることはすべて必死の手段だ。ほかに選択肢はなかった」と述べ、正当化しています。

これに対して、アメリカやEU=ヨーロッパ連合などは、ロシアを激しく非難し、相次いで制裁措置の実施を発表してロシアに圧力をかける姿勢を一段と強めています。

ロシア国防省「118の軍事施設を破壊」

ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は、25日、日本時間の午後5時半頃、ビデオで声明を発表し、これまでにウクライナ国内の11か所の軍用の空港を含む118の軍事施設を破壊したとしています。

さらに、ウクライナ軍の戦闘機と無人機あわせて10機のほか、戦車など装甲車両18台を破壊したなどとこれまでの戦況を明らかにしました。

“首都キエフで複数の爆発音” ウクライナのメディア

ウクライナのメディアによりますと、日本時間の25日午前11時すぎ、ウクライナの首都キエフで複数の爆発音が聞こえたということです。

ウクライナ内務省の関係者がフェイスブックに投稿した内容によりますと、ウクライナ軍がキエフ上空を飛行するロシア軍の軍用機を撃墜させ爆発が起きたということです。

これによってキエフの中心部にある9階建ての集合住宅が炎上し、ロイター通信によりますと少なくとも8人がけがをしたということです。

現場の集合住宅を撮影した映像では、広い範囲が焼け焦げ、壁などがめちゃくちゃに壊れているほか、屋内の一部では火が燃え続け消火活動が行われています。

また、屋外では破片が散乱している様子が確認できます。

ウクライナのゼレンスキー大統領は演説で、「ロシア軍は、民間の施設は標的ではないと言っているがうそだ。彼らは攻撃する場所を区別していない」とロシア側を非難しました。

UNHCR「避難の市民は10万人超」

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻を受けているウクライナで、安全を確保するため、すでに住居を離れて避難を余儀なくされた市民が10万人を超えるという推計を明らかにしました。

数千人はモルドバやルーマニアなどの近隣の国に逃れたとみられるとしています。

その上で近隣の国々に対し、国境を開放して避難してきた人たちを受け入れるよう呼びかけています。

米 国務長官 “ウクライナ政府を転覆しようとしていると確信”

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐりアメリカのブリンケン国務長官は24日、ABCテレビのインタビューに応じ「プーチン大統領がウクライナ政府を転覆しようとしていると確信しているか」と質問され「確信している」と答えました。

そして「ロシアの計画の一部は首都キエフを攻撃し、ほかの主要都市も攻撃することだ」と述べました。

さらに、ロシア軍がウクライナだけでなく、NATO=北大西洋条約機構の加盟国にも侵攻する可能性については「もちろん可能性はある」と述べました。

米国防総省高官「ロシア軍は主に3つの方向から前進」

アメリカ国防総省の高官は24日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の状況について分析した結果を明らかにしました。

それによりますと、ロシア軍は複数の段階に分けて展開する可能性があり、現在は「大規模な軍事侵攻の初期段階にある」と分析しています。

現地時間の24日午前4時半からは、激しいミサイル攻撃が始まり、短距離弾道ミサイルや、中距離弾道ミサイル、巡航ミサイルなどが陸上と黒海の海上から発射されたほか、爆撃機などおよそ75機が使われたとしています。

発射されたミサイルはこれまでに推定で160発以上に上るということです。

これらの攻撃は、弾薬庫や飛行場など軍事施設や防空施設を主な標的にしていたということですが、詳しい被害の状況や民間人を含む死傷者の数は分からないとしています。

その後、ウクライナの国境周辺に展開するロシア軍の地上部隊が、現地時間の24日、正午ごろから侵攻を開始したとみられるということです。

ロシア軍はこれまでに主に3つの方向から前進していて、
▽ウクライナ北部と国境を接するベラルーシから首都キエフに向かうルートと、
▽ウクライナの北東方向から国境を越えて第2の都市、ハリコフに南下するルート、それに
▽ウクライナ南部のクリミアからヘルソンに北上するルートだとしています。

さらにキエフに向かうルートは、キエフの北東部分と北西部分の二手に分かれているということです。

国防総省の高官は「人口が集中する地域の奪取をねらっていると考えられる」と指摘したうえで、侵攻の初期の段階のため部隊の大部分はまだ投入されていないとの見方を示しました。

国防総省の高官は、ロシア軍の侵攻のねらいについて「ロシアは首都キエフに向かっていて、われわれの分析では彼らはウクライナ政府を崩壊させ、自分たちの統治方法を確立するつもりだと考えられる」と指摘しました。