ロシア ウクライナの軍事施設に攻撃 死傷者も

ロシアは24日、ウクライナに対する軍事侵攻に乗り出し、ウクライナ側によりますと、攻撃は、東部だけでなく首都キエフの郊外などの軍事施設に及んでいて死傷者もでているということです。ウクライナのゼレンスキー大統領は強く非難し、ロシアとの国交の断絶を表明しました。

ロシア国防省は24日、ウクライナの軍事施設に対する攻撃を行っていることを明らかにし、ウクライナ軍の対空防衛システムを攻撃し制空権を制圧したとしています。

また、ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は「ウクライナ軍の兵士も武器を捨てて、退避している」と述べたうえで、あくまでも軍事施設を対象にした攻撃であり、民間人に対する脅威はないと主張しました。

一方、ウクライナ軍参謀本部によりますと、ロシアによる攻撃は24日午前5時ごろ、日本時間の正午ごろウクライナ東部で行われたということです。

首都キエフの郊外にある軍事施設が巡航ミサイルの攻撃を受けたほか、ウクライナ軍の東部の拠点となっているクラマトルスクや、首都キエフの郊外に位置するボリスピル、それに、南部にある軍事施設などで攻撃が行われたということです。

また、ウクライナの国境警備局は、ベラルーシと国境を接するウクライナ北部でもロシア軍から砲撃などの攻撃を受けたと明らかにしたほか、ロシアが一方的に併合した南部のクリミア半島からも攻撃があったとしています。

さらに、ウクライナ東部の親ロシア派の幹部は、ウクライナ政府が統治する地域まで侵攻し、2つの州の全域を支配したいとする考えを示しました。

ロイター通信は、ウクライナ大統領府の関係者の話として、これまでにウクライナ軍の兵士40人以上が死亡し、数十人がけがをしていると伝えました。

市民にも被害が出ているということで、現地当局の話として、北東部ハリコフ州の建物への攻撃で男の子1人が死亡したとしています。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍による軍事侵攻を厳しく非難したうえで、ロシアとの国交の断絶を表明しました。

ロシアのプーチン大統領は日本時間の24日正午前、国営テレビを通じた演説で、親ロシア派が事実上支配している地域を支援するとして軍事作戦に乗り出すことを明らかにしていました。

ロシア軍は、欧米側の警告を無視してウクライナ各地で軍事侵攻に踏み切り、ウクライナ情勢は、重大な局面となっています。

キエフ在住の日本人「けさ早く2回の爆発音あった」

ウクライナの首都キエフ在住の中村仁さん(54)が24日、NHKのインタビューにオンラインで応じました。

中村さんは、2002年から20年間ウクライナで暮らしているということです。

前の日まで自宅周辺はいつもと変わらない様子だっただけに、ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻を知人などから聞いて驚いたと話していました。

また、中村さんは「けさ早く大きな音がした。2回の爆発音だった。首都キエフで爆発音を聞くのは初めてだ。ウクライナ東部での紛争が他の地域に波及することはこれまでなかったので今までとは違うなと思った」と話していました。

今後について、中村さんは、ウクライナは慣れ親しんだ場所であり、避難はせずに引き続きウクライナ人の同僚や友人たちとともにキエフ市内にとどまるつもりだということです。

中村さんは「戦争になれば、双方に被害が出る。ウクライナとロシアは兄弟であり、早く終結してほしい」と思いを語っていました。

専門家「全土に戦闘が広がる可能性 排除できず」

ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治政策研究部長は、「軍事作戦は、ロシアが一方的に独立を承認した東部の2州に限られるのかと思っていたが、ウクライナ全土に対するかなり大規模な軍事行動に踏み切ったことに驚いた。2014年のクリミアの併合と比べても現状変更のレベルが極めて高く衝撃を受けている」と話しています。

そのうえで「ロシア、ウクライナともに情報戦を展開していて、何が真実なのかは慎重に見極める必要があるが、これまでに接している情報ではロシアは、軍事基地を攻撃して制空権を獲得したうえでウクライナ軍を無力化し、反撃してきても戦闘が激化しないようにしているのではないか。ただ、想定外の形で市街地を含め、ウクライナ全土に戦闘が広がる可能性も排除はできず、状況は予断を許さない」と指摘しています。

そのうえで今後の見通しについて兵頭さんは「アメリカが軍事的に直接対じする可能性が少しでもあればロシアはこうした行動には出なかっただろうが、欧米としては経済制裁しか手段はなく、今後も制裁の強化しかない。プーチン大統領としてもそれも分かったうえで侵攻に踏み切っているとみられ軍事行動を封じるのは難しいだろう。さらにロシアには、自国や、同盟国であるベラルーシに核弾頭を搭載できる中距離や短距離のミサイルを配備するという『次のカード』がある。特にNATOに対し、核も含めた軍事力の増強を示唆しており、それを封じられるのかもポイントになる」と話しています。

さらに、「力による現状変更の敷居が下がったことは、東アジア、日本にとっても『対岸の火事』ではない。日本としてもG7各国と連携し、こうした動きは容認できないとして厳しい制裁措置をとる必要がある」と指摘しています。