アメリカ “ロシア軍大規模侵攻 いつ始まってもおかしくない”

緊張が高まるウクライナ情勢をめぐり、アメリカ国防総省の高官はウクライナの国境周辺に集結するロシア軍の部隊について「大規模な侵攻を行うための準備が完全にできている」と述べ、大規模な軍事侵攻がいつ始まってもおかしくないという見方を示し強い警戒感を示しました。

アメリカ国防総省の高官は23日、記者団に対し、ウクライナを取り囲むように集結しているロシア軍の部隊について「最大限の準備ができており部隊のおよそ80%がいつでも出動できる準備を整えた」と指摘しました。

そのうえで「われわれの評価ではプーチン大統領は大規模な侵攻を行うための準備が完全にできており、それは可能性の高い選択肢だ」と述べて、大規模な軍事侵攻がいつ始まってもおかしくないという見方を示し強い警戒感を示しました。

バイデン政権はこれまでも、ロシア軍がウクライナの首都キエフを標的にする可能性があるという認識を示しています。

EU 緊急の首脳会議開催へ

ロシアがウクライナ東部で親ロシア派が事実上支配する地域の独立を一方的に承認し軍の部隊を送る構えを見せていることを受けて、EU=ヨーロッパ連合は24日にベルギーのブリュッセルで緊急の首脳会議を開くことになりました。

会議の開催を呼びかける書面でミシェル大統領は「ロシアの行為は国際法に違反しウクライナの領土の一体性と主権を侵害している。さらにヨーロッパの安全保障の秩序をも脅かしている」と強調し、会議ではロシアへの対応やウクライナへの支援について協議するとしています。

ウクライナ政府 全土に非常事態宣言

ウクライナ政府は24日、ロシアによる軍事的な脅威が高まっているとして全土を対象に非常事態宣言を発令しました。

ウクライナ政府は23日、ゼレンスキー大統領などが出席して国家安全保障・国防会議を開いて、すでに非常事態宣言を出している東部の2つの州だけでなく全土を対象に非常事態宣言を出すことを決めたもので、その日のうちに議会で承認されました。
非常事態宣言の期間は24日から30日間で、当局が
▽外出禁止や移動の制限
▽集会の制限などの措置をとることが可能となり
国内の平穏を保ち、経済を機能させるためだとしています。

またウクライナ軍は23日に声明を出して、18歳から60歳の市民を対象に予備役の招集を始めたと発表しました。任務に当たるのは最長で1年だとしていて、ウクライナ政府は軍事侵攻への備えを一段と強化しています。

ウクライナ政府機関サイトにサイバー攻撃

ウクライナの情報セキュリティー当局は23日、複数の政府機関の公式サイトがサイバー攻撃を受けたとSNSに投稿しました。

それによりますと、サイバー攻撃を受けたのはウクライナの議会や外務省などの公式サイトで、攻撃は大量のデータを送りつけることでシステムをダウンさせる「DDoS攻撃」と呼ばれるものだということです。

ウクライナでは今月16日にも国防省などの公式サイトがサイバー攻撃を受けていて、これについてアメリカのホワイトハウスのサイバーセキュリティーの担当者は「ロシアが関与しているとみている」と述べ、警戒感を示していました。

国連 各国がロシアを非難

国連総会では23日、各国の代表が演説を行いました。

はじめにウクライナのクレバ外相が演説し、ロシアがウクライナ東部の親ロシア派が事実上支配する地域に「平和維持」の名目で軍の部隊を送る構えを見せていることについて「ウクライナは誰かを脅したり攻撃したりしたことはない。ロシアによるウクライナ批判はばかげている」と述べ、強く非難しました。
そのうえでクレバ外相は「私たちはいま世界史の中で重要な局面にある。国連と国際社会による迅速で断固とした行動、新しいタイプの行動が必要だ」と述べ、外交を通じた平和的な解決に向けて国際社会の一致した行動を呼びかけました。

クレバ外相が演説を終えると、総会議場の各国代表団から大きな拍手が沸き起こりました。

このあと日本の石兼国連大使を含め各国の代表が演説を行い、ロシアの行動は国連加盟国の主権を侵害しているなどとして非難する声明が相次ぎました。

これに対してロシアのネベンジャ国連大使は、ウクライナ東部ではウクライナ政府軍の砲撃などで多くの市民が犠牲になっていると改めて主張し「ウクライナによる軍事的な冒険を防ぐことに各国は集中すべきだ」などと述べ、強く反論しました。

ロシア・トルコ大統領が電話会談

ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が23日、電話会談し、両国の大統領府によりますと、エルドアン大統領は「ウクライナの主権と領土保全に反する措置は受け入れられない」として、ウクライナ東部をめぐるロシアによる一方的な独立承認に反対する立場を強調したということです。

これに対してプーチン大統領は「客観的に必要な決定だった」と正当化したうえで、ロシアの安全保障上の懸念や要求がないがしろにされているとして、アメリカとトルコも加盟するNATO=北大西洋条約機構への失望を改めて示したということです。

トルコはロシアとウクライナの仲介に意欲を示していて、今回の電話会談で両首脳は引き続き対話を続けていくことでは一致したということです。