救急対応の病院 駐車場の救急車で診療も「限界超えた対応に」

新型コロナウイルスの感染拡大による医療ひっ迫で、東京都内で救急の対応を行う病院では、新型コロナだけでなくコロナ以外の緊急度の高い救急患者を受け入れることが難しくなってきています。中には病院の駐車場にとめた救急車の中で患者の診療を行わざるをえないケースも出ていて、現場の医師は「限界を超えた対応になっている」としています。

東京・文京区の東京医科歯科大学病院は、感染拡大の第6波に際して、新型コロナの中等症や重症の患者用のベッドを合わせて61床確保して対応するなど、東京都内でのコロナ対応の中心的な役割を担ってきました。

この病院ではコロナ以外の患者は一時的な治療を行ったあとは他の病院で診てもらうという役割分担をしてきましたが、今月上旬からは近隣の病院でも救急用の病床がひっ迫して患者を受け入れられなくなっているため、コロナ以外の患者への対応も増えてきています。

ただ、入院するための病床や医療スタッフが足りないため、中には救急の初期診療を行う場所で患者が留め置かれるケースもあったほか、さらに今月中旬ごろからは院内で患者を診る場所も不足し、病院の駐車場に止めた救急車の中で、診療せざるをえないケースも出ているということです。

都内では、この病院のように、緊急度の高い患者に対応する3次救急の指定病院でも、患者の受け入れ要請に対応するのが難しくなってきているため、病院では、駐車場で診療せざるをえないケースが今後も増えるとみています。

東京医科歯科大学病院の大友康裕救命救急センター長は「骨折の患者や高齢のコロナ患者の受け入れ先もなかなか決まらないという状況になっている。駐車場での診療は入院先が決まらず、搬送を待つ間に状態が悪くなり、不幸な結果となることを避けるための苦肉の策だ。救急医療体制はすでに限界を超えているが、できるかぎりの努力をしたい」と話しています。

約20の病院で受け入れできずに搬送され救急車の中で処置

東京医科歯科大学病院では、救急搬送されてきた患者を病院内で診ることができず、駐車場にとめた救急車の中で処置を行うケースが相次いでいるということです。

23日も午前8時ごろに、病院の駐車場で患者を乗せたままの救急車に医師など3人のスタッフが乗り込み、点滴などの処置を行っていました。

このとき、搬送されてきたのは50代の患者で、23日朝、息苦しさを感じ、救急車で搬送されましたが、およそ20の病院で受け入れができず、この病院に来るまでに1時間以上たっていたということです。

患者に対して、医師たちが初期の治療を行った後、新型コロナの検査を行うと陽性だったということで、その後、別の病院に搬送されたということです。

対応した医師は「今月以降、自分が当番に入った日だけでも5回か6回は駐車場での診療で対応していて、急変した患者を救急車の中で対応して、なんとか無事に救えたケースもあった。入院が難しい状況の中で、命の危険にさらされる患者を減らすために必要で、理解していただきたい」と話しています。

東京都内 救急搬送が困難なケース 高水準で推移

東京都内で第6波に入って急増した救急搬送が困難になるケースは、高い水準のまま推移しています。

都は、救急患者の受け入れ先を探す際に救急隊が5つ以上の病院に断られたり20分以上経過しても決まらなかったりして困難となった場合、地域の中核病院などが搬送先を探す「東京ルール」という仕組みを運用しています。

この仕組みの適用件数は第6波に入って急増し、ことし1月1日に60.3件だった7日間平均は、半月で3倍の180件を超えました。

そして、今月18日時点で過去最多の264.1件となりまりした。

最新の数値である21日時点でも245.6件と高い水準が続いています。