岸田首相 ロシアへの制裁措置発表 関係者のビザ発給停止など

ウクライナ東部の一部地域の独立を一方的に承認したロシアへの制裁措置として、岸田総理大臣はロシアが独立を承認した地域の関係者のビザの発給停止や資産凍結、それに輸出入の禁止などを発表しました。

ロシアがウクライナ東部の一部地域の独立を一方的に承認し軍を送る準備を整えている状況を受けて、岸田総理大臣は23日午前、総理大臣公邸で松野官房長官や木原官房副長官らと対応を協議しました。

このあと岸田総理大臣は記者団に対し「明らかにウクライナの主権、領土の一体性を侵害し、国際法に違反する行為であり改めて強く非難する。ロシアに対し外交プロセスによる事態の打開に向けた努力に立ち戻るよう強く求める。事態は緊迫度を増しており引き続き重大な懸念を持って注視していく」と述べました。

そして今回の事態を受けた制裁措置として、ロシアが独立を承認した地域の関係者のビザの発給停止と資産凍結、輸出入の禁止、そしてロシアの国債などの日本での発行・流通を禁止することを発表しました。

またウクライナに在留する日本人の保護について「安全確保のために全力を尽くしていく。できるかぎりの手段を講じ、邦人の保護に取り組んでいく」と述べました。

さらに今後懸念されるエネルギー価格の高騰について「今回の事態がエネルギーの安定供給に直ちに大きな支障をきたすことはないと認識している。今後さらに原油価格が上昇し続けたとしても国民生活や企業活動への影響を最小限に抑えることができるよう、何が実効的で有効な措置かという観点からあらゆる選択肢を排除することなく政府全体でしっかり検討し対応していく」と述べました。

また岸田総理大臣は、さらに事態が悪化した場合の対応について「今後の推移については予断は許されず、いろいろな可能性がある。G7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携して、さらなる措置についても速やかに考えていかなければならない。具体的に事態がどう推移するかを確認しアメリカ・ヨーロッパともしっかり意思疎通や情報交換を図りながら、わが国の対応を進めていく」と述べました。

制裁措置の概要は

岸田総理大臣が表明したロシアがウクライナ東部の一部地域の独立を一方的に承認したことへの制裁措置。

ロシアが独立を承認した地域への制裁措置として
1.関係者のビザの発給停止と資産凍結
2.この地域への輸出入の禁止
3.ロシアに対してはロシアの国債などの日本での発行・流通を禁止するとしています。

政府は資産凍結については、具体的に対象となる人物や組織などを絞り込む作業を進めています。

また輸出入の禁止については、外国為替法によって特定の地域の貨物を政令指定するなどの方法で事実上、輸出入を禁止することを案として検討しているということです。

またロシアの国債などの日本での発行・流通を禁止する措置については、すでに発行された国債は対象外で新たに発行される国債が対象となる見込みです。

アメリカも国債の新規発行を禁止する措置を打ち出しており、日本としてはそのままでは日本での発行が増える可能性があることからロシアの資金調達手段を絶つために同様の規制に踏み切った模様です。

これまでの対ロシア制裁措置は

日本政府は2014年、ロシアがウクライナ南部のクリミアを併合したときからロシアに対して制裁措置を発動し、現在も継続しています。

具体的にはアメリカやEU=ヨーロッパ連合と協調する形で、ウクライナ東部の不安定化に直接関与していると判断される66人と16の団体に対して、日本国内にある資産を凍結しています。

またロシアの大手銀行「ズベルバンク」など5つの金融機関を対象に、日本国内での社債や株式を含む証券の発行を禁止しているほか、ロシアに対する武器の輸出や武器技術の提供について審査の手続きを厳格化しています。

さらにクリミアを原産地とするすべての貨物の輸入について、ウクライナ政府が認めたもののみとする輸入制限措置も実施しています。