病院人手不足対策 抗原検査キットを配布 復帰を後押し 横浜市

濃厚接触者となった医療従事者が出勤できないことによる病院での人手不足が課題になっていることから、横浜市は、自宅待機期間の短縮に役立ててもらおうと独自に確保した抗原検査キットを医療機関に配布しています。

横浜市によりますと、コロナ患者も含めた救急患者の受け入れ先がすぐに決まらない「搬送が困難な事例」は、今月20日までの1週間に432件発生していて、これまでで最も多くなったということです。

コロナ患者の入院調整を行っている横浜市の調整本部「YーCERT」では、感染力の強いオミクロン株の影響で医療従事者が感染したり、濃厚接触者になったりして出勤できなくなり、病床があっても受け入れられないケースが増えているためと分析しています。

先月下旬以降、神奈川県内では、出勤できない医師や看護師などが連日、2000人を超える状態が続いていると見られています。

こうした状況を受けて横浜市は、独自に抗原検査キットをおよそ70万回分確保し、医療機関や保育所などへの配布を始めています。

医療関係者などのエッセンシャルワーカーは、濃厚接触者となった場合でも抗原検査キットで陰性が確認されれば、最短で5日目に職場復帰できるため検査キットの活用で職場復帰を後押しするのがねらいです。

「YーCERT」の協力医師で横浜市立大学の竹内一郎主任教授は「特に今月に入ってから高齢者を中心に入院する人が増えている一方、病院の受け入れ能力が落ちてきていると感じている。冬場はコロナ以外の通常の救急搬送も多いので、助けられる人を確実に助ける態勢作りが必要だ」と話していました。

また横浜市は「市としてエッセンシャルワーカーをしっかり支え、社会機能を維持したい」としています。

検査キットが届いた病院では

発熱外来や新型コロナの病床がある横浜市泉区の「湘南泉病院」には先週末に750回分の抗原検査キットが届きました。

この病院でも医師や看護師が濃厚接触者になるなどして一日当たり10人ほどが休むことがあるほか、少しでも症状があれば職員に抗原検査キットで検査するよう呼びかけているということで、検査キットの在庫は残り40回分ほどまで減っていたということです。
病院を運営する医療法人の池島秀明理事長は「キットが全く足りない状況だったので助かります。至急診断が必要な患者さんに優先的に使い、その次には職員が使えるようにしたい。今は何とか工夫して対応していますが、これ以上、職員が足りなくなると非常に厳しい」と話していました。

医療従事者の自宅待機10日間維持の病院も

一方、医療従事者の自宅待機期間を10日間と設定している病院もあります。

横浜市都筑区の「昭和大学横浜市北部病院」では先月から今月中旬にかけて、職員や患者、合わせて48人が相次いで感染しました。

また、感染した職員に加え、濃厚接触者となったり、子どもの保育所が休園したりして出勤できない職員は一時、100人を超えました。

特に看護師では全体の1割を超えたことから、病床を40%程度、閉鎖する事態となりました。

この病院では、濃厚接触者の自宅待機の期間を10日間に設定していて、今も感染者と濃厚接触者など合わせておよそ50人が出勤できていません。

新型コロナ用の病床を段階的に増やす必要もあり、一般の病床は80%程度しか稼働できていないということです。

この病院でも検査キットを受け取る予定ですが、感染者が相次いだ教訓などから今後も10日間の自宅待機期間は維持する方針です。

門倉光隆病院長は「十分な感染対策を施していれば、医療を維持するため自宅待機の期間を短縮してもいいという考えもあると思う。ただ、免疫機能の下がった患者さんに接触することには危険が伴うので、少し無理をしてでも今のやり方を続けたい」と話していました。