新年度予算案 自民・公明と国民の賛成多数で衆院本会議で可決
一般会計の総額が過去最大の107兆円余りとなる、新年度・令和4年度予算案は、衆議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党などに加え、野党の国民民主党の賛成多数で可決され、参議院に送られました。野党が新年度予算案に賛成するのは異例です。
新年度・令和4年度予算案には、新型コロナウイルス対策や、看護や介護などの現場で働く人の賃金の引き上げに必要な費用も盛り込まれていて、一般会計の総額は107兆5964億円に上り、過去最大です。
衆議院本会議では、採決に先立って討論が行われました。
自民党の今枝宗一郎氏は「われわれが行うべきことは、新型コロナやウクライナの厳しい情勢を踏まえ、予算を早期に成立させ、いち早く国民や事業者に支援策の中身を知らせて、お手元に届けることだ」と述べました。
立憲民主党の源馬謙太郎氏は「感染拡大防止の予算も、コロナ禍で苦しむ国民の暮らしと事業を守る予算も、これからの時代を見据えて持続可能な社会を実現する予算も、全く不十分であり、賛成できるものではない」と述べました。
一方、国民民主党の玉木代表は「予算案は100点満点ではないが、コロナ禍で早期成立が求められていること、賃上げや人づくりを重視する方向性が同じであること、原油価格の高騰に対しトリガー条項凍結解除の検討を岸田総理大臣が明言したことが、賛成の理由だ」と述べました。
このあと採決が行われ、自民・公明両党などに加え、国民民主党の賛成多数で可決され、予算案は参議院に送られました。
国民民主党が新年度予算案に賛成したのは初めてで、衆議院事務局によりますと、野党としては、1994年度予算の時以来、異例の対応となりました。
また、平成11年の小渕内閣当時の予算審議に次ぐ早い時期の衆議院通過となり、憲法の規定により、仮に参議院で採決されなくても、年度内の3月23日に自然成立することになります。
野党の国民民主党が賛成した背景は

玉木代表は「従来型の古い考えではない、新しい与野党の関係を作り上げていかなければならない」と述べています。
賛成の理由に挙げる「トリガー条項」の凍結解除は、去年の衆議院選挙の公約にも掲げていて、玉木代表は、これまで岸田総理大臣と直接水面下で協議し、凍結解除の実現を勝ち取ったとしています。
ただ、21日の執行役員会では、前原 代表代行や小林 参議院議員会長が、玉木代表の方針に異論を唱え、その後の両院議員総会でも前原氏は反対意見を述べたということです。
このため、21日の衆議院予算委員会での採決にあたっては、委員の前原氏を古川 国会対策委員長に差し替えました。
前原氏は22日の本会議を体調不良を理由に欠席し、採決では出席した党所属の9人全員が賛成票を投じました。
衆議院事務局によりますと、少数会派を除く野党が、政府の当初予算案に賛成したのは、1994年以来28年ぶりだということです。
去年の衆議院選挙で野党の勢力図が大きく変わり、野党各党にとっては、夏の参議院選挙に向けてどう存在感を示すかが、大きな課題となっています。
国民民主党としては、当初予算案に賛成して独自性を打ち出す代わりに、政府・与党側から、党の政策実現を勝ち取ることで、実績をアピールするねらいがあるものとみられます。
一方で、与野党双方からは「当初予算案に賛成したことで、今後、政府・与党の政策に反対するのは難しくなるのではないか」という指摘も出ていて、今後、党の立ち位置が問われることも予想されます。
玉木代表「『野党だから反対』という従来型の対応でなく」
そのうえで「賛成した以上は、政府・与党にわれわれの政策もしっかり聞いていただかなければならない。『トリガー条項』以外にも、積極的に政策提案を行い、実現につなげていきたい」と述べました。
また、今後の国会対応について「コロナ禍で、国民は与党と野党のいたずらな対立は求めていない。知恵を出し合って、混迷の時代を乗り切る新しい答えを出していきたい。予算案には賛成したが、個々の法案には、これまでと変わらず、是々非々で判断していく」と述べました。
岸田首相 玉木代表らに謝意伝える
このうち国民民主党の控え室では、玉木代表らに「ありがとうございました」と謝意を伝えると、玉木氏は「覚悟を決めて賛成したので、われわれの提案を受け止めて、政策を前に進めてもらいたい。これから積極的にいろいろな提案をしていきたい」と応じていました。
また、玉木氏が、いわゆる「トリガー条項」の凍結解除について「よろしくお願いします」と要請すると、岸田総理大臣は「しっかりと丁寧にお話を聞かせていただきます」と答えていました。
松野官房長官「一日も早い成立に向け説明尽くしたい」
また、国民民主党が予算案に賛成したことについて「政府としてのコメントは差し控えたいが、予算案が国会で精力的に審議され、賛成多数で可決頂いたと受け止めている」と述べました。
自民 茂木幹事長 “予算 政策推進との判断での賛成と思う”
また、国民民主党が賛成したことについて「予算、政策を推進すべきだという判断で賛成してもらったと思っており、評価している。今後もし提言などがあれば、真摯(しんし)に受け止める形をとりたい」と述べました。
立民 西村幹事長「『政権担える選択肢』との整合性つかず」
また、夏の参議院選挙での連携について「与党に対して政策の提示と行政監視を行うために、1人区での野党候補の一本化が必要だと考えているが、国民民主党とは、これからも野党としてともにやっていけるか、よく真意を確かめなければならない」と述べました。
公明 石井幹事長「多くの会派の賛成 望ましい」
また、国民民主党が賛成したことについて「多くの会派に賛成してもらうことが望ましいので、よかったのではないか」と述べる一方、今後の連携に関しては「まずは国民民主党の動向を冷静に見ていきたい」と述べました。
維新 藤田幹事長 “首相がのんだから賛成 私たちならしない”
一方で、今後の連携については「国民民主党が与党入りするならありえないが、政策のすり合わせなど、合意できるところがあれば、今後も連携はありえる」と述べました。
共産 志位委員長「賛成は『与党化する』という宣言」
れ新 山本代表らが投票で登壇時に発言

山本代表は記者会見で「ほかの党には期待していないので、国民民主党は、そういった判断をしたんだなという程度の感想しかない。参議院選挙が近いため、党のアピールを強めることを考えたのだろうが、本当に人々の生活を思うのであれば、トリガー条項の凍結解除など、けちなことは言わず、ガソリン税をゼロにすべきだ」と述べました。