ロシア“ウクライナ国境から撤収せず” 米長官 強い危機感示す

ウクライナと国境を接するベラルーシは、国内で合同軍事演習を行っていたロシア軍が演習の終了予定だった20日以降も撤収しないと明らかにしました。
これに対してアメリカのブリンケン国務長官は「ロシアによる一連の挑発行為のシナリオの続きだ」と述べ、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に強い危機感を示しました。

ウクライナ北部と国境を接するベラルーシでは、冷戦終結以降、最大規模と指摘されるロシア軍が派遣されてベラルーシ軍との合同軍事演習が行われました。

ロシア政府は演習が終了すれば部隊は元の配置に戻るとしていましたが、ベラルーシのフレニン国防相は20日「両国の大統領は部隊の検証を継続することを決定した」と述べ、演習の終了予定だった20日以降もロシア軍の部隊は撤収せず、ベラルーシにとどまることを明らかにしました。

その理由としてウクライナ東部の情勢の悪化をあげ「悪意ある者の軍事的な準備に適切に対応し、緊張を和らげることが目的だ」と述べ、ロシア軍の部隊がとどまることを正当化しました。

ロシアがベラルーシに大規模な部隊をとどめることについてアメリカのブリンケン国務長官は20日、CNNテレビのインタビューで「われわれはロシアが侵攻を正当化するため一連の挑発を行おうとしているというシナリオを明らかにしていたが、その続きだ」と指摘しました。

そのうえで「目の当たりにしているすべてのことは、ロシアによる侵攻が差し迫っていることを示している」と述べ、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に強い危機感を示しました。

さらにブリンケン長官はプーチン大統領がウクライナへの侵攻を決断したと思うとしながらも、ぎりぎりまで外交による解決を目指す考えを強調しました。

ウクライナ外相 “ロシア侵攻前から制裁を”

ロシア軍が隣国のベラルーシから20日以降も撤収しない方針が明らかになったことを受けてウクライナのクレバ外相は声明を発表し「ロシアに予防的な制裁を科すべきだ」と欧米各国に訴えました。

G7=主要7か国は前日の19日に開いた緊急の外相会合でロシアがウクライナに軍事侵攻すれば、幅広い経済・金融制裁を含め、前例のない甚大な代償を払わせると警告しています。

ただクレバ外相は声明の中で、外交的な努力だけでは事態の悪化を阻止できないとしたうえで「今こそ行動すべきだ」として、制裁の一部をロシアが侵攻する前から科すべきだと主張しています。
さらにロシアの脅威から守るためとして欧米各国に兵器の追加供与を求めました。

一方、ウクライナ東部では一部を事実上支配する親ロシア派の武装勢力と政府軍との戦闘が続いています。
20日には武装勢力側が政府軍の攻撃で住民2人が死亡したと主張したのに対してウクライナ政府は逆に武装勢力側から砲撃を受けるなどの停戦違反があったと発表し、非難の応酬になっています。

英首相「規模は第2次世界大戦以降ではヨーロッパ最大」

イギリスのジョンソン首相はBBCのインタビューで「すべての兆候は計画が、ある意味、すでに始まっていることを示している」と述べ、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の可能性が高いという認識を示し「規模について言えば、第2次世界大戦以降ではヨーロッパで最大となり得る戦争の計画をわれわれは目の当たりにしている」と警戒感をあらわにしました。

またアメリカのバイデン大統領が西側諸国の首脳に説明した情報機関の分析として、ロシア軍は、東部からだけでなく、北にあるベラルーシから南下する可能性もあると指摘したうえで、ロシアが侵攻に踏み切った場合にはアメリカなどとともに、厳しい経済制裁を科す考えを重ねて示しました。

仏ロ首脳会談は外交的努力で一致

アメリカなどがロシアによるウクライナへの軍事侵攻に危機感を強めるなど緊張が高まる中、フランスのマクロン大統領とロシアのプーチン大統領は20日、電話会談を行いました。

会談は2時間近くにおよび、フランス大統領府によりますと、両首脳は、ウクライナ東部で再燃している、政府軍と親ロシア派の武装勢力との戦闘について停戦合意を徹底するため、ロシアとウクライナなどによる協議を再開するなど対話による解決に向け外交的な努力を強めることで一致しました。

ただ、ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領はウクライナ東部での戦闘はウクライナ政府側の挑発によるものでアメリカなどNATO=北大西洋条約機構の加盟国が武器や弾薬を供与し、事態を悪化させていると批判したということです。

またマクロン大統領は、20日、ウクライナのゼレンスキー大統領とも電話会談し、ウクライナ東部での戦闘をめぐりロシア側の挑発にのることなく、停戦を尊重することを確認したということです。

現地の日本人「幸せな時代に戻して」

ウクライナの首都キエフに30年以上住み、現地でバレエの仕事に携わる寺田宜弘さんは、20日、NHKのインタビューに応じました。

寺田さんによりますと国内では2日ほど前から、ウクライナ東部での戦闘が大きく報じられるようになったほか、ロシアの軍事侵攻に危機感を示す発言がアメリカ側から相次いでいることも受けて、寺田さんの同僚のなかでも、東部に住む家族をキエフに避難させる動きが広がっているということです。

こうした状況の中、寺田さんは21日の飛行機でウクライナを離れ、妻がすでに避難しているポルトガルに向けて出発することにしています。

ただ、大手の航空会社でウクライナ便の運航の停止が相次いでいることから「もしかしたら明日飛べなくなるかもしれない。その場合は、車で西部の都市まで行くか、ポーランドまで車で行く」と話し、最悪の場合は陸路での避難も考えているとしています。

一方、キエフ市内の様子はふだんと変わらないということですが、ガソリンが1週間前から3割ほど値上がりしたということで「今は東部の戦闘や政治の話で混乱しているが、今後は生活への不安も高まると思う」と話し、国内で混乱が広がることを心配していました。

そして「この2日間で自分自身も急に危険を感じ出してきた。いまはアメリカからの情報に振り回されている部分と、実際に東部で大変な出来事が起きる可能性、半々だと思う。もとの幸せな時代に戻してほしい」と話し、外交で問題を解決してほしいと訴えていました。