ワクチン3回目接種 1日最大75万回余 目標の100万回に届かず

新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種をめぐって、政府が1日当たり100万回の実現を目指す中、今月に入ってからの1日当たりの接種回数は最大で75万回余りとなっています。
特に高齢者の接種率はおよそ35%となっていて、政府は希望者への接種をどう加速させるかが課題だとしています。

3回目のワクチン接種について政府は、2回目から原則8か月としていた接種間隔を去年12月から段階的に6か月に前倒しし、できるだけ早い時期に1日当たり100万回の接種を実現することを目指しています。

総理大臣官邸のホームページによりますと、ワクチン接種記録システムのデータでは、今月に入ってから1日当たりの接種回数は増加傾向にあるもののおよそ32万9000回から75万7000回となっています。

今月17日までに3回目の接種を受けた人は全人口の12.6%に当たる1600万9146人で、今月末までに対象となる人数の42.7%です。

都道府県別で接種率が最も高かったのは
▽佐賀県で18.3%、次いで
▽岡山県が17.3%、
▽山口県が17%。

最も低かったのは、
▽秋田県で8.5%、次いで
▽神奈川県が9.7%、
▽新潟県が9.8%でした。

また、デジタル庁のホームページによりますと、65歳以上の高齢者で3回目の接種を受けた人は19日時点で1260万1114人で、接種率は35.2%となっていて、政府は希望する人への接種をどう加速させるかが課題だとしています。

厚生労働省は当初、自治体が8か月の接種間隔で準備をしていたために、接種券の送付が間に合っていないケースも少なくないとみて、接種券が届いていない人も速やかに接種を受けられる体制を整えるよう自治体に改めて周知しています。

在宅療養者急増 接種に充てる時間と人員 確保困難に

3回目のワクチン接種を行う医療機関の中には、新型コロナに感染した患者の診察に追われ、接種のスピードを上げられないところもあります。

東京・板橋区では3回目のワクチン接種を医療機関で行う個別接種と自治体の会場で行う集団接種を組み合わせて行っていて、接種全体のおよそ7割を個別接種が占めています。

このうち個別接種を行う板橋区役所前診療所は、施設に入所する高齢者や外出が難しい高齢者の自宅を訪問し、在宅で接種を行っています。

高齢者への接種が本格化した去年6月には1か月で1回目と2回目をあわせて3000回あまりの接種を行いましたが、3回目では今月16日までのおよそ1か月で半数の1500回ほどになっているということです。

急激な感染拡大の影響で先月から在宅療養者への往診が急増して対応に追われ、接種のために充てる時間と人員を確保するのが難しくなっているといいます。

板橋区役所前診療所の鈴木陽一医師は、「去年の接種は比較的感染が落ち着いていた時期と重なり、もとの予定より数を繰り上げ、予約枠をどんどん確保し、かなりの数の接種をこなせたが、現在は感染した患者の対応に追われながらの接種で思うように接種のスピードを上げるのが難しい状況だ。ただ早く接種したいという高齢者は多いので、厳しい状況だができるかぎりやっていかなければならない」と話しています。

また、都内の他のクリニックでは訪れる患者の中に2回目までとは異なるメーカーのワクチンを接種する交互接種に対して慎重な姿勢を示す人や副反応への不安を漏らす人も少なくないということです。

高齢者施設43%は3回目未接種 クラスター発生も

3回目のワクチン接種は特に高齢者施設での進捗(しんちょく)が課題となっています。

高齢者施設でつくる団体は今月10日に記者会見を開いて、全国の5800余りの施設を対象に行ったアンケート調査の結果を公表しました。

それによりますと、今月9日までに3回目の接種を終えていない施設は43.5%に上っています。

接種が進まない理由を複数回答で尋ねたところ、「ワクチンがまだ届いていない」が27.1%、「接種券がそろってから対応しようと考えていた」が24.4%、16.3%が「2回目の接種から6か月が経過していない」と回答しました。

全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は「1回目や2回目の接種のときと比較して全体的に危機感が薄く自治体と施設とのやり取りがスムーズにいかなかった。接種券の発送も遅く、ワクチンの分配においても高齢者施設を優先的にしようという姿勢が感じられなかった。国や自治体は接種券がなくても接種できるということをしっかり周知してほしい」と話しています。

厚生労働省は今月15日に高齢者施設で希望する入所者や職員に対するワクチンの3回目接種を今月末までに終えるよう、全国の自治体に通知しました。

そのうえで接種の予定について調査したところ、今月末までに接種を完了すると答えた施設は全体の74%にとどまりました。

こうした中、厚生労働省によりますと今月14日までの1週間に全国の高齢者施設で確認されたクラスターなどは過去最多の455件に上り、中には接種を待つ間にクラスターが起きた施設もあります。
茨城県茨城町の介護老人保健施設では先月下旬から今月にかけて入所者と職員合わせて49人が感染するクラスターが発生し、入所者2人が死亡しました。

施設では今月3回目の接種を予定していましたが、その前に感染が広がったということです。

施設を運営する社会福祉法人の木村哲之法人本部長は「ワクチンを打ったから必ず感染しないというわけではないが、第5波のときにはかなり効果があり、施設のクラスターは激減したと実感しています。今回は3回目のワクチンが感染拡大に間に合わなかったと感じています」と話しています。

専門家「手続きが負担に」

新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐる自治体の対応について、複数の自治体の政策アドバイザーをつとめる長野県立大学の田村秀教授は「国から急きょ接種の方針が前倒しされるなか接種券を発送するなど自治体には細かい手続きを行うよう国のほうで求められていて十分に対応しきれていないところがある。自治体が手続きをきっちりやり、業務をこなすのはかなりの負担だ」と指摘しています。

そのうえで接種券が届かずワクチン接種をできない人がいる現状について、「平常時は公平性や手続きの妥当性が特に重視されるが、いまは緊急時なので何を優先するのかを考えることが大事だ。早く接種を進めたいならば、接種券がなくても接種が受けられるなど、手続きを省略することなどを国は積極的に認め、自治体の裁量を許容していくべきだ。接種しない人もいるが、接種したい人がどんどん打てるようにすることが求められる」としています。

1、2回目接種との比較

新型コロナウイルスのワクチン接種について、1回目、2回目の接種と3回目の接種の進捗状況を比べました。
厚生労働省や内閣官房のまとめによりますと接種が始まっておよそ2か月後の全国の接種率を比べると、
▼1回目の接種はおよそ1%、(4/17)
▼2回目もおよそ1%で、(5/10)
これに対して
▼3回目は4.9%と高くなっています。

その理由として前回と比べて一度に供給されるワクチンの量が多いことが影響していると考えられます。

100万回時の接種率は

接種回数について政府が目標とする1日100万回となったのは、1回目と2回目の接種では、接種が始まってからおよそ4か月後の去年6月9日でした。

この時の接種率は
▼1回目の接種がおよそ15%、
▼2回目はおよそ5%でした。

一方、3回目接種では最も多い日で今月12日のおよそ75万回7000回となっています。

接種率だけでみると3回目の接種は19日時点で14%と、1回目で1日100万回を超えた時と同じ程度となっています。

100万回時の接種会場は

1、2回目で1日100万回となった時と接種会場の数で比較するとその時期に自治体が設置した集団接種や個別接種の接種会場は全国でおよそ5万3000か所でした。

しかし、3回目では今月17日時点で全国でおよそ8万8000か所あり、前回と比べて65%増えています。

100万回時の高齢者の接種率は

一方で、1、2回目で1日100万回となった時と接種回数に占める高齢者の割合で比較すると▼1回目はおよそ91%、▼2回目はおよそ77%でした。

これに対して3回目接種では19日時点で高齢者の割合はおよそ71%とこれまでと比べて低くなっています。